命ある限りの贖罪

大里 悠

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    人とは、何故なぜこうもおろかに生きている生き物なのだろう。

    イギリスのことわざとして、好奇心は猫をも殺すCuriosity killed the cat、という言葉が存在しているけれど、実際としては、好奇心を持ったからと言って直ぐに死んでしまうという訳ではないし、逆に好奇心を持つことの無い生き物などこの世に存在しているのかどうかすら分からない。

    それでも、このような言葉が存在しているのならばそれは、好奇心を持ったが故に後悔をした人がいたからなのではないかと、僕は思う。

    実際的に、言葉というものは、何か事象が起こったから存在しているのだし、逆説的に、何も無かったというのならばその言葉は存在しない、しなくても良いということになってしまう。

    それならば、好奇心は猫をも殺す。この言葉には一体どのような思いが込められているのか、どのような想いが込められているのか。
    それは恐らく後悔だったのではないか、という結論に僕は至った。ただ、これは僕個人としての結論であり、他の人からしたら違う結論に至るかもしれない。そうだとしても、僕はこの結論を無かったことにするなど、出来はしないだろう。

    日本には古くから言霊ことだまというものが存在している。言葉には大きな力が宿っており、人に影響を及ぼすとされているのが言霊だ。
    例えば、格好良く育てと言われ続けたのならば、恐らくは限度があったとしても格好良く育つのだろうし、強く育てと言われ続けたのならば強く育つ可能性も高い。また、自分は何も出来ないと想い込むのなら何も出来なくなるだろうし、その逆もまたあるのだろう。

    これほどまでに言葉は力を持っているのだし、失うことは無いのだろう。
    逆に、失うことは無くても、増えることはあるだろう。何故なら、言葉とはそうやっていくつもの意味を持ちながら語り継がれて来たのだから。

    ここまで散々と言葉について語って来たけれど、ここまでのことでまとめるとするのなら、好奇心を持つことには何の支障も無いけれど言霊という力を持つことによって良くも悪くもなる、ということだ。

    もう一度になるのだが、長くはなったけれど、この結論に至った理由は僕の後悔が原因だからだ。
    あの時こうしていれば、あの時に彼らを止めていれば、もしかしたら彼らは何事も無く今まで通りの、普段の日常を送って行けたのでは、という後悔が今も僕の中に絶えず生まれ続けている。

    どのような言葉を並べようとも、所詮これはただの自己満足にしかならないのかも知れないし、誰に何の影響も与えないかもしれない。
    ただ、それでも僕はこれを書かなければならないのだと思っている。
    それが例え無意味であったとしても、しなくても良いことだったとしても、僕にはこれしか出来ないのだから。この程度のことしか出来ないのだから。

    僕はこれから、彼らについて語っていこうと思う。
    例え偽善者だと言われようとも、卑しく生きた卑怯者だと貶されようとも、この、恐らくどれだけ語ったとしても贖罪しょくざいにすらならないのかも知れない、僕の命が尽きるまで、未来永劫背負って行かなくてはならない、後悔という名のくさびの出来事を語っていこう。

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