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キース視点20
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「やぁ、キース。丁度良かった」
開口一番に満面の笑みで俺を迎え入れるアルフレッド。
嫌な予感しかしない。
そして、何故か俺を伴いアンジェラ王女の部屋へと向かった。
王太子の部屋ほどではないが、細工の見事な家財家具が並ぶその部屋の中央に大きな天蓋付きベッド。
そのベッドに横たわるアンジェラ王女。
「お兄様?」
ムクリと起き上がるアンジェラ王女は髪を下ろしており化粧さえしていなかった。
そのシルエットに一瞬ドキリとするが、持ち前の嫌悪感を総動員してアンジェラ王女の方を見た。
「調子はどうだい?」
「まぁまぁですわ」
アルフレッドはモスキートネットをかき上げて近くにあるリボンでベッドの柱に結わえた。
そこに現れたのはいつものキツイ印象の王女ではなく、どちらかと言うと可愛らしい感じの女性だった。
何故かアンに似ている王女に目が釘付けになってしまう。
「さて、実はねキース。アンジェラは身籠っているんだ」
唐突なアルフレッドの説明に頭が一瞬フリーズしてしまう。
故に、アルフレッドが言った言葉はそのまま耳の外へと抜けてしまった。
「今は悪阻が酷いようでね。それで、婚約者である君を呼んだんだ」
「悪阻って……つまり妊娠していると言う事ですか?」
「そうだね……それに既に身籠ってるって言ったんだけど」
後半何かぼそりと言っていたが、俺の脳はそれどころではなかった。
「婚約者?とは、もしや私の事でしょうか?」
「そうだね」
「身に覚えがありませんけど」
何故俺が嫌っている王女を抱けると思う?
「まぁ、そこは置いておいて。ここからはビジネスの話をしよう」
アルフレッドはそう言うとサイドテーブルの側にある椅子に座った。
勿論俺は立ったままである。
「一部の噂で知ったのだが、君は庶民の娘に恋をしているそうだね。名前は確か『アン』」
「はい」
「王女との縁談を断って庶民と駆け落ちでもするつもり?」
「そのつもりです」
すると突然アルフレッドが高笑いを始めた。
「ハハハハハ。おかしな事を言うね。そんな事を今の公爵が知ったらどうなると思う?確実にアンは殺されるだろうよ」
自分ではなくアンが殺される?
俺は信じられないようにアルフレッドを見た。
本来なら勘当されて庶民になるつもりだったのだから。
「先日、ウイナルド公爵領の南一帯に大量の害虫が発生したのは知っているよね」
「はい。聞いております」
「それで、今年の君の領土からの税収は四分の一は減るだろう。更に、被害に合った農家への支援も必要だ。それはざっと見積もっても公爵家の税収3年分程になるだろうね」
そんな話は知らなかった。
父は俺にそんな事を言わなかった。
「それで、もし、今回アンジェラを無条件で君の妻にするのなら、本来公爵家の税収2年分の持参金だったものを、その倍出そう。そうすれば、父君は肩の荷が降りて尚且つ君に爵位を譲れるだろう」
確かに、王女を娶れば立場上俺が公爵になるだろう。
でも……
「それと、アンジェラは公の場だけの公爵夫人で良いと言っているし、愛人を同じ館に住まわせて二人で過ごして貰っても構わないと言っている。あくまでも表面上の夫婦で良いと。つまり、これはある意味の契約結婚でありビジネスだ」
確かに悪い話ではない。
貴族は家の存続の為なら人を切る事もある。
確かに俺が殺されるより、アンを殺して俺を取り戻すと言う方便は一理ある。
それに、王女は俺に愛人と一緒に住んで良いと言う。
王女とは仮面夫婦で構わないと言うお墨付き。
王女が既に妊娠しているのなら、王女との間にこれ以上子を望まれる事もないだろう。
悪くない話だ。
「それでお願いしたい」
俺はアルフレッドの手を取り熱く握手をしていた。
