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もう一人の転生者キャサリン視点8
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「さぁ、キャサリン様お召し上がりになって」
エマ嬢はそう言うとケーキを取り分け私の方へと手渡して来た。
「有り難うございますエマ様」
私はにこりと微笑みづつフォークで一口大の大きさに切るとそっと手を添えながら食べてみせる。
「美味しゅうございますわ。エマ様もどうぞお召し上がりになって」
私はそう言うと再び微笑む。
うん。
本当に美味しい。
流石は王宮のシェフだけあって良い仕事をしている。
「有り難うございます。では」
エマ嬢も一口大に切ったケーキをそっと食べた。
「まぁ、本当に美味しゅうございますわ」
ホホホ……と二人で笑った所で言葉が途切れた。
何だろう。
この狸の化かし合いは……。
思いっきり溜め息を付きたいのを我慢していると、エマ嬢は深刻そうな顔になっていた。
「エマ様どうしまして?」
と私は水を向ける。
「実は私。キャサリン様にお願いがありますの」
ちょっと声のトーンが落ちてしまっている。
まさか、今さら婚約破棄なんて言わないわよねこの子。
そう懸念しつつエマ嬢に話の続きを促すと
「あの、実はキャサリン様は殿下の婚約者候補筆頭令嬢だったとお伺い致しました」
嫌な予感がビリビリする。
昔からこういう変な勘は外れた事がない。
「ええ、そうですわね 」
口にカップを近付けつつ私は肯定する。
『お願いだから婚約破棄なんて言うなよ』と心の中で念派を送るが
「それで、もし宜しければ殿下の婚約者を代わって頂けないかと思いまして」
やっぱりか……私は思いっきり顔が固まるのを感じた。
「は?冗談でございましょう」
一瞬にして眉間に皺が寄る。
ここで引き下がっては元も子もない。
何せその後に待っているのは私にとってのバットエンドオンリーと言う無情な結末なのだ。
「いえ。真面目に言っております」
エマ嬢は更に身を乗り出して言葉を強くして来た。
「冗談ではなくってよ。皆の前でも婚約発表したのですから、それ相応の理由がなければ破棄出来ません。それに、殿下と婚約破棄したなどエマ様の醜聞にもなりましてよ。下手したら生涯結婚すら出来ない事に。お分かりかしら?」
私は一気にそこまで言うと深く息をついた。
「重々承知しております、しかし、私には過ぎたご縁なので……」
語尾が低くなるエマ嬢に私は更に言葉を重ねた。
何せこちらも死活問題。
引くわけにはいかない。
「嫌ですわ。私、今ライアン様と縁談がまとまる所ですのよ」
愛バラ一番の安全パイとの縁組みだ。
この私が逃すとでも?と勢いを付けて言ってみる。
「えっ?ライアン様ですか?」
私の言葉にエマ嬢が目を見開く。
「正直私殿下の事は好みではございませんの。周りが勝手にそう言っていただけでしてよ」
あんな腹黒鬼畜でどSな殿下……それだけでもあり得ないのに、あっちの方はジョセフの上を行く。
流石は悪魔の名を冠する者。
絶倫な所も悪魔級。
体力馬鹿も大概にして欲しい。
「そうなのですか……」
段々とエマ嬢の顔が蒼白になって来た。
「今回の婚約は政略的な動きはなかったと思いますが、エマ様は殿下の事が好きだからご婚約したのではなくて?」
さも当たり前の様に問うてみる。
「ち……違います」
悲痛な面持ちでエマ嬢は否定して来た。
「では何故了承しましたの?こう言う言い方は悪いとは思いますがマリク公爵様は王家から王太子の婚約者の話が出た時に真っ先に離脱の意思を示されたはずですが」
セドリックをけしかけておいて何ですけどね。
「……」
エマ嬢は途方に暮れた顔になった。
多分今のエマ嬢はセカンドシーズンの容姿だろう。
「そんなお顔をされないで……宜しければお互いに仮面を取りませんこと?」
私はそう言うと自身の仮面に手を掛けた。
「あっ……」
エマ嬢はそう言うと少し躊躇った後、自身の仮面に手を添えて静かに外した。
「やはり……」
私は全ての事に納得いったとばかりに相槌を打つ。
そしてエマ嬢にとっての決定打となるだろう言葉を紡ぐ。
「不躾な質問を致しますわ。エマ様。『愛バラ』はご存知?」
私の言葉にエマ嬢がフリーズする。
「何故その言葉を……」
エマ嬢が震える声でそう言うと、私は苦笑する。
「色々納得行きましたわ。どうやら私達二人は転生者の様ですわね」
と微笑みかける。
『味方は同じ転生者の私だけよ』オーラを出しながら。
「転生者……私達が……」
そして、呆然とするエマ嬢に更に現状を告げるとどうやらセカンドシーズンを知らないらしい事が分かった。
「ではセカンドシーズンなんて知らないのですわね」
再度確認の意味で問えば
「知りませんわ」
と素直に答える。
その答えにちょっと安堵する。
まだ行けると。
「あの因みにそのセカンドシーズンとはどの様な物ですの?」
と恐る恐るエマ嬢が聞いて来た。
「ああ。そうですわね。では少々内容をお話しますわ」
そう言うと再びケーキを食べる。
何か気が抜けてしまったな~。
そう思うと前世のがさつな性格が現れ素に戻ってしまった。
「まぁ同じ転生者同士ですし。様付けもやめましょう。それに私達だけの時は素で話しましょう。正直肩が凝って……」
私はそう言うと軽く肩を回す。
前世で肩が凝るとよくやっていた事だ。
