愛バラ

麻生空

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悪魔の君6

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何の感情もない空間にただしている自身の身体を何処か遠くに感じていた。

私の意思に従わない身体。

呆然と虚空を見つめている自身を不思議な感覚で見つめていた。
何処か他人事の様に……。

そんな時、微かに温かみを感じられてそちらに意識を向ける。
そこにはエマとお揃いで購入したあの指輪があった。

決して誰にも外せない呪いの様な呪文を込めたそれ……自分の執着とも言える複雑な術式、今でもエマと繋がっている事に安堵し自身の愚かにも軽率な思い込みに嫌気が差した。


「まだこの身体の意思に振り回されるのか……なかなかしぶとい」
そして、その男は深い溜め息を吐くやそのまま目をつぶった。

この男は誰なのだろう?
今の自分に判る事はとてつもない高濃度の魔力を感じるという事。
その一点のみである。

油断すると直ぐにでも飲み込まれそうな程の魔力に何とかあらがっているのが現実だ。

後どれくらい持つのだろうか?

自身を今なんとか繋ぎ止めているのは、先日エマと交わしたこの指輪と、一月前にライアンから念のためと無理矢理身に付けさせられている悪趣味なブレスレットのみなのだから。

『判っていたなら早く助けに来いライアン』
心の中で悲痛に呟く。

判っているのは今己を保たないともうエマの元には戻れないという事。

まだ手に入れていない愛しい人。
例え自身の身体であっても奪われるのは嫌だ。
だから抗う。

希望はまだ捨てるには早いから……。




☆☆☆☆☆☆☆



日の出前に館を出発したライアンのパーティーは一路深淵の森を目指して突き進む。

服装は実用性も兼ねてズボンを着用。
出発時に兄のイヴァンから「皆で男装するのか?」と問われたのは苦笑物だ。
何せ私達全員が転生者なのだから、女性がズボンを履く事に何の違和感もないのだ。

アンなんか「違うんです~」と必死にイヴァンにフォローしていたっけ。(笑)

まぁ、そんな訳で我々一向は順調に目的地を目指して進んでいた。

深淵の森は王都から少し郊外に離れた所にあり、これもゲームならではの考慮なのかと思う程だ。

森の入り口でアンが何やら呪文を唱える。
はっきり言って何を言っているのか理解出来ない。
けど、呪文らしきものを言い終わると両の掌から光がほとばしり森を覆う見えない膜に波紋を落とす。

見えないのに何故判るかって?

だって空間がゆがむのがえるから。
そしてうっすらと光る道が現れるとアンを先頭に森の中へと入って行く。
私達を導く様に光の道が目の前に現れる。
通り過ぎるとその光はスッと閉じて行きアンから遅れない様にと足を速める。

この道はセドリックに通じているんだ。
そう思うと不思議と足が軽くなる。

『待っててねセドリック。必ず貴方あなたを取り戻すから』

心の中で強くそう思いながら森へ一歩と足を踏み出した。
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