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始まりは悪し4
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三人で優雅にお茶を楽しんでいると一通の手紙が届いた。
イヴァンが執事から手紙を受け取るや、色鮮やかな封蝋を見て眉をしかめる。
「お兄様。知っているシーリングスタンプですの?」
私は普段見せない兄の様子に不安が過る。
「あぁ。王太子殿下の印だ」
「王太子殿下……」
やはりフラグは立っていたのか……。
これが噂に聞くゲーム補正。
つまり強制力だ。
なんて事!!
ヒロインの力恐るべし……。
王太子ルートが……
私はそう思い、一瞬アンを見やる。
その間にイヴァンは封蝋を切ると手紙を開けた。
文章を読み進めて行くイヴァンの顔に困惑の色が出る。
「お兄様。どの様な要件でしたの?」
私は恐る恐るイヴァンに問う。
まさかもう既に王太子はアンを見初めたのか?
そんな速攻で落ちるなんてチョロいんじゃないですか王太子殿下って。
そんな不穏な事を考えていると
「いや。先日倒れたエマを見舞いたい事と、我が家に伝わる薔薇を見たい事が書かれていた」
一瞬にして私の眉間に皺が寄る。
「見舞いですか……」
何で私の?
それってアンに会う為の口実?
私は当て馬的な何かですか?
私がイヴァンを見やりパチクリと目を瞬かせていると
「先触れの手紙だからもう直ぐいらっしゃるだろう」
イヴァンはそう言うとフゥっと大きな溜め息をもらした。
「何時もながら強引な方だ」
げんなりする様に言うイヴァンは何処と無くそんな王太子の行動に慣れている風でもある。
「お兄様は王太子殿下とお知り合いなんですの?」
私の問い掛けにイヴァンは一瞬嫌そうな顔になる。
何ですかね~その顔。
「知り合いも何も一応側近だからな」
まさかの側近宣言。
「えっ!!」
そんな設定あったかしら?
あれ……?
そう言えばそんな下りが……。
あまりにも周りがキラキラキャラだったから忘れていたけど、良く考えてみればそうだったかもしれない。
うん。
そう言われてみれば、確かに王太子の取り巻きの攻略対象達のはじっこの方にいた。
そうだ。
あまりにも存在感がなかった為に忘れていた。
決して攻略対象じゃないからとか、ブサメンだったからとか、そんな理由でアウトオブ眼中だった訳ではない。
兄の名誉の為にここに断言する。
……これで勘弁してね。
お兄様……。
そして、私はストーリーを思い出す。
そうそう。
イヴァンが切っ掛けでアンは王太子の他の取り巻きとも仲良くなれるんだった。
あ~単なるかませ犬的存在だと思っていたよ……。
てか、ある意味お兄様はかませ犬なのかな?
……ごめんお兄様。
私よりも酷い扱いだったんだね。
私は心の中で盛大に兄に謝罪した。
でも、私頑張るわ。
『想い出の君』のスチルを直に見る為に王太子ルートのフラグを折ってやる。
相手が王太子であろうと敵に不足なし。
来るなら来い。
迎え撃ってやるわ。
と、私が鼻息荒くしているとイヴァンが思いっきり溜め息をもらす。
「エマ。一言言っておくけど、王太子殿下は面食いだから今回の訪問はエマが目的ではないよ。ガッカリしない様に」
『はっ?判っているわよ』と思うものの私はニコリと微笑む。
「有り得ない勘違いですわねお兄様。王太子殿下の目的位察しがつきましてよ」
「ふん」と鼻息荒く私が言う。
そんな私の自信あり気な発言を怪訝に思ったイヴァンは
「エマは王太子殿下と面識ないだろう」
と正論を叩き出して来る。
「ええ。ありませんとも。でも、ここは女の勘と申しますか。多分アンの事が気になるのですわ。そのためのモーションなのではないでしょうか?」
私がそう言うとイヴァンは含み笑いをする。
「流石。我が妹だ」
満足そうに言うイヴァンは思いっきり私の頭を撫でた。
うっ……何か子供扱いです。
そんな私達をアンは羨ましそうに見つめている。
「私達二人であの腹黒王子からアンを守ろう」
「えぇお兄様。あのど鬼畜王子から私達のアンを守りましょう」
ガッツリとタックを組む二人。
そして、この後数分後に王太子が訪問して来た。
後日談……
「エマ本当に王太子と会ったことないんだよな?」と小声でイヴァンに確認されたのは難くない。
そして自分の妹が王太子を「ど鬼畜王子」と言うのは不敬なのでは?と、自分を棚に上げて思った事も言うに難くない。
イヴァンが執事から手紙を受け取るや、色鮮やかな封蝋を見て眉をしかめる。
「お兄様。知っているシーリングスタンプですの?」
私は普段見せない兄の様子に不安が過る。
「あぁ。王太子殿下の印だ」
「王太子殿下……」
やはりフラグは立っていたのか……。
これが噂に聞くゲーム補正。
つまり強制力だ。
なんて事!!
