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アンとイヴァンの婚約4
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「そうだね。いくら公爵家の令嬢だと言っても他の令嬢方が徒党を組んだら勝ち目がない。エマの場合は筆頭公爵家令嬢と和解し友人になった為に他の令嬢方が沈黙し事が勝因だ。キャサリン嬢も私達の事を応援しているしね」
セドリックはキャサリンが応援している所をやたらと強調しながら私の方をにこやかに見る。
何が言いたいのか理解出来ずに私はセドリックの次の言葉を待つ。
「しかし、アンはこう言っては悪いが名前だけの伯爵家、力のある友人もいないに等しい。有力な貴族達からの圧力が掛かればひとたまりもない」
「……」
ごもっともです。
「しかし、イヴァンも21だし、アンも19だ。婚約発表するなら時期的に今が一番いいのだが……」
暫しセドリックは思案している。
「あの。話が良く見えないのですが、先程の話によると、私の勝因はキャサリンと仲良くなった事ですわよね」
「そうだな」
セドリックはいとも簡単に同意して来る。
「では、アンもキャサリンと仲良くなれば宜しいのでは?」
私は名案とばかりに手を合わせて言った。
「あれほど嫌われていたのに?」
イヴァンが怪訝そうに言葉を吐き捨てる。
「今のキャサリンは以前とは違います」
だって転生者なのだから。
困った様な顔になるアンの手を取り、私は微笑む。
「キャサリンは……そうですね、憑き物が取れたのですわ」
「憑き物?」
「はい。ですから今は天使様や女神様の様な慈悲深いのです」
熱く語る私に、二人の男性は胡乱な眼差しを向けて来る。
『あれが憑き物?どう見てもあの嫌みや嫌がらせは地でやっていたぞ』(byイヴァン)
『あんな悪態を付いて天使や女神だって?まぁ、助言には甚く感謝する事が多いが……いかん。あれは私でも思いつきもしない技を思いつく。こんなに簡単に騙されているようでは、エマを一人にしたら誘拐されかねない』(byセドリック)
「憑き物……そうなのですね」
アンは「なるほど」と納得する。
正直それで良いのか?とも思うがそこは愛嬌という事で勘弁して欲しい。
「はい。今度一緒にお茶をしましょう」
私がそう言い微笑めばアンは「そうですね」と相槌を打つ。
私達二人で「キャサリンはきっと協力して下さいますわ」と言うと、セドリックは「協力」とぼそりと呟く。
そして何かを思い出したのか人の悪い笑みを称え「そうだな」と納得してくれた。
良く良く考えればセドリックはドSで鬼畜だが、この国の独身女性にしたら優良物件の最高峰。
ポッと出の候補にすら上がっていなかった令嬢が婚約者なんて、普通なら憤慨ものだろうに他の貴族からの反発が一切なかった。
先程からの話をまとめると、私の身分が公爵令嬢で最有力候補のキャサリンがそれを認め尚且つ友人になったから、他の貴族が何も言わないという事だ。
逆に言えばキャサリンが認めなければ私達も婚約なんてすんなり通らなかったと言う事になる。
あれ、それって私がキャサリンと喧嘩でもしたらセドリックルート離脱出来るって事?
そんな不穏な事を考えていると思いっきりセドリックに手を捕まれていた。
「エマ。結婚式はイヴァン達と合同でも良いぞ」
「「えっ!!」」
何ですかそのイベント。
思わず兄妹揃って驚いてしまう。
最初に立ち直った兄がセドリックに抗議する。
「殿下!それはいけません」
イヴァンが慌てて身を乗り出す。
「何が駄目なのだ?」
事も無げにセドリックが言うや
「次期国王たる王太子殿下の結婚式が一貴族と合同だなんて許される訳がないでしょう?」
瞠目して兄を見てしまう。
『兄よ。良く言ってくれた。このままでは私達の婚姻が早まってしまう恐れがある』
「しかし、そうでもしないとお前達はなかなか前に進まないだろう?それではエマが安心して私の元へ嫁に来れないではないか」
思いっきり目をパチクリさせてしまいました。
何故にそんな勘違いが……?
別に兄が結婚をしないから私がしぶっている訳ではないのに。
「やはり上の兄弟が片付かないと下は気を使うらしい。先日ライアンがその様な事を言っていた」
えっ!?
ライアン様にご兄弟が?
そんな設定聞いてないんだけど。
「あの……ライアン様にご兄弟がいらっしゃるのですか?」
まさか、初期設定が変わっているのかしら?
「いや。確か一人っ子だったはずだ」
セドリックは右上を見ながら、そう応えた。
「では、何故その様な話に?」
おかしいでしょう?
