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アンジェラ視点30

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「何で起きているんだ!!」

普段聞いた事もない大きな声を上げて私を怒られるキース様。

レアですわ。

私は持っていた本を名残惜しそうに閉じた。

「一応本日は初日ですので、キース様をお待ちしておりましたの」

だって、今日から対外的に二人で堂々と会える理由が出来たのだから。
それも、同じお部屋でアンジェラとしてだ。

「わざわざ起きて待っていなくて良い。それに君は妊婦なんだぞ。少しは体を休めろ」

何だかんだ言っても私の心配をしてくれるキース様。
何てお優しいのかしら。

「それに、何かあったら君のお腹の子供の父親にも申し訳ないだろう?」

そう言いながら私から視線を反らしタイを緩めるキース様。

えっと……これって嫉妬?
父親が自分じゃないと思って?

「お腹の子供の父親って誰なんだ?俺と結婚するより、その子供の父親に責任を取って貰えば良かったんじゃないか?」

拗ねたように視線を反らしながら言うキース様はなんとなく可愛い。
好きな方から誤解とは言え、ヤキモチをかれるってなんてこそばゆいのかしら。

「それが……私も誕生日の夜だったから大分お酒を飲んでいて、相手が良く分からないのよ」

危なく父親はキース様だって言いそうになり、でも、はっきり私を好きだと言わないキース様にそれを教えるのも……と踏み止まる。

「そうか……分かった。取り敢えず俺は帰って来たんだからもう寝てくれ。君に何かあったら俺がアルフレッドにどうにかされてしまう」

まぁ、お兄様を出汁にして私を気遣うなんて……。

「そうですわね」

前から思っていたのですが、キース様ってツンデレですわよね。

本当に可愛いですわ。

「風呂に入って来るから、その間に寝ていてくれ」

そして、照れたようにそう言い捨ててキース様は浴室へと消えて行った。

「はぁ~。やっぱり好きですわ。キース様」

甘いため息をつきながら魅惑のベッドへと顔を沈めた。

あぁ。
キース様の薫りがしますわ。

し・あ・わ・せ
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