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アンジェラ視点36
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「まずは食事をしよう」
キース様の言葉にコクリと頷く。
パンを契りスープに浸して食べる。
普通ベーコンとかハムエッグとか位出ないのかしら?
そう思いながらもあるものだけで食事を進めた。
「朝食のメインは父が全て食べてしまったようで、何も残っていなかったそうだ」
あぁ、成る程ね。
「本当なら入浴している間に調理を頼もうと思っていたのだが……すまない」
そう言って頭を下げられるキース様。
本来なら公爵夫妻の食事位準備しておくのが本当だと思う。
これは職務の怠慢か?
それとも本当に嫌がらせなのか?
「キース様のせいではありませんわ。私が我儘を言ったから……申し訳ございません」
そうだ。
少なくともキース様の落ち度ではない。
本来ならこう言う事は女主の仕事。
つまり、私の仕事と言う事になる。
落ち度は私。
これからゆっくりと教育して行けば良い話だ。
それに
「キース様と二人で食べる食事ですから、美味しいですわ」
これは私達が初めて二人だけで朝食を摂った記念日。
きっとこの味は一生忘れませんわ。
一口、二口と味を噛み締めて味わう。
「ところで……アンジェラに聞きたいことがあるんだ」
キース様のその言葉にドキリとした。
私に声をかける……どころか、私の名前を呼び捨てに……。
まるで恋人のようだわ。
思わずキュンとなってしまう。
「何でしょう?」
何食わぬ顔でキース様を見る。
何せ長年の修行の賜物で私の顔には分厚い仮面が装着されているのだ。
『冷たい王女』と言う仮面が。
「アンジェラはアンを知っているのか?」
キース様は何かを問いたい。
そんな顔だった。
「何故でしょう?なにやらアンと言う名のメイドをキース様がお探しになっていると、王宮に居る時にお兄様から聞いていますが、お会いした事はありませんわ」
そう。
だって、私だもの。
「そうなのか?使っている石鹸も香水の香りも同じだったからてっきり……」
……。
匂い。
匂いですか?
あんたは犬かよ。
「王宮で使われている石鹸がたまたま同じ物だったのでは?それに、私の使っている香水は侍女達も知っていますもの、同じ物を使っているとしたら、そのアンと言うメイドが私の真似をしただけですわ」
それは嘘なんだけどね。
だって、私の香水はお兄様特製の香水。
売ってなどおりませんわ。
「そうなのか?」
困惑したようなキース様。
「はい。大体ですね、同じ石鹸やら香水やらと言いますが、そんな事を言っていたら売り物の数だけ同じ物が世の中にありますのよ。考えるだけ無駄ですわね」
少ない料理の数にもう食事も終わってしまった。
「ご馳走さまです。キース様。私先にお風呂を頂いて宜しいかしら?」
そう尋ねると「あぁ」と何処か心ここにあらず状態のキース様が同意する。
「では、お先に頂きますわね」
そう言って呆然とするキース様を置いて湯殿へと足を向けた。
キース様の言葉にコクリと頷く。
パンを契りスープに浸して食べる。
普通ベーコンとかハムエッグとか位出ないのかしら?
そう思いながらもあるものだけで食事を進めた。
「朝食のメインは父が全て食べてしまったようで、何も残っていなかったそうだ」
あぁ、成る程ね。
「本当なら入浴している間に調理を頼もうと思っていたのだが……すまない」
そう言って頭を下げられるキース様。
本来なら公爵夫妻の食事位準備しておくのが本当だと思う。
これは職務の怠慢か?
それとも本当に嫌がらせなのか?
「キース様のせいではありませんわ。私が我儘を言ったから……申し訳ございません」
そうだ。
少なくともキース様の落ち度ではない。
本来ならこう言う事は女主の仕事。
つまり、私の仕事と言う事になる。
落ち度は私。
これからゆっくりと教育して行けば良い話だ。
それに
「キース様と二人で食べる食事ですから、美味しいですわ」
これは私達が初めて二人だけで朝食を摂った記念日。
きっとこの味は一生忘れませんわ。
一口、二口と味を噛み締めて味わう。
「ところで……アンジェラに聞きたいことがあるんだ」
キース様のその言葉にドキリとした。
私に声をかける……どころか、私の名前を呼び捨てに……。
まるで恋人のようだわ。
思わずキュンとなってしまう。
「何でしょう?」
何食わぬ顔でキース様を見る。
何せ長年の修行の賜物で私の顔には分厚い仮面が装着されているのだ。
『冷たい王女』と言う仮面が。
「アンジェラはアンを知っているのか?」
キース様は何かを問いたい。
そんな顔だった。
「何故でしょう?なにやらアンと言う名のメイドをキース様がお探しになっていると、王宮に居る時にお兄様から聞いていますが、お会いした事はありませんわ」
そう。
だって、私だもの。
「そうなのか?使っている石鹸も香水の香りも同じだったからてっきり……」
……。
匂い。
匂いですか?
あんたは犬かよ。
「王宮で使われている石鹸がたまたま同じ物だったのでは?それに、私の使っている香水は侍女達も知っていますもの、同じ物を使っているとしたら、そのアンと言うメイドが私の真似をしただけですわ」
それは嘘なんだけどね。
だって、私の香水はお兄様特製の香水。
売ってなどおりませんわ。
「そうなのか?」
困惑したようなキース様。
「はい。大体ですね、同じ石鹸やら香水やらと言いますが、そんな事を言っていたら売り物の数だけ同じ物が世の中にありますのよ。考えるだけ無駄ですわね」
少ない料理の数にもう食事も終わってしまった。
「ご馳走さまです。キース様。私先にお風呂を頂いて宜しいかしら?」
そう尋ねると「あぁ」と何処か心ここにあらず状態のキース様が同意する。
「では、お先に頂きますわね」
そう言って呆然とするキース様を置いて湯殿へと足を向けた。
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