58 / 76
アンとイヴァンの結婚1
しおりを挟む
待ちに待ったこの日が来ました。
私が見れなかったヒロインと想い出の君との結婚式。
愛バラの王道エンディング。
つまりそれはグッドエンドですよ。
邸は朝から大にぎわい。
ーーーと言う名の戦争状態。
当の主役のアンは数名の侍女と部屋におこもり。
ーーーと言う名のエステ。
頭の先から足の指までピッカピカに磨き挙げられています。
もう一人の主役の兄イヴァンは両親と一緒に会場で細かな打ち合わせ。
私はその後ろで今日の段取りを聞いて頷くだけの者。
聞いていたが……何故か紙を持ち侍従や侍女達に指示を出しているのは両親ではなく兄のイヴァンだった。
所々で兄は私の方を見て「立ち位置は判るかい?」とか「父達の後に続けば大丈夫だから」とか優しくアドバイスをしてくれる。
自身が一番大変なのにめっちゃ有難い事ですお兄様。
やっぱり『想い出の君』なだけあって愛バラ一番の好物件。
思わず眺めてしまう。
本当に兄弟じゃなかったら狙っていたよ。
そんな具合で朝の早い時間から打ち合わせをしていたら、兄が何かに気付いて「ちっ」っと軽く舌打ちをした。
兄にしては珍しい粗野な態度。
何事?
と後ろを振り向くと、何故かそこにはセドリックが立っていた。
「えっ?」
こんな朝早くから何をしに来たのかしら?
疑問である。
両親を軽く制した兄がそのままセドリックの方へと移動する。
私はどうしようか?
一応婚約者なのだから挨拶くらいは必要だよね。
そう思い兄の後ろに続く。
そんな私達に
「やぁ。おはよう」
と軽く手を振るセドリック。
セドリックには殺伐とした雰囲気を出すこの戦場が見えていないのかしら?
と思った事は言うに難い。
「おはようございます。セドリック殿下。招待の時間には大分早いと思いますが」
兄が慇懃無礼に口上する。
「まさか。式には正式な礼装で出直すから安心して」
ニコリとそう言うと後ろに続く私を見る。
ヤバい目が合ってしまった。
思わず足が止まる。
「それを聞いて安心したとでも?」
尚も慇懃な兄の態度。
「では、何をしに来たのですか?」
尚も兄はセドリックに不躾に問い掛けた。
そんな兄の態度に全然怒る事もなくセドリックが話を進める。
「今日、この日の為に根回しに奔走した為に、ここ一月私の婚約者に会えなかった。式の最中に暴走しない様にエマに会っておこうと思ってね」
そう言い目を細めながら私の方を見るセドリックに嫌な予感しかしない。
イヴァンは「ふぅーっ」と息を吐くと困った様に私の方を見た。
「エマ。少しセドリック殿下とお茶をして来てくれ。二階の応接間は今回使わないからそこで……」
二階の応接間?
もしかしてたまに私達がお茶をするあの部屋の事かしら?
そう思うが……。
チラリとセドリックの方を見ると満面の笑み。
これは逃げられないな……と、諦め半分。
「分かりました」
と短く返事をする。
イヴァンは苦笑しながらセドリックに向き直り
「では、殿下。一時間だけお時間を作りますので積もる話をどうぞ」
と軽く礼をとる。
「ありがとうイヴァン」
セドリックは清々しく礼を言う。
「エマの準備もありますので、呉々も一時間で用件をお済ませ下さい。呉々も宜しくお願い致します殿下」
尚もしつこい位に釘を指す兄イヴァン。
「判っているよ。イヴァン」
とセドリックは爽やかに返すと私の横に立ち腰に手を添えて来る。
私が案内するより早くセドリックにエスコートされ、やむなくドナドナされる様に邸へと足を向けた。
今回は完全に兄に売られたな。
これから一時間、私はどうなるのでしょうか?
想像するのも怖いです。
私が見れなかったヒロインと想い出の君との結婚式。
愛バラの王道エンディング。
つまりそれはグッドエンドですよ。
邸は朝から大にぎわい。
ーーーと言う名の戦争状態。
当の主役のアンは数名の侍女と部屋におこもり。
ーーーと言う名のエステ。
頭の先から足の指までピッカピカに磨き挙げられています。
もう一人の主役の兄イヴァンは両親と一緒に会場で細かな打ち合わせ。
私はその後ろで今日の段取りを聞いて頷くだけの者。
聞いていたが……何故か紙を持ち侍従や侍女達に指示を出しているのは両親ではなく兄のイヴァンだった。
所々で兄は私の方を見て「立ち位置は判るかい?」とか「父達の後に続けば大丈夫だから」とか優しくアドバイスをしてくれる。
自身が一番大変なのにめっちゃ有難い事ですお兄様。
やっぱり『想い出の君』なだけあって愛バラ一番の好物件。
思わず眺めてしまう。
本当に兄弟じゃなかったら狙っていたよ。
そんな具合で朝の早い時間から打ち合わせをしていたら、兄が何かに気付いて「ちっ」っと軽く舌打ちをした。
兄にしては珍しい粗野な態度。
何事?
と後ろを振り向くと、何故かそこにはセドリックが立っていた。
「えっ?」
こんな朝早くから何をしに来たのかしら?
疑問である。
両親を軽く制した兄がそのままセドリックの方へと移動する。
私はどうしようか?
一応婚約者なのだから挨拶くらいは必要だよね。
そう思い兄の後ろに続く。
そんな私達に
「やぁ。おはよう」
と軽く手を振るセドリック。
セドリックには殺伐とした雰囲気を出すこの戦場が見えていないのかしら?
と思った事は言うに難い。
「おはようございます。セドリック殿下。招待の時間には大分早いと思いますが」
兄が慇懃無礼に口上する。
「まさか。式には正式な礼装で出直すから安心して」
ニコリとそう言うと後ろに続く私を見る。
ヤバい目が合ってしまった。
思わず足が止まる。
「それを聞いて安心したとでも?」
尚も慇懃な兄の態度。
「では、何をしに来たのですか?」
尚も兄はセドリックに不躾に問い掛けた。
そんな兄の態度に全然怒る事もなくセドリックが話を進める。
「今日、この日の為に根回しに奔走した為に、ここ一月私の婚約者に会えなかった。式の最中に暴走しない様にエマに会っておこうと思ってね」
そう言い目を細めながら私の方を見るセドリックに嫌な予感しかしない。
イヴァンは「ふぅーっ」と息を吐くと困った様に私の方を見た。
「エマ。少しセドリック殿下とお茶をして来てくれ。二階の応接間は今回使わないからそこで……」
二階の応接間?
もしかしてたまに私達がお茶をするあの部屋の事かしら?
そう思うが……。
チラリとセドリックの方を見ると満面の笑み。
これは逃げられないな……と、諦め半分。
「分かりました」
と短く返事をする。
イヴァンは苦笑しながらセドリックに向き直り
「では、殿下。一時間だけお時間を作りますので積もる話をどうぞ」
と軽く礼をとる。
「ありがとうイヴァン」
セドリックは清々しく礼を言う。
「エマの準備もありますので、呉々も一時間で用件をお済ませ下さい。呉々も宜しくお願い致します殿下」
尚もしつこい位に釘を指す兄イヴァン。
「判っているよ。イヴァン」
とセドリックは爽やかに返すと私の横に立ち腰に手を添えて来る。
私が案内するより早くセドリックにエスコートされ、やむなくドナドナされる様に邸へと足を向けた。
今回は完全に兄に売られたな。
これから一時間、私はどうなるのでしょうか?
想像するのも怖いです。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。



淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる