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悪魔の君2
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「私達には共通の前世の記憶がある」
突然切り出された話の内容にイヴァンが眉をひそめる。
まさか、本当に言ってしまうのかしら?
そう思うも、私にはライアン様を止められない。
だって、今の私が何を言えばいいの?
事実なんて言えない。
だから、ここは丸っとライアン様に頼るしかないんだ。
「そこで『悪魔の君』の降臨を見て、降臨に必要な事を知っていたんだ」
『へっ?』
思わず私はライアン様を違う意味でガン見してしまう。
「我々人間の魔力は999で壁に当たる。でも、希にその壁を越える者がいる。その存在に『悪魔』の称号を付けるが、それには訳がある。イヴァンは知っているよね?」
ライアン様が兄にそう問い掛ける。
「人智を越えた者への呼称。絶対的強者への畏怖と羨望。そして、その力はどんな戦場をも覆す程の力を持つと言われている。しかし、その裏には人ならざる物との交わりがある。王家は基本的にそういった者達を優先して血脈へと取り入れて来た。ここの王家然り他国の王家然り、故に戦場には王家の者が必ず伴いお互いに睨みを効かせる。故に悪魔の称号を持つセドリック殿下もその為に稀なる力を持って生まれてこられたと言う事だろう?」
兄はそこまで言うとライアン様を見る。
「流石はイヴァンだね。話が早い」
ライアン様が感嘆しているが、私は全然飲み込めない。
大体『愛バラ』はファーストシーズンの途中で断念せざるおえなかったのだ。
悪魔の君とか知らないし……。
「実はそれとは別に『悪魔』の称号を持つ事に意味がある。はっきりと言えばその身に人ならざる物を宿す素質があると言う事だ」
何の事か?と私はライアン様と兄を交互に見てしまう。
「まさか……今セドリック殿下の身にも……」
恐る恐るイヴァンが確認するも、私以外の全員が頷く。
嫌……何で皆同じ空気を醸し出しているの?
愛バラを知らない兄も……。
そんな私にライアン様が困った様に微笑みながら説明を続けた。
「生憎エマ嬢は悪魔の君降臨前に亡くなってしまった様で、事の内容を知らない。かく言う私達も降臨する事は知っていても彼の身から正しく悪魔の君を離す術が判っている訳ではない」
ライアン様のその言葉にキャサリンとアンが暗い顔になる。
「イヴァンには悪いが、事が事だ。皆に怪しまれない様にセドリックが居るように偽装して欲しい。それとセドリック奪還の為に新婚の所悪いが、アン嬢を貸して欲しいのだ」
イヴァンが辛い顔になりながらアンと私の方を交互に見る。
そして、一つ大きく息を吐くと諦めた様にライアン様を見た。
「判った。王宮の重鎮相手に何処までもつか判らないが、了解した」
そしてライアン様の心臓の所に右人差し指を向けると
「その代わり。アンとエマを頼んだぞ。これは貸しでも借りでもない」
そう言って踵を返し扉の方へと向かう。
「事の顛末を聴かなくていいのか」
ライアン様が兄の背に向かい声をかけるが
「自身のやることだけ判っていれば良い。その方がお互いに良いだろう。私はこれから消えたセドリック殿下の偽装作業に入るから後は頼んだ」
それだけ言うと再び歩き出す。
兄が部屋から退出してから程なくして私はライアン様に尋ねた。
「あの……偽装工作なんて兄で大丈夫なのでしょうか?」
不安になりながらそう問えば
「私が表の参謀なら彼奴は影の参謀だろうよ。オーウェンなんか気付かない内に利用されているだなんて思いもしないだろうな」
そう言うとライアン様は楽しそうに笑んだ。
あの正統派王子様の兄が?
男の世界には女では判らない事があるのだろうと勝手に自身を納得させ、セドリック奪還へ向けての話を進めてもらった。
突然切り出された話の内容にイヴァンが眉をひそめる。
まさか、本当に言ってしまうのかしら?
そう思うも、私にはライアン様を止められない。
だって、今の私が何を言えばいいの?
事実なんて言えない。
だから、ここは丸っとライアン様に頼るしかないんだ。
「そこで『悪魔の君』の降臨を見て、降臨に必要な事を知っていたんだ」
『へっ?』
思わず私はライアン様を違う意味でガン見してしまう。
「我々人間の魔力は999で壁に当たる。でも、希にその壁を越える者がいる。その存在に『悪魔』の称号を付けるが、それには訳がある。イヴァンは知っているよね?」
ライアン様が兄にそう問い掛ける。
「人智を越えた者への呼称。絶対的強者への畏怖と羨望。そして、その力はどんな戦場をも覆す程の力を持つと言われている。しかし、その裏には人ならざる物との交わりがある。王家は基本的にそういった者達を優先して血脈へと取り入れて来た。ここの王家然り他国の王家然り、故に戦場には王家の者が必ず伴いお互いに睨みを効かせる。故に悪魔の称号を持つセドリック殿下もその為に稀なる力を持って生まれてこられたと言う事だろう?」
兄はそこまで言うとライアン様を見る。
「流石はイヴァンだね。話が早い」
ライアン様が感嘆しているが、私は全然飲み込めない。
大体『愛バラ』はファーストシーズンの途中で断念せざるおえなかったのだ。
悪魔の君とか知らないし……。
「実はそれとは別に『悪魔』の称号を持つ事に意味がある。はっきりと言えばその身に人ならざる物を宿す素質があると言う事だ」
何の事か?と私はライアン様と兄を交互に見てしまう。
「まさか……今セドリック殿下の身にも……」
恐る恐るイヴァンが確認するも、私以外の全員が頷く。
嫌……何で皆同じ空気を醸し出しているの?
愛バラを知らない兄も……。
そんな私にライアン様が困った様に微笑みながら説明を続けた。
「生憎エマ嬢は悪魔の君降臨前に亡くなってしまった様で、事の内容を知らない。かく言う私達も降臨する事は知っていても彼の身から正しく悪魔の君を離す術が判っている訳ではない」
ライアン様のその言葉にキャサリンとアンが暗い顔になる。
「イヴァンには悪いが、事が事だ。皆に怪しまれない様にセドリックが居るように偽装して欲しい。それとセドリック奪還の為に新婚の所悪いが、アン嬢を貸して欲しいのだ」
イヴァンが辛い顔になりながらアンと私の方を交互に見る。
そして、一つ大きく息を吐くと諦めた様にライアン様を見た。
「判った。王宮の重鎮相手に何処までもつか判らないが、了解した」
そしてライアン様の心臓の所に右人差し指を向けると
「その代わり。アンとエマを頼んだぞ。これは貸しでも借りでもない」
そう言って踵を返し扉の方へと向かう。
「事の顛末を聴かなくていいのか」
ライアン様が兄の背に向かい声をかけるが
「自身のやることだけ判っていれば良い。その方がお互いに良いだろう。私はこれから消えたセドリック殿下の偽装作業に入るから後は頼んだ」
それだけ言うと再び歩き出す。
兄が部屋から退出してから程なくして私はライアン様に尋ねた。
「あの……偽装工作なんて兄で大丈夫なのでしょうか?」
不安になりながらそう問えば
「私が表の参謀なら彼奴は影の参謀だろうよ。オーウェンなんか気付かない内に利用されているだなんて思いもしないだろうな」
そう言うとライアン様は楽しそうに笑んだ。
あの正統派王子様の兄が?
男の世界には女では判らない事があるのだろうと勝手に自身を納得させ、セドリック奪還へ向けての話を進めてもらった。
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