35 / 76
エンゲージリングと言う名の7
しおりを挟む
昨日と同様にジェイカル商会へと向かう馬車の中。
気のせいか、セドリックが目茶苦茶機嫌が良い。
私の顔を見ては時折思い出し笑いをして意味深にうっとりとする。
セドリックがニヤケるとか……イケメンで似合っているけど正直怖い。
何か企んでいるのではないか?と……。
だってセドリックは腹黒ど鬼畜どS王子なのだから。
私は引きつる笑顔を張り付けたままセドリックに愛想笑いをする。
怖い想像にヒヤヒヤしたり、思わず見惚れたりと……ある意味拷問だった。
ジェイカル商会は貴族街から少し行った所にあるので、然程の時間馬車に乗っていた訳ではないのだが、正直神経を消耗した様に思う。
ジェイカル商会の店先に着くとセドリックが先に降りて私をエスコートしてくれる。
何時もの様に優雅な所作に思わず見惚れてしまう。
そんな私達を既に入口の所に立っていたロベルトが微笑ましそうに見ていた。
二人で店先に並ぶとロベルトが深々と礼をとる。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
流れる様な動作で扉を開けて中へと促すロベルト。
奥の部屋へと誘導されるのを見ながら、今日の来店は予約していたのか?と疑問に思ってしまう。
「実は昨日お話していました大口の顧客が昨夜いらっしゃいまして、もう6個程追加して行かれたんですよ。お願い出来ますか?」
ロベルトの申し出に今日はMPが800あるから大丈夫かと安易に計算して「大丈夫ですよ」と笑顔で答えた。
「あの……そのお代の件ですが、昨日購入した宝石に充てては頂けませんか?」
私の申し出にロベルトは「構いませんよ。では、そのように」と快く了承する。
以前貰ったドレスや宝石もセドリックが内職してくれていたと思っただけで申し訳なく思っていた私は、ほっとして笑みをこぼした。
するとセドリックが私の髪を優しく撫でてくれる。
思いっきり子供扱いされた様に思う。
何となくムゥっとしていると
「そこは私に甘えて欲しかったな」
と、私の髪の毛にキスを落とした。
フンギャ~!!
何て事をしてくれるのでしょう?
危なく萌え死にする所だった。
これだから女慣れしているイケメンは恐ろしいのだ。
『平常心、平常心』
心の中で黙々所呪文を唱えた。
そんな私はセドリックに半場ドナドナされるように強制的に足を動かしていた。
そして、昨日と同じ部屋に着くと再び昨日と同じ様に石を持って来たロベルトは私に次々と魔石を手渡して来る。
まぁ、昨日やったのだからコツは解っている。
私は昨日同様に消耗MPを選択し石に術式を定着させて行く。
一瞬ロベルトが目を瞬かせていたが、私はお構い無しに作業を進めた。
6個終わった所でロベルトが箱を運び込み。
「それでは約束の品にございます」
と仰々しく差し出して来た。
セドリックが箱を開けて指輪を取り出す。
シルバーリングにはあの双子の片割れのアレキサンドライトが中央を陣取り、周りには私とセドリックの瞳の色に近い宝石が散りばめられていた。
セドリックは私の左手をそっと取ると
「一生君だけを愛すると誓う」
そう言い私の左手の薬指にそっと指輪をはめた。
「ありがとう」
嬉しいけど、なんか違う。
私はお礼を述べセドリックを見ると、セドリックの左手の薬指に同じ様な指輪がはまっていた。
「あのセドリック様」
「セディ」
間髪置かすセドリックが低く訂正する。
「……セディ。もしかしてペアリングですか?」
何か脅迫された様な気がする位の威圧感でセドリックの愛称を呼ぶと、セドリックは破顔して私の左手にはまった指輪にキスして来た。
「ふにゃぁ……」
イケメン半端ない……。
一瞬脳が溶けるかと思ったよ。
ドキドキしているとセドリックが指を絡めて来る。
「これで私達の仲を割く者はとことん排除出来るね」
指輪一つで……否、指輪二つで何が出来るのか?
それに、どうせならもっと雰囲気のある所でプロポーズされたかった。
元々この世界にはエンゲージリングと言う概念が無いから、こういう時にムードが必要なのは理解されないと思うけど。
正直やり直しを要求したい気分だった。
だって、プロポーズだよ。
人生の一大イベントだよね。
けど、 そんな事を考えていたのも束の間。
何故か瞼が重くなって来て私はセドリックに項垂れかかってしまった。
何で?
今日はまだMPが200位残っていると思うのに。
昨日の魔力切れと同じ様な症状に私はフラついてしまう。
完全にセドリックの胸の中に落ちた時には夢現の世界だった。
微睡む意識の中でセドリックとロベルトの声が聞こえてくる。
「殿下は昔から(その性格が)変わりがございませんね」
「当たり前だろう。何が変わると言うのだ?」
「いえ。特には。それにしても今回はおめでとうございます。初恋は実らぬ物と良く言いますが、流石は悪魔の君と申しますか」
「初恋か……まぁ、今回は褒め言葉と受け取っておこうか」
「事実、褒めているのですがね」
「お前が言うとそうは聞こえない」
「殿下らしいですよ」
「しかし、これでも諦めてはいたんだ」
「嘘はいけませんね。結構拘っておりましたよ」
「そうか?まぁ否定はしない」
クスリとセドリックが笑むのを感じたと同時に瞼に熱い熱を感じた。
「彼女は殿下の幸運の女神になるかもしれない方なのですから大事にしてあげて下さい」
「当たり前だろう。こんなに愛しいのに大事にしない訳がない」
「それだけではないのですがね。まぁ今の所は良いでしょう。私もこの世界との盟約がありますので」
「盟約ね……。まぁ、今後も長い付き合いでいたいものだ」
「それは貴方の御心次第ですね」
ロベルトのその台詞を最後に私は深い眠りにと落ちて行った。
気のせいか、セドリックが目茶苦茶機嫌が良い。
私の顔を見ては時折思い出し笑いをして意味深にうっとりとする。
セドリックがニヤケるとか……イケメンで似合っているけど正直怖い。
何か企んでいるのではないか?と……。
だってセドリックは腹黒ど鬼畜どS王子なのだから。
私は引きつる笑顔を張り付けたままセドリックに愛想笑いをする。
怖い想像にヒヤヒヤしたり、思わず見惚れたりと……ある意味拷問だった。
ジェイカル商会は貴族街から少し行った所にあるので、然程の時間馬車に乗っていた訳ではないのだが、正直神経を消耗した様に思う。
ジェイカル商会の店先に着くとセドリックが先に降りて私をエスコートしてくれる。
何時もの様に優雅な所作に思わず見惚れてしまう。
そんな私達を既に入口の所に立っていたロベルトが微笑ましそうに見ていた。
二人で店先に並ぶとロベルトが深々と礼をとる。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
流れる様な動作で扉を開けて中へと促すロベルト。
奥の部屋へと誘導されるのを見ながら、今日の来店は予約していたのか?と疑問に思ってしまう。
「実は昨日お話していました大口の顧客が昨夜いらっしゃいまして、もう6個程追加して行かれたんですよ。お願い出来ますか?」
ロベルトの申し出に今日はMPが800あるから大丈夫かと安易に計算して「大丈夫ですよ」と笑顔で答えた。
「あの……そのお代の件ですが、昨日購入した宝石に充てては頂けませんか?」
私の申し出にロベルトは「構いませんよ。では、そのように」と快く了承する。
以前貰ったドレスや宝石もセドリックが内職してくれていたと思っただけで申し訳なく思っていた私は、ほっとして笑みをこぼした。
するとセドリックが私の髪を優しく撫でてくれる。
思いっきり子供扱いされた様に思う。
何となくムゥっとしていると
「そこは私に甘えて欲しかったな」
と、私の髪の毛にキスを落とした。
フンギャ~!!
何て事をしてくれるのでしょう?
危なく萌え死にする所だった。
これだから女慣れしているイケメンは恐ろしいのだ。
『平常心、平常心』
心の中で黙々所呪文を唱えた。
そんな私はセドリックに半場ドナドナされるように強制的に足を動かしていた。
そして、昨日と同じ部屋に着くと再び昨日と同じ様に石を持って来たロベルトは私に次々と魔石を手渡して来る。
まぁ、昨日やったのだからコツは解っている。
私は昨日同様に消耗MPを選択し石に術式を定着させて行く。
一瞬ロベルトが目を瞬かせていたが、私はお構い無しに作業を進めた。
6個終わった所でロベルトが箱を運び込み。
「それでは約束の品にございます」
と仰々しく差し出して来た。
セドリックが箱を開けて指輪を取り出す。
シルバーリングにはあの双子の片割れのアレキサンドライトが中央を陣取り、周りには私とセドリックの瞳の色に近い宝石が散りばめられていた。
セドリックは私の左手をそっと取ると
「一生君だけを愛すると誓う」
そう言い私の左手の薬指にそっと指輪をはめた。
「ありがとう」
嬉しいけど、なんか違う。
私はお礼を述べセドリックを見ると、セドリックの左手の薬指に同じ様な指輪がはまっていた。
「あのセドリック様」
「セディ」
間髪置かすセドリックが低く訂正する。
「……セディ。もしかしてペアリングですか?」
何か脅迫された様な気がする位の威圧感でセドリックの愛称を呼ぶと、セドリックは破顔して私の左手にはまった指輪にキスして来た。
「ふにゃぁ……」
イケメン半端ない……。
一瞬脳が溶けるかと思ったよ。
ドキドキしているとセドリックが指を絡めて来る。
「これで私達の仲を割く者はとことん排除出来るね」
指輪一つで……否、指輪二つで何が出来るのか?
それに、どうせならもっと雰囲気のある所でプロポーズされたかった。
元々この世界にはエンゲージリングと言う概念が無いから、こういう時にムードが必要なのは理解されないと思うけど。
正直やり直しを要求したい気分だった。
だって、プロポーズだよ。
人生の一大イベントだよね。
けど、 そんな事を考えていたのも束の間。
何故か瞼が重くなって来て私はセドリックに項垂れかかってしまった。
何で?
今日はまだMPが200位残っていると思うのに。
昨日の魔力切れと同じ様な症状に私はフラついてしまう。
完全にセドリックの胸の中に落ちた時には夢現の世界だった。
微睡む意識の中でセドリックとロベルトの声が聞こえてくる。
「殿下は昔から(その性格が)変わりがございませんね」
「当たり前だろう。何が変わると言うのだ?」
「いえ。特には。それにしても今回はおめでとうございます。初恋は実らぬ物と良く言いますが、流石は悪魔の君と申しますか」
「初恋か……まぁ、今回は褒め言葉と受け取っておこうか」
「事実、褒めているのですがね」
「お前が言うとそうは聞こえない」
「殿下らしいですよ」
「しかし、これでも諦めてはいたんだ」
「嘘はいけませんね。結構拘っておりましたよ」
「そうか?まぁ否定はしない」
クスリとセドリックが笑むのを感じたと同時に瞼に熱い熱を感じた。
「彼女は殿下の幸運の女神になるかもしれない方なのですから大事にしてあげて下さい」
「当たり前だろう。こんなに愛しいのに大事にしない訳がない」
「それだけではないのですがね。まぁ今の所は良いでしょう。私もこの世界との盟約がありますので」
「盟約ね……。まぁ、今後も長い付き合いでいたいものだ」
「それは貴方の御心次第ですね」
ロベルトのその台詞を最後に私は深い眠りにと落ちて行った。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【本編完結】ヒロインですが落としたいのは悪役令嬢(アナタ)です!
美兎
恋愛
どちらかと言えば陰キャな大学生、倉井美和はトラックに轢かれそうになった黒猫を助けた事から世界は一変した。
「我の守護する国に転生せぬか?」
黒猫は喋るし、闇の精霊王の加護とか言われてもよく分からないけど、転生したこの世界は私がよく知るゲームの世界では!?
攻略対象が沢山いるその中で私が恋に落ちた相手は…?
無事3/28に本編完結致しました!
今後は小話を書いていく予定なので、それが終わり次第完全完結とさせて頂きます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる