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第2話 希望と失意、そして新たな道

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3歳の誕生日を迎えたプラムは、期待に胸を膨らませていた。異世界に転生してからというもの、ずっと夢見ていた瞬間が、ついにやってくるのだ。魔法適性検査を受け、自分の魔力と属性を知ることができる。これで、彼女も魔法を使えるようになる。魔法研究所に入るための一歩がここから始まるのだ——そう信じて疑わなかった。

王都にある魔法研究所の話を聞いた時から、プラムはその場所に魅了されていた。魔法で人々を助け、父の苦労しているももの栽培を成功させる方法を見つけることができるかもしれない。強い魔力を持てば、両親にも、村にも役立つ存在になれる。そんな夢が彼女の心の中で大きく広がっていた。

魔法適性検査の日、プラムは家族と一緒に村の広場に立った。そこには、村の子どもたちが順番に手をかざす「魔法適性測定器」が設置されていた。白い石のような機械で、子どもたちが触れると光を放ち、属性と魔力のランクを示してくれる。

「次はプラムの番だ」

父親のエイドリアンが穏やかに声をかける。プラムは頷き、測定器の前に進み出た。心臓が高鳴り、全身が熱くなる。

(私はきっと、強い魔法が使えるはずだ……!)

小さな手を測定器にかざすと、すぐにその表面が淡い青色に光り始めた。光が少しずつ強くなり、周囲が静まり返る。村の大人たちが期待のまなざしで見守る中、測定器はついにプラムの魔法適性を示した。

——「水魔法 ランク1」。

それだけだった。

瞬間、プラムの胸に激しいショックが押し寄せた。思わず後ずさりしそうになるが、足がすくんで動けない。自分の中で大きく膨らんでいた期待が、一気に崩れ去る感覚があった。周囲の大人たちは優しく微笑んでいたが、その目にはわずかな同情が浮かんでいた。

「水魔法、ランク1か……」

父親の声は優しかったが、その一言が、まるで突き刺さるように聞こえた。ランク1——それは最低の魔法ランクだ。しかし、ランク1でも魔法は使える。だが、その事実がプラムにとってはあまりにも小さな慰めに感じられた。自分が夢見ていた強大な魔法使いへの道は、ここで閉ざされたかのように感じてしまったのだ。

「おめでとう、プラム。これで魔法が使えるようになるね」

母親のセシリアが励ますように微笑んだが、プラムはその言葉を受け入れられなかった。彼女が夢見た強大な魔法使いへの道は、確かに始まったものの、そのスタートが彼女の期待していたものとはほど遠かった。

その日から、プラムは家に閉じこもるようになった。彼女は自分が情けなく感じ、魔法研究所に入ることなど到底できないと思い知らされていた。家の中にいても、外に出ても、どこか遠く感じる世界の中で、彼女はずっと塞ぎ込んでいた。

何度も両親や兄が優しい言葉をかけてくれたが、プラムの心は晴れなかった。村の子どもたちが次々と魔法を使い始める中、自分だけが取り残されているような感覚があった。村では魔法を使えることが誇りであり、その強さが地位や名声を表していた。プラムにとって「水魔法ランク1」という結果は、まるで自分が価値のない存在だと言われたようなものだった。

そんな中、ある日、両親がプラムにプレゼントを渡してくれた。それは、プラム専用の小さな魔法の杖だった。20cmほどの細長い木製の杖で、先端には小さな青い宝石が嵌め込まれている。両親は笑顔で説明してくれた。

「この杖はね、魔法を使うための道具だ。これがあれば、少しずつ魔法の練習ができるよ」

魔法ランク1でも、少しの力でも魔法を使うことはできる。しかし、プラムの心は沈んだままだった。杖を受け取ったものの、自分に魔法を使う価値があるとは思えなかったのだ。

「ありがとう……でも、私には無理だよ」

そう言って、彼女は杖をそっと床に置いた。両親はそれ以上何も言わず、ただそっと見守ることしかできなかった。

数日が経ち、プラムはふと、もらった杖のことを思い出した。部屋の片隅に置かれた杖を見つめ、何かに突き動かされるように手に取った。杖を持つと、かすかに温かい感覚が伝わってくる。

(本当に……私は魔法を使えないわけじゃない。でも、こんなに弱いなんて……)

何か試してみたくなったプラムは、こっそりと家を抜け出し、村の外れにある森へと足を運んだ。両親に知られないように、静かに木々の間を進む。森の中は静かで、木々のざわめきだけが彼女を迎えていた。

「よし……ここなら、誰も見ていないし、練習できるかもしれない」

プラムは森の小さな川辺に立ち、杖をぎゅっと握った。そして、心の中で集中してみた。前世の日本では想像することしかできなかった魔法——今、この世界で自分がその力を使えることを確かめたかった。

「水よ……」

そう呟いた瞬間、杖の先端がかすかに光り、川の水面が揺らめいた。少しだけだが、確かに水は動いた。プラムはその瞬間、自分が本当に魔法を使えることを実感した。

(私は、やっぱり魔法を使えるんだ……!)

それからプラムは、毎日こっそり森に出かけ、魔法の練習を続けるようになった。少しずつ水を操れるようになり、その小さな成果が彼女の心を少しずつ救っていった。

数週間後、彼女はふと杖の細工に違和感を覚えた。杖の先端の宝石をよく見ると、何やら仕掛けがあるように見える。試しに宝石を少し回してみると、杖から小さな機構が現れた。父親が言っていた「隠し機能」だった。

「こんなところに……何ができるんだろう?」

プラムは不思議そうに杖を見つめたが、その機能の使い方がまだわからなかった。けれど、この杖には何か特別な力があるに違いない——彼女はそう確信した。

そして、プラムはこの杖を使って、もっと強い魔法を覚えられる日が来ることを信じ、密かに魔法の探求を続けていくのだった。
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