愛バラ

麻生空

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エンゲージリングと言う名の5

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翌朝目が覚めると身体に魔力が戻っていた。

昨日の事がまるで夢の様にさえ思う程に身体は魔力で満ちていた。

確認の為にコマンドを開いて状態確認をしてみると

……。

……。


「はっ?」

何ですと!

何故かMP値が上がっている。

999でカンストだっはずが1100になっていた。

何故?

ゲームでは999が最高値のカンストだったよね。

そう思っているとアンが部屋へと入って来た。

何時もの様にアンが洗顔する為の洗面器を持って入って来る。
私は素早く洗顔を終わらせるとアンからタオルを貰った。

そして、アンの後ろからナタリーが顔を出し。
「今日はお顔の色が良い様で良かったですわ」
ナタリーはそう言うと微笑みながら直ぐ様退出しようとしたので、思わず呼び止めてしまった。
「ナタリー。ちょっと聞きたい事があるの」
私はナタリーに声をかけ近くまで呼び寄せる。

その間にアンは使い終わった洗面器を片付けに退出する。

二人だけになった私はナタリーに昨日の事を聞いてみた。

「はい。眠られたお嬢様を殿下が部屋までお姫様抱っこでお連れしたのですわ。それはもう凛々しいお姿で、流石は次期国王陛下と思わず見惚れてしまいました。やはりお嬢様を託せるだけのお方とナタリーは安心しました。お嬢様をお部屋へお連れすると、その後直ぐにお帰りになりましたわ。折角ですからお茶をと思いましたのに『公務があるので急いで戻らなくてはいけない』と。なんて紳士なのでしょうと、私直ぐに旦那様方にご報告致しましたの。本当に素敵な殿方だと旦那様方もお喜びになられて、ナタリーは嬉しゅうございます」
ナタリーがそう言うと私は盛大に安堵した。
そして、公務が立て込んでいるにも関わらず私を送ってくれた事に暖かい物を感じる。
(この辺り知らない内にセドリックに外堀埋められています)

すると、やはりあれは夢だったんだ。
と、思い至る。

だって私がセドリックの……。

現実にはあり得ないでしょう。

夢……夢……。

そう心の中で何度か繰り返し納得する。
けど、何て艶かしい夢だったのか……。

ナタリーが戻った後、私はぼんやりと考える。

何故カンストしていたはずのMPの最大値が1000を越えていたのか?

「やっぱり昨日なにかしらあったんだよね」

それに何故か魔力も800位に回復しているし。


これ以上は考えない方が良い。
何と無く不文律の様に思えてくる。

私は背筋がゾクリとした為に考えるのを早々に止めた。


カウチでグルグルしていたら兄のイヴァンが部屋へとやって来た。

「エマ。イヴァンだ。入って良いかい?」

兄の何時も通りの声に
「お兄様、いいですわよ」
そう言い軽く身形みなりを整える。


入って来た兄は相変わらず王子然としていた。
品の良い白シャツはグレーのスーツベストに同色のスラックス。
お洒落にも紺のタイに繊細な模様の施されたシルバーのタイリングがはめてあった。

何か昨日は色々有りすぎて兄と久し振りに会った様な気さえしてしまう。
やっぱり想い出の君は眼福がんぷくものだわ。

「おはようございます。お兄様」
カウチから立ち上がり淑女の礼をとると兄をテーブルへと促す。
その後ろからアンがカトラリーを押しながら入室して来る。
「父達の前だと話すのがはばかられるので、今朝はここで一緒に朝食をとりながら話をしたいと思うんだが、良いだろうか?」
何処と無く余裕の無い兄を怪訝に思うも
「お話は食後では遅いのでしょうか?」
と尋ねていた。
「どうやら今日は早めにセドリック殿下がいらっしゃる様なのでね」
苦笑いしながらイヴァンが言う。
「何か知らせが来たのですか?」
昨日はそんな事言っていなかった。
「いや。ちょっとした情報が入っただけだよ」
何処から来るのか?その情報。
私は思わず兄を見た。
「まぁ。それは追々と言う事で」
イヴァンは苦笑交じりにそう言うとナタリーを筆頭に侍女達が朝食を運び入れて来る。

全ての料理を運び終わると二人を残して皆退出した。

「では時間が惜しいから食べながら話そうか」
イヴァンに促され食事の前のお祈りをすると直ぐ様食事に手をつける。
「昨日ウエンダ公爵家へ行ったそうだが、何もなかったかい?」
一瞬オーウェンの痴態ちたいが頭をよぎる。
「やっぱり。何かあったんだね」
眉をひそめる私にイヴァンは深い溜め息を吐く。
「今朝アンからエマの魔力の気配が違うと聞いたので確認に来た。昨日帰って来た時は感じなかったけど、今日のエマからはセドリック殿下の気配が濃厚に感じられる。まさかと思うけど……一線は越えていないよね」
イヴァンのあまりにもストレートな質問に思わずあんぐりと口を開けてしまった。

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