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キース視点25

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「おいおい。良いのか?お前の愛しい妻を殿下が餌付けしているぞ」

遠目からでも分かる。

あれはアルフレッドの嫌がらせだ。

現にアンジェラ王女は涙目になりながら嫌がっている。

噂では、王女はデザート……特に、ケーキ類を好まないと聞いている。
お茶会でも、申し訳程度に摘まむものの殆ど食べないらしい。
つまり、食事以外の間食を嫌うらしく故に、王女を招くお茶会は気付けば昼食会となっていたらしい。

「殿下特有の嫌がらせですよ」

あの人はそういう所があるからな。

そう。

人の嫌がる事をしたくなる癖だ。

今までだって、色々な怪しい物を食べさせられた。

俺が。

その最もたるや『自白剤』だろうか?
効率良く自白させる為に研究していると言っていた。

その為に、効き目を見たいからと何度も食事に入れられた。 

食べないと言う選択肢は残念ながら俺にはなかった。


初めて盛られたのは何歳の時だったか。

「我々王公貴族は幼き日より毒物に体を慣らすんだ」

あまりにもの正論に俺は何度も付き合わされた。

そして、嫌だと食べるのを拒否したある日、まさに今のアンジェラ王女のように無理矢理と口に入れられたのを覚えている。

何か脅し文句があったと記憶しているが、その辺りの記憶が有耶無耶うやむやだ。

そして、思う。 

あぁ。
アンジェラ王女も俺と同じで、アルフレッドのモルモットにされていたんだな……と。

思わず同情してしまう思いだった。

これを同類相憐れむって言うのだろうか?


「アルフレッド殿下とは今日から正式に違う家族になるんだ。今日くらいは兄妹水入らずに過ごさせてやらなければな」

まぁ形だけのものだ、お互いに嫌っている者同士の結婚だし。


「まぁ、そうだな。あれほど仲の良かった兄妹だから今日は殿下に譲ってやろうな。どうせ夜には熱い夫婦の営みが待っているだろうし」

友人の一人がそう言うと「こいつめ」と血の気の多い友人達に小突かれる。

そんな友人達に気の利いた令嬢達が飲み物を手渡して来る。

「ほら、今日の主役のお前も飲めよ」

そう言われてグラス一杯飲んだ所までは記憶がはっきりとしていた。

後は浴びるように酒を飲んだのだけは覚えている。

ようは、やけ酒である。
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