愛バラ

麻生空

文字の大きさ
上 下
76 / 76

悪魔の君12

しおりを挟む
ライアン様からほとばしる魔力がセドリック……否、悪魔の君を覆う。

「嘘だろう…………まさか!!」
悪魔の君は信じられない者を見る様な目でライアン様を見た。
「こんな事……普通の人間が考える事じゃない」
そう言いながら悪魔の君はライアン様の所へと一歩また一歩と近付いて行く。

「普通じゃない……常軌を逸しているとしか言いようがない」
静かな歩調は確実に前へと進む。

「貴方にライアンはやらないわよ」
キャサリンはそう言ってキリリと悪魔の君を睨んだ。
「女。人の子にしては度量がある」
そう言いながら下卑た笑いを漏らす。

「セドリック!!」
そんな両者の間に私は滑り込む様に立ちはだかった。
一瞬にしてセドリックの顔が虫けらでも見る様な目になる。

そんな顔……私は知らない。
セドリックは私にそんな顔は絶対に見せない。

ジッと見つめる先に何時ものセドリックの色は見当たらない。

でも……信じているから。
貴方が戻る場所は私の所なんだって……そう祈りを込めセドリックへと一歩踏み出す。
「貴方になんか私のセディはやらない」そう言って更に足を進める。
知らずセドリックから貰った指輪に右手を添えていた。
「私……こんなにも貴方の事が好きだったんだ」
何時もセドリックから逃げようとしていた。
私の押しキャラは兄のイヴァンなんだと……でも、本当は違った。

知らず涙がこぼれ落ちる。

『愛している』


そう思って祈るようにセドリックを見た。
そんな私を見ていた彼の瞳が一瞬陰り、突如セドリックが崩れる。

「セドリック!!」
『危ない』そう思い受け止めようと力を入れる。
ドンと重い音を立て私の胸の中に落ちて来たセドリックを、勿論抱き止める事は出来ずそのまま二人で床まで倒れ込む。
ひとえに『重い』
「でも、……やっと触れる事が出来た」
高鳴る鼓動が正直に私の気持ちを代弁している。
「こんな時に気付くなんて……」
そう言ってセドリックの髪に顔を埋める。
「こんな時だから気付いたのかな……」
回した手に力が入る。

「好き……もう貴方しかいらない……」
そう呟きセドリックを包む。
「だから……責任とってよ……セディ……」

冷えきったセドリックの身体にすがり付く。
今度は私が貴方を離さない。
そうせつに願いながら。

変化はそう間を置かずに訪れた……
セドリックを覆っていたライアン様の魔力がパッと消え失せたと思うや、セドリックの輪郭がぼやけて来る……
ノイズのようなそれはまるでゲシュタルト崩壊のように……
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!

弥生 真由
恋愛
 何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった! せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!  ……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです! ※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...