愛バラ

麻生空

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悪魔の君8

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闇の中でその男はそっと目を開けた。

「招かざる客か……待ち人か……」
ボソリとそう言うとフッとわらう。

「まぁどちらでも良い。私への手土産を持って来ているのだから」
そう言うと自身へとつながる全ての扉を開いた。


「さぁ来い。私の待ち人よ」



☆☆☆☆☆☆☆


森を抜けて館の前まで来ると、悪魔の君もいくらなんでもそろそろ気付いているだろう。
ライアンはそう当たりをつける。

ゲームならコマンドで
館に       →入る 
            入らない

の選択肢が出る。

『入る』と選択すると館の順路を間違いなく通ればセドリックのいる部屋へとたどり着く。
間違ってもそれだけ遠回りをするだけだが、遅くなればなる程セドリック奪還の確率が減る事になる。
逆に『入らない』を選べば話はそのまま何事もなく進んで、5日後には完全に悪魔の君に取り込まれたセドリックによってこの世界が違う意味で統一されてしまう。
セドリックルートの隠しバットエンド、恐怖政治の始まりだ。

故に、ここで『入らない』はあり得ない。

そう思い他の3人の仲間を見てお互いに頷き合う。

勿論キャサリンはセカンドシーズンをプレイしているから『入らない』選択肢の後の出来事を知っている為に早く行けと催促さいそくする始末。

お互いの意思を再確認した所で館へと歩き出す。

その時。

バンと言う音と共に館の入口が突如とつじょ開いた。
まるで自分達を招き入れるかの様にだ。


まさか……ここまで話が違うのか?

アニメだと、悪魔の君の血筋でもあるライアンがこの館の入口を開く事になっている。
更に話が違う点で言えばメンバーに一人変更がある。
それはキャサリンだ。
本来なら悪役令嬢がパーティーに入る事はない。
基本的にヒロインのパーティメンバーは攻略対象とお助けキャラのみ。

考えてもみよう。
何せキャサリンはセドリックルートでは婚約者の座を争う悪役令嬢なのだ。
仲間になるなんてあり得ない。

「イレギュラーが多すぎたのか……」
一瞬にしてライアンに焦りにも似た不安が押しかかる。
いや……大丈夫なはずだ。
その為にセドリックが昔大事にしていたあの悪趣味なブレスレットに魔術を込めて渡しておいたのだから。

ただ、何故かセドリックはそのブレスレットの事を忘れている。

故に渡した時にすこぶる嫌味を言われたのだから。

『俺の趣味じゃねぇよ。お前の趣味だ』

と言いたかったが、幼い日にくすねていた事がバレると厄介なので黙っていた。

なにせ、魔術を込め発動させる為にはお前の思い入れが込もっていないと駄目だったから。

そうしてライアン一向は開かれた扉をくぐったのだった。
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