愛バラ

麻生空

文字の大きさ
上 下
14 / 76

王太子ルート回避出来ません5

しおりを挟む
とうとう夜会が明日と差し迫った今日。
セドリックからドレスとアクセサリーが我が家に届いた。

こんなにギリギリになった原因は、5日前に再度採寸に来た仕立て屋さんがサイズの大幅な変更を余儀無くされたからだ。

多分主に胸。

何せ毎日いらっしゃる。
誰がって、あのお人ですよ。
全ての元凶の……詰まる所の諸悪の根源。
我ら兄妹の大一級警戒対象でもあるあの御仁。
本当に暇なのか?と本気で思う程に来たのだ。

思わず溜め息が出てしまう。
添えられたカードには

『私の愛しのエマへ 

愛を込めて

貴女の愛の下僕セドリック・アイマロンより』

……ベシッ

思わずメッセージカードを投げ捨ててしまう。
何……この『愛の下僕』って。
寒い。
寒いわ。

プルプル戦慄いていると兄イヴァンが部屋へと入って来た。
「エマ今日の昼食だけど、庭で使用人と皆でちょっとしたパーティーをするから少しおめかししておで」
イヴァンはそう言うとポンポンと頭を撫でる。
涼しげな目元に睫毛が影を落とし……

キャーッ!!
何この美味しいスチル。

思わず身悶えてしまう。
そんな私を兄のイヴァンは残念な物を見るような目で見る。


侍女に手伝ってもらい、いつもより気合いを入れたドレスにしてもらう。
って、何故か侍女達が気合いを入れ過ぎた為にどう見ても夜会にでも行く様な服装になってしまった。

「今日はさすがにセドリックは来ないと思うから思いっきり楽しもうか」
未だ兄と私の間ではセドリックは大一級警戒対象なのだ。
何せあの美女線のセドリックだ、何時何時いつなんどき再びアンに秋波しゅうはを送るか分からない為に未だ婚約もしていない兄は気が気ではない。
何となくだが、アンはきっと想い出の君である(確定)イヴァンルートに入っていると思う。
が、あの美女線の王太子が路線変えしてアンとルートに入る恐れだってまだあるのだ。
俗に言うゲーム補正とか強制力とか……。
兎に角色々イレギュラーな事があるのだからまだ油断は出来ない。
何せ、私に至っては会う度にセクハラして来る自称婚約者(既に両家とも承認しているから正式に婚約者なのだが)に辟易へきえきとしているのだから。
「さぁエマ。おで」
イヴァンはそう言うとさっと手を差し出す。
私はドキドキしつつその手に自身の手を乗せた。
手を引かれながら自室から兄にエスコートしてもらう。

実の兄だが、あの想い出の君と思うだけで私のテンションは急上昇ものだ。
バクバクとなる心臓を必死に押さえて兄と階下へと繋がる階段を降りる。
『やゃ……こんな身悶えもののスチルが展開しているのに、この目に納められないなんて何て勿体ないのか……』
そして気付く。
私はヒロインになりたいのではなく単にスチルを堪能したいのだと。

あくまでも傍観者として!!

気付いてしまうと、思うのは何故今手を引かれているのがアンではないのか?という事だ。
そう私はリア充とは程遠かったのだ。
『見れない!見れない!』と悶々としながらイヴァンに連れられ着いたのはあの虹の薔薇園。

既に皆集まっており薔薇園の門をくぐったとたん。

「エマお嬢様。お誕生日おめでとうございます」

と一斉にお祝いの言葉を言われ目を瞬かせてしまう。

「誕生日?」
思わず問うていた。
「1日早いけどね」
とイヴァンが複雑な笑みを称える。

前世の記憶が戻った為に忘れていたが、確かに明日の夜会は私の誕生日だった。
そう思っていると両親が目の前までやって来る。
正直滅茶苦茶眩しすぎて直視出来ない程の美男美女だ。
照れた振りをして下を向いて気持ちを落ち着かせる。
「「エマ19歳おめでとう」」
と両親からお祝いの言葉を贈られる。
『ん?19?』
顔を上げ両親を見た私は
「17になったのではないのですか?」
と問いかけていた。
その言葉に両親はキョトンとし、その脇で兄が盛大に頭を抱えていた。

なんなんでしょうか?
その反応は。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R18】禁断の家庭教師

幻田恋人
恋愛
私ことセイジは某有名私立大学在学の2年生だ。 私は裕福な家庭の一人娘で、女子高2年生であるサヤカの家庭教師を引き受けることになった。 サヤカの母親のレイコは美しい女性だった。 私は人妻レイコにいつしか恋心を抱くようになっていた。 ある日、私の行動によって私のレイコへの慕情が彼女の知るところとなる。 やがて二人の間は、娘サヤカの知らないところで禁断の関係へと発展してしまう。 童貞である私は憧れの人妻レイコによって…

辺境騎士の夫婦の危機

世羅
恋愛
絶倫すぎる夫と愛らしい妻の話。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

処理中です...