愛バラ

麻生空

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アンとイヴァンの結婚6

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粛々しゅくしゅくと式が滞りなく終わり二次会と言う名の夜会へと雪崩れ込む。
庭から邸のホールへと移動しようとした時、アンに呼び止められた。

「次はエマお嬢様の番ね」

そう言ってニコリとアンは笑み、私にブーケを握らせる。
先程まで隣にいたセドリックはイヴァンを連れて根回しした重鎮方の所へ挨拶回りに行っている。
なので、今はアンと二人きり。
誰に気兼ねする事もない。
ジットリとアンの艶姿を堪能する。
スチルに保存ですわね。

「アン違うわよ」
私は苦笑しながらアンを見る。
「今日からは私の義姉なんだから『エマ』と呼んで」
と言葉を付け加える。

同じ転生者。

同じ愛バラのヒロイン。

大好きなアン。

そう思うと心がほっこりする。

「お兄様が主役ヒロインを待っているわ。アン行ってあげて」
そういうとアンは破顔してその場を後にした。

アンの背中を見ながら今貰ったブーケをそっと抱き締める。

「大好きなアン。
  大好きなお兄様。
  大好きな想い出の君。
  さよなら……私の憧れ……」

ボソリとそう呟く。

「エマ……」

後ろから声がかかり振り返ればキャサリンが立っていた。

「エマ……貴女……もしかしてイヴァンのこと……」

苦しそうなキャサリンの顔にとても複雑な気分になる。

「キャサリン……。多分私は想い出の君に恋していたんだと思う。どうしても見たかったスチル。どうしても聴きたかった声。だから近くに……想い出の君の妹に転生したんだと思う。決して叶わない恋だったけど……」
そう言うと涙が落ちた。

多分私は愛バラのゲームをしながらアンに感情移入しすぎて、想い出の君を思っていたんだと思う。
それは本当の恋に近く、私が前世で逝くその時にまで心の中に未練たらしくあったんだ。
だから神様は私を想い出の君の妹ポジションに転生させたのかな……それなら一層アンに転生したかった。
そう思う位には……。
好きだったんだと思う。

でも、今はそれよりもセドリックの事が好きで……でも、それを素直に言えない自分がいて、こんなにひねくれたのも全部セドリックが強引なのが悪いと思う。
だから、私には必要だったんだと思う。
こうしてはっきりと諦められる儀式が。
私はキャサリンに抱き締められながら泣いた。

これで辛い恋に別れを告げられる。

これで私はセドリックに素直に「好きだ」って言える。

そう思い再び瞼を開くと、そこにはセドリックが立っていた。

空っぽの瞳に紫紺が深まる。
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