愛バラ

麻生空

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エンゲージリングと言う名の4

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『悪魔』の称号を冠した魔術師。


人であるのに人の壁を越えた者。

大賢者を越えた先の者。

人成らざる者との交わりの末の者。

絶対王者。

色々と揶揄される存在ではあるが、現在は世界に片手ほどしか存在しないそれは間違いなく絶大な魔力を有していた。

一騎当千。

そう言わしめるだけの力があり、国々はその保持者を国から出るのを極端に警戒した。
故にその保持者は例外に漏れず王家との婚姻がなされて来ていたのだ。

あくまでもその者を逃がさない為の『籠の鳥』。
王家とはその様な存在でもあった。
故に王家には魔力の強い者が生まれやすい。
その中には『悪魔』とは言わないまでも、それに近い力を有している者もいた。
つまり賢者や大賢者クラスだ。
しかし、それでも『悪魔』の名を冠した者には遠く及ばない。
其ほど『悪魔』の名を冠した者には力があるのだ。

但し、いくら『悪魔』の名を冠した者とてその力量は大賢者に毛が生えた様な者から神掛かった者までと、その範囲は大きい。
単に『悪魔』と言われてもピンきりなのだ。
ではセドリックの場合はどうだろうか?

あの腹黒が大賢者に毛が生えた程度で納得するか?

否。

あり得ないでしょう。

私はそんな事を考えながらセドリックの隣でボーっとしていた。

既に帰路に着いていた馬車でボーっとする私の頭をセドリックが優しく撫でてくれる。
いや……滅茶苦茶撫で回している。
そんな私達を向かいの席から見ていたナタリーが
「殿下は本当にエマお嬢様の事がお好きなのですね。単なる政略結婚かとも思っておりましたが、お二人の仲睦まじさを見て考えを改めました。今後は私もお二人を全力で応援いたしますわ」
そんな有り難くもない事を言うと、ナタリーはセドリックに恭しく礼をする。

仲睦まじいって……ナタリー勘違いしているから。
私は頭でそう思うも、何故か先程から身体が言うとをきかない。
項垂れかかってしまったていでセドリックに促されるまま身体を動かす。

何だろう。
さっきから凄く喉が渇く。
更に力を無くす私をセドリックは手で撫で付けて来る。
頭を撫でていた手は気付いたら背中から腰へと撫で付けていた。
何でかな?と思っていると自身の身体が完全に横を向いていたのだ。
「まぁお嬢様ったら。寝てしまわれたのですね」
ナタリーはそう言うと近くにあったブランケットを私に掛けて来る。
「もうすぐ邸だ。起こすのも可哀想だから私がこのまま部屋まで連れて行こう」
うっとりする様なセドリックの声音が聞こえて来た。
本来なら「結構です」と突っ張ねる所が全くと言っていい程声が出ない。
そんな私に代わってナタリーが
「まぁ。本当に仲睦まじいくっていらっしゃるのですね。我が家のお嬢様を宜しくお願い致します殿下」
と、勝手に了承していた。



☆☆☆☆☆☆☆


微睡む意識の中に確かにあった餓え。

魔力を渇望する身体が自身の意識を上回っていた。
良く○○中毒とか禁断症状とか言うが、多分あれに近いと思う。

欲しい。

欲しい。

兎に角、欲しい。

魔力が……

渇望       餓え      切望

そんな私の唇に熱い物が差し込まれる。

温かく硬いそれから確かな魔力が伝う。

流し込まれる熱に魔力を感じて思わずついばんでいた。

「くっ……エマ……」

ペロペロクチュクチュと音を立てて舐めたり吸い付いたりを繰り返す。

「あっ……待て……くっ……」

硬い物は一瞬口の中でその存在を拡張させるや、一瞬で魔力の熱を吐き出す。
私はそれをドクドクと飲み込み熱い息を吐き出す。

「ハァハァ……これは……想像以上だな」

意識の向こうから熱の籠ったセドリックの声が聞こえてきたが、そんな事を考えたのは一瞬の事だった。

硬さを取り戻したそれは再び魔力に満ちる。

あぁ欲しい。

もっと魔力を私に頂戴……。

禁断症状のような朦朧とした意識の中、生き物のようなそれを再び口に含む。

「あっ……エマ……そんなに激しく……」

再び私は無我夢中で魔力の籠ったそれを啄んでいた。
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