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キース視点21

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「今日はアンジェラが君の家に向かう日なのに、仕事を休まなくて良かったのか?」

王太子の執務室で仕事をしていると、入口の方から不機嫌なアルフレッドの言葉が降って来た。
俺はそんなアルフレッドに乾いた笑いしか出ない。

「契約婚で、お互いに嫌っている間ですよ。それに、王女のお腹の子供が私の子供ならいざ知らず、他所の男の子供を身籠った王女を私が大仰おおぎょうに出迎えてはお互いに気まずい思いをさせれるでしょう?」

何処か自嘲気味に言ったのは仕方がないと思う。

事実、王女は身籠っているし誰の子供か教えてさえくれない。

それでも結婚すると決めたのは、一重にアルフレッドが言った俺を勘当するのではなくアンを殺して俺を連れ戻すと言う言葉に思うところがあったからだ。


父上は一見温厚そうだが、その裏で自分に歯向かった使用人に平気で体罰を課していた。

運悪く亡くなってしまった者もいるほどだ。

それにたまにだが、父から射すような視線を寄越される事もある。

幼い日は父に怯えて暮らしていたようにさえ思ったが、不思議とアンジェラ王女と会ってからその射すような視線は減って行った。

それに、アンジェラ王女との婚姻を一番喜んだのはその父だ。

よっぽど王女との婚姻がウレシかったのだろう。

どこか冷めたように報告した時の嬉しそうな顔が忘れられない。

だから、俺が居ない方が良いのだ。

王女も俺もお互いに愛してもいない事実を知られるよりは。

「大丈夫ですよ。父上が今回の婚姻に一番喜んでいたのですから。それに王女の懐妊の事も」

俺は苦笑いでアルフレッドにそう告げると渋い顔をされた。

その時の俺は、アルフレッドは妹をないがしろにした俺に渋い顔をしたと思っていたのだが、それが間違いだったと気付いた時は全て終わってからだった。
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