愛バラ

麻生空

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取り敢えずセドリック一択で4

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その後アンは
「あまりお役にたてない私ですが……」
と涙腺崩壊気味になり、あれからなかなか落ち着かないアンをイヴァンに頼んで私は一人自室にて思案していた。

アンの腰に手を回したイヴァンの後ろ姿がやけに艶かしい。
まぁ、お兄様からしたら『棚からぼた餅』『瓢箪から駒』私からしたら『怪我の功名』と言う、まさに嬉しい誤算が生じたのですが、兎に角兄には上手くやって欲しいものです。
正直言えばゲームでの印象にあるイヴァンは奥手だと思う。
アンもアンで自分の気持ちを打ち明けていないようだし、このまま傷心のアンを慰めながら……のムードで既成事実の一つや二つ作らないとあの二人はなかなか前進しない様にさえ思う。

イヴァンにセドリックの十分の一程度でも恋愛に対する行動力があればと思うんだよね。
そうしたら今頃はラブラブな二人のスチル見まくりだっただろうに……。

と、少々脱線しましたが、話はちょっと戻りアンが『混ざり者』とアリアは言っていた件です。
アンは魔力持ちとだけの認識だった。

でも、と思う。

 アリアを見て契約さえしていないアンがその言葉を聞けると言う事は魔力云々だけではないのでは?と。

何故そう思うのかと言うと、本来の設定では聖霊と言葉を交わすと言う観点がこの世界にはないと言う事。
つまり魔力があっても『見える』とは限らない。

私達が魔法と呼んでいる事象は『魔力と等価交換で聖霊が引き起こしているもの』とゲームの中で解説されていた事。
つまり、見えなくても対価さえ支払っていれば魔法が使えると言う事だ。

そもそも、この『愛バラ』の世界はイレギュラーな事が多い。

主に私が原因で……。


それに何で私が前世で貯めていたアイテムがあんなに減っているのだろうか?

良く考えてみよう。


確かエマお嬢様との友情エンドを迎える為に好感度アップのアイテムを使っていた。
アイテム1個消費すると好感度5上がる仕組みで上限は999、それらをエマとイヴァンに使っていたはず。
それにしても使用したのは400個位だ、もっと残っているはず。

あっ、そこの貴方。
好感度をゲームの最初からカンストさせているのはズルだと思っているでしょう?

分かる。
分かるけど

でも、そこは折角あるアイテム。
使わない手はないと言うもの。
仕事をしつつのレベル上げに使う時間が惜しかった私としては本当に致し方なかったとだけ弁明させて欲しい。
そして、もしあの時に戻れるならば『そんな事せずに地道にやろう』と言ってやりたい。
そうしたらこんな事にはなっていないのだから……トホホ……

それにしても解せないのは好感度アップアイテムが今現在500個位しか残っていないと言う点だ。
単純に100個近い数が減っている。

何故に?

アイテムって自分で使わないと減らないんだよね。

どうも釈然としない。
もう一人で考えていてもらちが明かない。
ここはキャサリンに相談してみよう。
「我ながら良い案だわ」
そう思い至った私はキャサリンへ明日の朝伺う旨の手紙をしたため早馬を走らせた。
それに対してキャサリンからは昼から用事があるので朝早めに来て欲しい事と、必ず仮面着用と書かれて来た。

自宅では仮面を着けていない為に、言われるまでその存在を忘れていた。

兎に角、これ以上他の攻略対象との接点が出来て変なフラグが立たない様に用心に越したことはない。

問題があるとすれば、自前の仮面は先日セドリックに夜会の時に貰ったこの一枚だけだと言う点だろうか?
正直普段用にはだいぶ派手で悪目立ちしそうだと言うのが本音で、もうこの際仮面なんて要らないのでは?とも考えてしまう。
でも、よくよく考えてみるとあの唯一の転生仲間のキャサリンが住んでいる家にはSMプレイ好きの変態(長男)とマダムキラーでメンヘラのヤバい男(次男)がいるのだ。
「地味な仮面が欲しいな」
色鮮やかな仮面を見ながらポツリと言葉がこぼれてしまった。
そして、その夜は仮面を枕元に置いたまま眠りに落ちていったのだった。

☆☆☆☆☆☆☆


夢の中にセドリックが現れそっと抱き締めてくれた。

何だろうこの安心感は……。

「エマ折角の所有印を消すなんて酷いな」
いつもの色気を含んだ声にくすぐったさを感じて思わず鼻を胸に擦りつけた。
何故かとても安心出来る匂いに顔がニヤケてしまう。
「可愛い」
そう呟くセドリックの唇が首筋に触れる。
「今度は気付かれない様に」
うなじから這うように舌先が下へと動くとチリッと熱い痛みが走る。
何ともリアルな夢だなぁと思いながら私は再び眠りにと落ちていった。

「早く18におなり。私の愛しい人」
シーンと静まる寝室に、誰ともなしに囁かれる声には確かな情欲が滲んでいた。
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