と思いっきり質問してしまう。
「何。ライアンとキャサリン嬢の縁談の話で、キャサリン嬢の上の兄弟に相手がいない状態で嫁に貰うのもどうか……とライアンが思案していたからな」
「はあ……」
間の抜けた返事をしながら、あの変態兄弟の相手なんて出来る令嬢がいるのだろうか?とマジに考えてしまう。
だって、一人はSMプレイ好きなSと見せかけてM男。
私だったら遠慮したい。
もう一人はメンヘラで熟女好きなあざとい少年(?)を装った変態。
こちらは全面的に拒否したい。
って言うか、近付きたくもない。
思いっきり遠い目になってしまう。
そう考えると、結婚相手に決してなり得ないキャサリン嬢は気が楽だろうと、本人が聞いたら激怒りになる様な事を考えてしまう。
勿論エマはキャサリンの置かれている状況をしらないからこその安易な考えなのだが、もしセカンドシーズンをプレイしていたらキャサリンには決して転生しなくて良かったと心底思うだろう。
そんな二人はお互いに何とかバットエンド回避の為に結託しているのだが……しかし、それもお互いに感覚の齟齬がある。
だから、エマはセドリックルートを回避出来ないのだ。
セドリックはキャサリンが応援している所をやたらと強調しながら私の方をにこやかに見る。
何が言いたいのか理解出来ずに私はセドリックの次の言葉を待つ。
「しかし、アンはこう言っては悪いが名前だけの伯爵家、力のある友人もいないに等しい。有力な貴族達からの圧力が掛かればひとたまりもない」
「……」
ごもっともです。
「しかし、イヴァンも21だし、アンも19だ。婚約発表するなら時期的に今が一番いいのだが……」
暫しセドリックは思案している。
「あの。話が良く見えないのですが、先程の話によると、私の勝因はキャサリンと仲良くなった事ですわよね」
「そうだな」
セドリックはいとも簡単に同意して来る。
「では、アンもキャサリンと仲良くなれば宜しいのでは?」
私は名案とばかりに手を合わせて言った。
「あれほど嫌われていたのに?」
イヴァンが怪訝そうに言葉を吐き捨てる。
「今のキャサリンは以前とは違います」
だって転生者なのだから。
困った様な顔になるアンの手を取り、私は微笑む。
「キャサリンは……そうですね、憑き物が取れたのですわ」
「憑き物?」
「はい。ですから今は天使様や女神様の様な慈悲深いのです」
熱く語る私に、二人の男性は胡乱な眼差しを向けて来る。
『あれが憑き物?どう見てもあの嫌みや嫌がらせは地でやっていたぞ』(byイヴァン)
『あんな悪態を付いて天使や女神だって?まぁ、助言には甚く感謝する事が多いが……いかん。あれは私でも思いつきもしない技を思いつく。こんなに簡単に騙されているようでは、エマを一人にしたら誘拐されかねない』(byセドリック)
「憑き物……そうなのですね」
アンは「なるほど」と納得する。
正直それで良いのか?とも思うがそこは愛嬌という事で勘弁して欲しい。
「はい。今度一緒にお茶をしましょう」
私がそう言い微笑めばアンは「そうですね」と相槌を打つ。
私達二人で「キャサリンはきっと協力して下さいますわ」と言うと、セドリックは「協力」とぼそりと呟く。
そして何かを思い出したのか人の悪い笑みを称え「そうだな」と納得してくれた。
良く良く考えればセドリックはドSで鬼畜だが、この国の独身女性にしたら優良物件の最高峰。
ポッと出の候補にすら上がっていなかった令嬢が婚約者なんて、普通なら憤慨ものだろうに他の貴族からの反発が一切なかった。
先程からの話をまとめると、私の身分が公爵令嬢で最有力候補のキャサリンがそれを認め尚且つ友人になったから、他の貴族が何も言わないという事だ。
逆に言えばキャサリンが認めなければ私達も婚約なんてすんなり通らなかったと言う事になる。
あれ、それって私がキャサリンと喧嘩でもしたらセドリックルート離脱出来るって事?
そんな不穏な事を考えていると思いっきりセドリックに手を捕まれていた。
「エマ。結婚式はイヴァン達と合同でも良いぞ」
「「えっ!!」」
何ですかそのイベント。
思わず兄妹揃って驚いてしまう。
最初に立ち直った兄がセドリックに抗議する。
「殿下!それはいけません」
イヴァンが慌てて身を乗り出す。
「何が駄目なのだ?」
事も無げにセドリックが言うや
「次期国王たる王太子殿下の結婚式が一貴族と合同だなんて許される訳がないでしょう?」
瞠目して兄を見てしまう。
『兄よ。良く言ってくれた。このままでは私達の婚姻が早まってしまう恐れがある』
「しかし、そうでもしないとお前達はなかなか前に進まないだろう?それではエマが安心して私の元へ嫁に来れないではないか」
思いっきり目をパチクリさせてしまいました。
何故にそんな勘違いが……?
別に兄が結婚をしないから私がしぶっている訳ではないのに。
「やはり上の兄弟が片付かないと下は気を使うらしい。先日ライアンがその様な事を言っていた」
えっ!?
ライアン様にご兄弟が?
そんな設定聞いてないんだけど。
「あの……ライアン様にご兄弟がいらっしゃるのですか?」
まさか、初期設定が変わっているのかしら?
「いや。確か一人っ子だったはずだ」
セドリックは右上を見ながら、そう応えた。
「では、何故その様な話に?」
おかしいでしょう?
と思いっきり質問してしまう。
「何。ライアンとキャサリン嬢の縁談の話で、キャサリン嬢の上の兄弟に相手がいない状態で嫁に貰うのもどうか……とライアンが思案していたからな」
「はあ……」
間の抜けた返事をしながら、あの変態兄弟の相手なんて出来る令嬢がいるのだろうか?とマジに考えてしまう。
だって、一人はSMプレイ好きなSと見せかけてM男。
私だったら遠慮したい。
もう一人はメンヘラで熟女好きなあざとい少年(?)を装った変態。
こちらは全面的に拒否したい。
って言うか、近付きたくもない。
思いっきり遠い目になってしまう。
そう考えると、結婚相手に決してなり得ないキャサリン嬢は気が楽だろうと、本人が聞いたら激怒りになる様な事を考えてしまう。
勿論エマはキャサリンの置かれている状況をしらないからこその安易な考えなのだが、もしセカンドシーズンをプレイしていたらキャサリンには決して転生しなくて良かったと心底思うだろう。
そんな二人はお互いに何とかバットエンド回避の為に結託しているのだが……しかし、それもお互いに感覚の齟齬がある。
だから、エマはセドリックルートを回避出来ないのだ。
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