ヒロインの力恐るべし……。
王太子ルートが……
私はそう思い、一瞬アンを見やる。
その間にイヴァンは封蝋を切ると手紙を開けた。
文章を読み進めて行くイヴァンの顔に困惑の色が出る。
「お兄様。どの様な要件でしたの?」
私は恐る恐るイヴァンに問う。
まさかもう既に王太子はアンを見初めたのか?
そんな速攻で落ちるなんてチョロいんじゃないですか王太子殿下って。
そんな不穏な事を考えていると
「いや。先日倒れたエマを見舞いたい事と、我が家に伝わる薔薇を見たい事が書かれていた」
一瞬にして私の眉間に皺が寄る。
「見舞いですか……」
何で私の?
それってアンに会う為の口実?
私は当て馬的な何かですか?
私がイヴァンを見やりパチクリと目を瞬かせていると
「先触れの手紙だからもう直ぐいらっしゃるだろう」
イヴァンはそう言うとフゥっと大きな溜め息をもらした。
「何時もながら強引な方だ」
げんなりする様に言うイヴァンは何処と無くそんな王太子の行動に慣れている風でもある。
「お兄様は王太子殿下とお知り合いなんですの?」
私の問い掛けにイヴァンは一瞬嫌そうな顔になる。
何ですかね~その顔。
「知り合いも何も一応側近だからな」
まさかの側近宣言。
「えっ!!」
そんな設定あったかしら?
あれ……?
そう言えばそんな下りが……。
あまりにも周りがキラキラキャラだったから忘れていたけど、良く考えてみればそうだったかもしれない。
うん。
そう言われてみれば、確かに王太子の取り巻きの攻略対象達のはじっこの方にいた。
そうだ。
あまりにも存在感がなかった為に忘れていた。
決して攻略対象じゃないからとか、ブサメンだったからとか、そんな理由でアウトオブ眼中だった訳ではない。
兄の名誉の為にここに断言する。
……これで勘弁してね。
お兄様……。
そして、私はストーリーを思い出す。
そうそう。
イヴァンが切っ掛けでアンは王太子の他の取り巻きとも仲良くなれるんだった。
あ~単なるかませ犬的存在だと思っていたよ……。
てか、ある意味お兄様はかませ犬なのかな?
……ごめんお兄様。
私よりも酷い扱いだったんだね。
私は心の中で盛大に兄に謝罪した。
でも、私頑張るわ。
『想い出の君』のスチルを直に見る為に王太子ルートのフラグを折ってやる。
相手が王太子であろうと敵に不足なし。
来るなら来い。
迎え撃ってやるわ。
と、私が鼻息荒くしているとイヴァンが思いっきり溜め息をもらす。
「エマ。一言言っておくけど、王太子殿下は面食いだから今回の訪問はエマが目的ではないよ。ガッカリしない様に」
『はっ?判っているわよ』と思うものの私はニコリと微笑む。
「有り得ない勘違いですわねお兄様。王太子殿下の目的位察しがつきましてよ」
「ふん」と鼻息荒く私が言う。
そんな私の自信あり気な発言を怪訝に思ったイヴァンは
「エマは王太子殿下と面識ないだろう」
と正論を叩き出して来る。
「ええ。ありませんとも。でも、ここは女の勘と申しますか。多分アンの事が気になるのですわ。そのためのモーションなのではないでしょうか?」
私がそう言うとイヴァンは含み笑いをする。
「流石。我が妹だ」
満足そうに言うイヴァンは思いっきり私の頭を撫でた。
うっ……何か子供扱いです。
そんな私達をアンは羨ましそうに見つめている。
「私達二人であの腹黒王子からアンを守ろう」
「えぇお兄様。あのど鬼畜王子から私達のアンを守りましょう」
ガッツリとタックを組む二人。
そして、この後数分後に王太子が訪問して来た。
後日談……
「エマ本当に王太子と会ったことないんだよな?」と小声でイヴァンに確認されたのは難くない。
そして自分の妹が王太子を「ど鬼畜王子」と言うのは不敬なのでは?と、自分を棚に上げて思った事も言うに難くない。
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