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ここから巻き返し1
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翌朝、朝食が終わるととても機嫌の良い義理父のシグルスが私の部屋へ自前のお茶を淹れてやって来た。
「まぁ、この匂いは昨日の甘くて美味しいお茶ですわね。嬉しいですわ。お父様。さぁ、こちらへ」
そう言って私はシグルスをテーブルへと促す。
トポトポと注がれる液体。
「アンジェラ殿には昨日はとても誉められたからね。腕によりをかけて淹れて来たよ」
腕によりをかけて……ね。
思わずしらけそうになるのをぐっと堪える。
「ありがとうございます。お義父様」
そう言って私は銀細工のカップの仕掛けをそっと動かす。
「さぁ、冷めないうちに」
シグルスはそう言って私を急かすが、この仕掛けるはバレないように液体を下へと移動させる為に少し時間がかかる。
「えぇ。では」
そう言って一口飲む振りをする。
「やっぱり、とても美味しいですわ」
ニコリと微笑み感想を述べれば
「そうだろう。そうだろう」
とニコニコご機嫌に頷くシグルス。
そこへ、侍女がドアをノックする音が響いた。
「何かしら?どうぞ入って」
時間稼ぎに丁度良い。
そう思って入室を許可すれば
「王家から奥様へ」
と、一通の手紙を持って来た。
「あら、何かしら?」
多分、昨夜兄に送ったお茶の件だろう。
本当に仕事の早い事だ。
「私に構わず手紙を見てくれ」
機嫌良くシグルスが私に手紙を見る事を促した。
「お義父様。では、お言葉に甘えて」
そして、そっと手紙を見る。
『拝啓。
私の可愛い妹のアンジェラ。
妻が身重の為に君に早く王宮へ来て欲しいと言っているんだ。もし良いなら今日早速迎えをやろう。
そして、一緒にお茶会をしようではないか。
何でも前ウイナルド公爵夫人から夫君がとても美味しいお茶を淹れると聞いた事がある。
是非そのお茶を披露して頂きたい。
妻も楽しみにしているとアンジェラから伝えてはくれないだろうか?
君の最大の理解者である兄より』
「まぁ」
私の驚きの声にシグルスが反応する。
「どうしたのだ?」
私はチラリた兄の手紙を見せた。
そう、見せる事で相手に安心感を与えるためだ。
「兄が、身重の妻が話し相手に早めの里帰りをと。また、お義父様がお淹れになるお茶を王太子夫妻を交えたお茶会で披露して欲しいそうですわ」
大物の餌を相手にぶら下げる。
「おお。そうか。殿下の耳にまでこのお茶の素晴らしさが伝わっていたのか」
そう言うとにこやかに頷く。
「もし、宜しければ本日にも里帰りをして、落ち着いた頃にお義父様とお義母様をお呼びしてお茶会をしたいのですが?」
吊るされた餌が特大でシグルスは一もなく頷く。
「勿論だとも。私に何の異論もない」
私はその言葉にニコリとするや、一気にカップを傾けた。
そして
「では、早速身支度を致しますわね」
そう言って微笑んだのだ。
これで前方の憂いが一つ消える。
「まぁ、この匂いは昨日の甘くて美味しいお茶ですわね。嬉しいですわ。お父様。さぁ、こちらへ」
そう言って私はシグルスをテーブルへと促す。
トポトポと注がれる液体。
「アンジェラ殿には昨日はとても誉められたからね。腕によりをかけて淹れて来たよ」
腕によりをかけて……ね。
思わずしらけそうになるのをぐっと堪える。
「ありがとうございます。お義父様」
そう言って私は銀細工のカップの仕掛けをそっと動かす。
「さぁ、冷めないうちに」
シグルスはそう言って私を急かすが、この仕掛けるはバレないように液体を下へと移動させる為に少し時間がかかる。
「えぇ。では」
そう言って一口飲む振りをする。
「やっぱり、とても美味しいですわ」
ニコリと微笑み感想を述べれば
「そうだろう。そうだろう」
とニコニコご機嫌に頷くシグルス。
そこへ、侍女がドアをノックする音が響いた。
「何かしら?どうぞ入って」
時間稼ぎに丁度良い。
そう思って入室を許可すれば
「王家から奥様へ」
と、一通の手紙を持って来た。
「あら、何かしら?」
多分、昨夜兄に送ったお茶の件だろう。
本当に仕事の早い事だ。
「私に構わず手紙を見てくれ」
機嫌良くシグルスが私に手紙を見る事を促した。
「お義父様。では、お言葉に甘えて」
そして、そっと手紙を見る。
『拝啓。
私の可愛い妹のアンジェラ。
妻が身重の為に君に早く王宮へ来て欲しいと言っているんだ。もし良いなら今日早速迎えをやろう。
そして、一緒にお茶会をしようではないか。
何でも前ウイナルド公爵夫人から夫君がとても美味しいお茶を淹れると聞いた事がある。
是非そのお茶を披露して頂きたい。
妻も楽しみにしているとアンジェラから伝えてはくれないだろうか?
君の最大の理解者である兄より』
「まぁ」
私の驚きの声にシグルスが反応する。
「どうしたのだ?」
私はチラリた兄の手紙を見せた。
そう、見せる事で相手に安心感を与えるためだ。
「兄が、身重の妻が話し相手に早めの里帰りをと。また、お義父様がお淹れになるお茶を王太子夫妻を交えたお茶会で披露して欲しいそうですわ」
大物の餌を相手にぶら下げる。
「おお。そうか。殿下の耳にまでこのお茶の素晴らしさが伝わっていたのか」
そう言うとにこやかに頷く。
「もし、宜しければ本日にも里帰りをして、落ち着いた頃にお義父様とお義母様をお呼びしてお茶会をしたいのですが?」
吊るされた餌が特大でシグルスは一もなく頷く。
「勿論だとも。私に何の異論もない」
私はその言葉にニコリとするや、一気にカップを傾けた。
そして
「では、早速身支度を致しますわね」
そう言って微笑んだのだ。
これで前方の憂いが一つ消える。
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