愛バラ

麻生空

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王太子ルート回避いたします2

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つつがなく?王太子殿下にお帰り願った我が家では、兄のイヴァンの高笑いが木霊した。

「おの王太子殿下をあしらうとは流石我が妹だよ」
「ククク……」と何時までも笑う兄に冷めた目を向けてしまう。
気のせいかセドリックに似ているようにさえ思ってしまう。
「笑い事ではございませんわ」
恨みがましく兄を見てしまったのは不可抗力だと思う。
「あのど鬼畜王子は面食いだったのではなくって?」
そうだよ。
なんでモブっ子の私にモーションかけて来るかな?
「そうなんだけどね。きっとそれを上回る魅力がエマにあったのかも知れないね」
優しくそう言うとイヴァンはにこやかに笑む。
心なしかアリアと会ってから目の痒みや鼻のムズムズが無くなった。
もしかしてアリアが言っていた悪戯とはこの花粉症の症状だったのでは?と思う。
そして、明日には元通りと言う事は兄のイヴァンがあの麗しの『想い出の君』になってしまうと言う事では?

ヤバい。
見たい!
なんて美味しいの妹ポジション。
ウザくない程度に付きまとって全てのスチルを見なくては。
それもリ・ア・ルで。
ウフフ……
ヤバい……マジ涎が出そう。

ニタニタ笑う私を尻目にイヴァンが苦笑した。





そして、翌朝。


「よっしゃ~~!!」

自身の姿を鏡で確認した私は盛大な掛け声を上げた。
「流石『想い出の君』の妹。我ながらここまでの美女とはクフフ」
ニタニタ笑う私は侍女が来るのが待ちきれず、簡素な一人でも着れる前開きのワンピースを一人で着ると颯爽と兄イヴァンの部屋へと走った。


「お兄様失礼致しますわ」
兄の返事も待たずに扉をバァンと開ける。
前回の兄の諫言かんげんが何も生きていない。
そして、丁度着替えが終わったイヴァンが姿見の前で棒立ちしていた。
その麗しの姿。
どの攻略対象も霞んでしまう程のキラキラ王子様。
もうこれは人外だよね。
そう妖精。
妖精の王子様と言っても間違いないよ。
『めっちゃ眼福がんぷくものですわ。もう鼻血が出そう』
あまりにもの理想の王子様の出で立ちにトロリと目が蕩けてしまいそうになる。
「何だエマ。昨日の今日で礼儀がなっていないよ」
そう言って振り返るイヴァンは再度固まる。
「えっ……エマ?」
驚愕するイヴァンに『ええその気持ち判りますわ』と内心思ってしまう。
私だって自身の目を疑いたくなってしまったのだから。
でも、今はそんな時じゃない。
何せ今我家族全員に異変が起きているはずなのだから。
「お兄様。この件で少々家族会議をしたいのですが」
私が落ち着きはらって兄に言う。
「そうだね。早く父と母の所へ行かないと……」
言うが早いかイヴァンと共に直ぐ様両親の寝室へと向かった。

きっと二人とも固まっているんじゃないか?と駆け付けたのに、絶世の美男美女は何故か楽しそうにお茶をしていた。
「あらイヴァンにエマ。いらっしゃい。一緒にお茶にしましょうか」
母は楽しそうにお茶を促す。


父と母の話を聞くと元々は父の兄が爵位を継承したのだが、事故で亡くなり順当で父が爵位を継いだらしい。
その時、我が家に代々伝わる継承の儀式の言葉が判らず形だけの儀式をしたらしいのだ。
何せその時の父はやり手の貿易商をしていたらしく、兄の爵位継承の儀式の時にはこの国に居なかったらしい。
そんな訳で祖父達もいない今、自分達で正式な儀式が出来なかった……とか。
その為に、継承式の日から何故か目が痒く鼻がムズムズして顔が浮腫んできたと言うのだ。
そうまさしく花粉症の症状だ。
それは直接の血縁者ではない母も同様で、二人はきっと正しい儀式が出来なかった為のご先祖様からの呪いだと思って諦めたらしい。
それに対して私は、夢で聖霊女王様が枕に立ち「この言葉を言うようにと言われた」と嘘をつき、あの庭でその言葉を言ったら聖霊の女王が現れ祝福してくれた事を伝える。
勿論その失われた言葉も一緒に伝えると父が「きっと私達をあわれんで聖霊の女王様が夢枕に立たれたのだろう」との結論に達して納得してくれた。
でも、あれってその女王陛下の悪戯で家族全員重度の花粉症にされていたんだよ!とは流石に言えない。

大体そんなに簡単に納得して本当にそれで良いのか?それでよく公爵家の家長が勤まるものだ。誰かに騙されないかヒヤヒヤだよ……とも思うが、あまりこの話を突っ込まれても困るのでそう言う事にしておいた。

そして納得した家族全員で食堂へと赴くとアンが出会い頭に涙を流してイヴァンに抱きついたの致し方ない事だと思う。
いや~眼福でした。
ビバ妹ポジションですわ。
ヒロインと想い出の君の抱擁グッジョブですわ。

そして、朝食を済ませた私は少々油断をしておりました。

簡素なワンピースのまま庭で、視える様になったばかりの聖霊を観察していた私の後ろから、まさかセドリック殿下が近付いていたなどと……は、

「君は誰?」

その声に振り返った私はフリーズした。
「こんな所で可憐な妖精に出会えるとは……ずっと探していたんだ……」
そこには完全に恋に落ちた顔をしたど鬼畜王子が居たからだ。


やっ……ヤバい。

何か変なフラグが立ったよ……。
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