愛バラ

麻生空

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悪魔の君3

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「では事態を理解してないエマ嬢の為に少しセドリックの事を話そうか」

そう言ってライアン様は語り出す。

事の始まりは奇跡の庭で私と出会った時に遡り、そこで二度と会えなくなってしまった初恋の少女。
そのあまりにもの喪失感に一時魔力が暴走しかけたらしい。

何と驚く事にその時にはライアン様は前世の記憶を取り戻していたとの事。
本来なら離宮が一つこの世から消えていたらしいが、ライアン様の機転で回避出来たらしい。

一体どうやったのか疑問である。

その後、魔力のコントロールの為にライアン様がセドリックの学友と称していつも側についていたらしい。

ーーー王命で。


決してセドリックは美女専ではなく、昔会った少女に面影が似ている女性に声をかけていただけだと判明。

そして、その女性があの少女ではないと判ると一気に気分が下がるを繰り返し、色々と勘違いが発生していたとの事。

だからこそ、その少女と瓜二つの私に執着し、いつもその存在を感じている事に固執したのだと言うが……。
「あの……いつも存在を感じるってどういう事ですか?」
あまり聴きたくない様な、けど、確認せねばならない様な気がする。
「ん~。強いて言えばその指輪」
ちょんと指差しされたその指輪は、先日セドリックがエンゲージリングと言ってお揃いで購入した物だ。
「それには、まぁ目印みたいな物があってね、お互いに共鳴しあっているんだ」
そう言われてその指輪をジッと見つめる。
確か購入時も双子石とかなんたらと意味深な事を聞いた様に思う。
「魔力を流せば通信機能もあるけど、それをしなければお互いの存在を確認する程度だろうね」
それを聴いて一旦いったん心を落ち着かせた。
つまり、魔力を故意に流さなければ害にはならないと。
そんな所かしら?

そう考えているとキャサリンが「そうか」と何かを納得した様に声を上げた。
「それが『愛の思い出』なんだわ」
そう言ってアンとキャサリンは「そうだよね」と手を握りあっているけど……『愛の思い出』って何?
凄く寒いネーミングセンスだよね。

「二人とも話を飛ばさないで欲しい」
ライアン様が小さく咳払いをして二人を見る。
「指輪の件は後で話すから、まずは悪魔の君の話が先だ」
「そうですわね。そもそも、ゲームでは親密度マックスで発生するイベントだから、多分今のエマとセドリックは親密度マックスになったんだと思います。つまり両思いですわね」
両思い……。
本来なら嬉し恥ずかしその言葉が、現状は何も解決してはくれない。
「でも、確か今回のイベントの為には誰か当て馬的な方がいるはずですよね。それをセドリック殿下が誤解して心が闇に傾いた所を悪魔の君降臨って話だったかと……」
アンが遠慮がちにそう言葉を入れて来るけど……。
まさか想い出の君の事を思って泣いていたなんて、新妻のアンには言えないよ。
そう思いキャサリンの方を見やると満面の笑みでアンを見る。
「そんなの決まってますわ。想い出の君ですわよ」
『はー?何本当の事言っちゃうんですか?これから義理の姉妹になるのに、私滅茶苦茶気まずいですよ』
内心でキャサリンに文句をつけた。
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