愛バラ

麻生空

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もう一人の転生者キャサリン視点11

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翌日、夜会で疲れたせいか昼過ぎまで寝ていてしまった。

しまった……思いっきり寝坊したよ。

頭をガシガシ掻いて起き上がると直ぐに侍女を呼び入浴の準備をしてもらう。

色々すっきりしたい。
重い体を引きずりながら浴室に行くと数名の侍女が体を洗ってくれる。

最初は恥ずかしくってなかなか慣れなかったが、もともとそういう習慣だった公爵家の令嬢の記憶もある為か直ぐに慣れた。

時間をかけて隅々まで洗い流された体を湯船に浸ける。

あ~生き返る。
元日本人のさがなのか、お風呂でまったりとしてしまう。
そして、長風呂。
魔法も使えるのでぬるくなってきたら魔法で温め直す。

ビバ魔法だね。

蛇口をひねるより簡単だ。

でも、ここで気を付けなければならない事がMPである。
この世界ははぐれ聖霊が跋扈ばっこする。
王都はそれ程でもないが警戒するに越した事はない。

何故都にそれ程はぐれ聖霊が出ないのかって?
だって、悪魔の君のセドリックがいるから。

彼奴の気配で近寄れないでいるんだから。
確かそう言う話だった。


先祖返りとか良く聞く言葉だけど、セドリックは正にそれ。

元来『悪魔』の称号を冠する者がいる家系は人ではない物が混じっている。


何故なら人としての壁は999でカンストしてしまうのが現実だから。
つまりどんなに頑張ったって大賢者止まり。
その壁の上に行ける者は故に『悪魔』や『天使』と例えられる。
言わば『人ならざる者』。
だからこそ危うい存在でもあるのだ。

現在数名いる『悪魔』の称号を持つ者の中で特に力のある者がセドリックだ、もう直ぐ運命の日が来る。
だからこそ私は私の出来る限りの事をしておかねばならない。

体が浮腫みそうになる位長湯をした私の元に、エマから手紙が来たのは夕方に近い頃だった。
「明日か……」
昨夜の夜会の終わりに兄のオーウェンからライアンとのディナーの約束を取り付けて貰った。
昼から衣装やら頭やらと忙しいから午前中なら何とかなるかな?と思い早めの時間でならと手紙をしたためる。
念のためセドリックにも明日エマが来る事を伝えなくては。
そう思い通信機を兼ねたアクセサリーに魔力を流し込む。

「何だ珍しいな。そちらから連絡を寄越すなんて」
セドリックが機嫌良く応対して来る。
まぁ、昨夜は楽しく過ごしたのだろうからそれも頷ける。
「明日の早朝。エマが私の家にお茶をしに来ます。仮面の着用も促しましたので大丈夫かとは思いますが、一応ご連絡だけでもと思いまして」
報連相ほうれんそうは大切だ。
と義務的に報告すると「それはありがとう」とまたもや機嫌良く返事が返って来た。
「じゃあ今夜は仮面を身近に置いている可能性もあるな」
と、ボソリと声が聞こえて来る。
仮面を身近に置いたからって何だって言うのだろうか?

「色々ありがとうキャサリン嬢。今夜は楽しい夜になりそうだよ」

セドリックは意味不明な事を言うとそのまま通信を切った。

「訳わかんね~」
そう言って私はベッドへとダイブした。
そして、ライアンの攻略を頭に描きつつ策を練ったのであった。

しかし、ここで思い止まるのも一つの手だったと思い至らなかった事に、私は後から後悔する事になるのだ。
そう、それは明日の夜に……。
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