それが悪魔の手でも構わなかった。
俺とアンの幸せな生活の為なら。
開口一番に満面の笑みで俺を迎え入れるアルフレッド。
嫌な予感しかしない。
そして、何故か俺を伴いアンジェラ王女の部屋へと向かった。
王太子の部屋ほどではないが、細工の見事な家財家具が並ぶその部屋の中央に大きな天蓋付きベッド。
そのベッドに横たわるアンジェラ王女。
「お兄様?」
ムクリと起き上がるアンジェラ王女は髪を下ろしており化粧さえしていなかった。
そのシルエットに一瞬ドキリとするが、持ち前の嫌悪感を総動員してアンジェラ王女の方を見た。
「調子はどうだい?」
「まぁまぁですわ」
アルフレッドはモスキートネットをかき上げて近くにあるリボンでベッドの柱に結わえた。
そこに現れたのはいつものキツイ印象の王女ではなく、どちらかと言うと可愛らしい感じの女性だった。
何故かアンに似ている王女に目が釘付けになってしまう。
「さて、実はねキース。アンジェラは身籠っているんだ」
唐突なアルフレッドの説明に頭が一瞬フリーズしてしまう。
故に、アルフレッドが言った言葉はそのまま耳の外へと抜けてしまった。
「今は悪阻が酷いようでね。それで、婚約者である君を呼んだんだ」
「悪阻って……つまり妊娠していると言う事ですか?」
「そうだね……それに既に身籠ってるって言ったんだけど」
後半何かぼそりと言っていたが、俺の脳はそれどころではなかった。
「婚約者?とは、もしや私の事でしょうか?」
「そうだね」
「身に覚えがありませんけど」
何故俺が嫌っている王女を抱けると思う?
「まぁ、そこは置いておいて。ここからはビジネスの話をしよう」
アルフレッドはそう言うとサイドテーブルの側にある椅子に座った。
勿論俺は立ったままである。
「一部の噂で知ったのだが、君は庶民の娘に恋をしているそうだね。名前は確か『アン』」
「はい」
「王女との縁談を断って庶民と駆け落ちでもするつもり?」
「そのつもりです」
すると突然アルフレッドが高笑いを始めた。
「ハハハハハ。おかしな事を言うね。そんな事を今の公爵が知ったらどうなると思う?確実にアンは殺されるだろうよ」
自分ではなくアンが殺される?
俺は信じられないようにアルフレッドを見た。
本来なら勘当されて庶民になるつもりだったのだから。
「先日、ウイナルド公爵領の南一帯に大量の害虫が発生したのは知っているよね」
「はい。聞いております」
「それで、今年の君の領土からの税収は四分の一は減るだろう。更に、被害に合った農家への支援も必要だ。それはざっと見積もっても公爵家の税収3年分程になるだろうね」
そんな話は知らなかった。
父は俺にそんな事を言わなかった。
「それで、もし、今回アンジェラを無条件で君の妻にするのなら、本来公爵家の税収2年分の持参金だったものを、その倍出そう。そうすれば、父君は肩の荷が降りて尚且つ君に爵位を譲れるだろう」
確かに、王女を娶れば立場上俺が公爵になるだろう。
でも……
「それと、アンジェラは公の場だけの公爵夫人で良いと言っているし、愛人を同じ館に住まわせて二人で過ごして貰っても構わないと言っている。あくまでも表面上の夫婦で良いと。つまり、これはある意味の契約結婚でありビジネスだ」
確かに悪い話ではない。
貴族は家の存続の為なら人を切る事もある。
確かに俺が殺されるより、アンを殺して俺を取り戻すと言う方便は一理ある。
それに、王女は俺に愛人と一緒に住んで良いと言う。
王女とは仮面夫婦で構わないと言うお墨付き。
王女が既に妊娠しているのなら、王女との間にこれ以上子を望まれる事もないだろう。
悪くない話だ。
「それでお願いしたい」
俺はアルフレッドの手を取り熱く握手をしていた。
それが悪魔の手でも構わなかった。
俺とアンの幸せな生活の為なら。
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