「そうですね。では、キャサリン。内容を聞かせて下さい」
エマの真摯な面持ちに何処まで話すべきか少し模索した。
エマ嬢はそう言うとケーキを取り分け私の方へと手渡して来た。
「有り難うございますエマ様」
私はにこりと微笑みづつフォークで一口大の大きさに切るとそっと手を添えながら食べてみせる。
「美味しゅうございますわ。エマ様もどうぞお召し上がりになって」
私はそう言うと再び微笑む。
うん。
本当に美味しい。
流石は王宮のシェフだけあって良い仕事をしている。
「有り難うございます。では」
エマ嬢も一口大に切ったケーキをそっと食べた。
「まぁ、本当に美味しゅうございますわ」
ホホホ……と二人で笑った所で言葉が途切れた。
何だろう。
この狸の化かし合いは……。
思いっきり溜め息を付きたいのを我慢していると、エマ嬢は深刻そうな顔になっていた。
「エマ様どうしまして?」
と私は水を向ける。
「実は私。キャサリン様にお願いがありますの」
ちょっと声のトーンが落ちてしまっている。
まさか、今さら婚約破棄なんて言わないわよねこの子。
そう懸念しつつエマ嬢に話の続きを促すと
「あの、実はキャサリン様は殿下の婚約者候補筆頭令嬢だったとお伺い致しました」
嫌な予感がビリビリする。
昔からこういう変な勘は外れた事がない。
「ええ、そうですわね 」
口にカップを近付けつつ私は肯定する。
『お願いだから婚約破棄なんて言うなよ』と心の中で念派を送るが
「それで、もし宜しければ殿下の婚約者を代わって頂けないかと思いまして」
やっぱりか……私は思いっきり顔が固まるのを感じた。
「は?冗談でございましょう」
一瞬にして眉間に皺が寄る。
ここで引き下がっては元も子もない。
何せその後に待っているのは私にとってのバットエンドオンリーと言う無情な結末なのだ。
「いえ。真面目に言っております」
エマ嬢は更に身を乗り出して言葉を強くして来た。
「冗談ではなくってよ。皆の前でも婚約発表したのですから、それ相応の理由がなければ破棄出来ません。それに、殿下と婚約破棄したなどエマ様の醜聞にもなりましてよ。下手したら生涯結婚すら出来ない事に。お分かりかしら?」
私は一気にそこまで言うと深く息をついた。
「重々承知しております、しかし、私には過ぎたご縁なので……」
語尾が低くなるエマ嬢に私は更に言葉を重ねた。
何せこちらも死活問題。
引くわけにはいかない。
「嫌ですわ。私、今ライアン様と縁談がまとまる所ですのよ」
愛バラ一番の安全パイとの縁組みだ。
この私が逃すとでも?と勢いを付けて言ってみる。
「えっ?ライアン様ですか?」
私の言葉にエマ嬢が目を見開く。
「正直私殿下の事は好みではございませんの。周りが勝手にそう言っていただけでしてよ」
あんな腹黒鬼畜でどSな殿下……それだけでもあり得ないのに、あっちの方はジョセフの上を行く。
流石は悪魔の名を冠する者。
絶倫な所も悪魔級。
体力馬鹿も大概にして欲しい。
「そうなのですか……」
段々とエマ嬢の顔が蒼白になって来た。
「今回の婚約は政略的な動きはなかったと思いますが、エマ様は殿下の事が好きだからご婚約したのではなくて?」
さも当たり前の様に問うてみる。
「ち……違います」
悲痛な面持ちでエマ嬢は否定して来た。
「では何故了承しましたの?こう言う言い方は悪いとは思いますがマリク公爵様は王家から王太子の婚約者の話が出た時に真っ先に離脱の意思を示されたはずですが」
セドリックをけしかけておいて何ですけどね。
「……」
エマ嬢は途方に暮れた顔になった。
多分今のエマ嬢はセカンドシーズンの容姿だろう。
「そんなお顔をされないで……宜しければお互いに仮面を取りませんこと?」
私はそう言うと自身の仮面に手を掛けた。
「あっ……」
エマ嬢はそう言うと少し躊躇った後、自身の仮面に手を添えて静かに外した。
「やはり……」
私は全ての事に納得いったとばかりに相槌を打つ。
そしてエマ嬢にとっての決定打となるだろう言葉を紡ぐ。
「不躾な質問を致しますわ。エマ様。『愛バラ』はご存知?」
私の言葉にエマ嬢がフリーズする。
「何故その言葉を……」
エマ嬢が震える声でそう言うと、私は苦笑する。
「色々納得行きましたわ。どうやら私達二人は転生者の様ですわね」
と微笑みかける。
『味方は同じ転生者の私だけよ』オーラを出しながら。
「転生者……私達が……」
そして、呆然とするエマ嬢に更に現状を告げるとどうやらセカンドシーズンを知らないらしい事が分かった。
「ではセカンドシーズンなんて知らないのですわね」
再度確認の意味で問えば
「知りませんわ」
と素直に答える。
その答えにちょっと安堵する。
まだ行けると。
「あの因みにそのセカンドシーズンとはどの様な物ですの?」
と恐る恐るエマ嬢が聞いて来た。
「ああ。そうですわね。では少々内容をお話しますわ」
そう言うと再びケーキを食べる。
何か気が抜けてしまったな~。
そう思うと前世のがさつな性格が現れ素に戻ってしまった。
「まぁ同じ転生者同士ですし。様付けもやめましょう。それに私達だけの時は素で話しましょう。正直肩が凝って……」
私はそう言うと軽く肩を回す。
前世で肩が凝るとよくやっていた事だ。
「そうですね。では、キャサリン。内容を聞かせて下さい」
エマの真摯な面持ちに何処まで話すべきか少し模索した。
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