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キース視点15
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王女からの手紙を見てほくそ笑む。
「案外話が分かる方のようだ。それに、ここに来てこの婚約話しにも触手を伸ばさない所にも好感が持てる」
と言うよりは避けている?
どうやら嫌っていたのは自分だけではなかったようだ。
自室のソファーでゆったりしながら手紙を見ていた俺は手始めに父親にそれとなく話をしようと書斎を目指して歩き出した。
父は日中の殆どを書斎で過ごす。
公爵領は結構な広さがあり、書類整理だけでも大変な労力となるからだ。
「相手の王女もこの婚約話しには乗り気ではないのだ。きっと父も納得するだろう」
王女からの手紙を再確認して書斎のドアに手をかけた時。
自動でドアが開かれた。
「「わっ」」
思わず声を上げて相手を見れば、今から会おうとしていた父だった。
外套を無造作に羽織り顔を青くしている父は、何処かへ出掛けるようとしている様子。
きちんとしている父にしては無造作に着た外套も、きちんと被られていない帽子もらしくなかった。
「なんだ。キースか」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと父は私の横を通り抜けて行く。
その慌て振りに、いつもの穏和な雰囲気がなかった。
「どうされましたか?」
去り行く父に後ろから声をかける。
手に持っていた王女からの手紙がクシャリと音を立てるが気にしない。
「バルゼブルの北の地で戦があったらしい」
バルゼブル帝国は軍事国家でも名を馳せており、その税収も高いと聞いている。
裕福な商人ならいざ知らず、小さな農村地帯からは辛口な評価だった。
つまり、身の保証は欲しいが軍隊の維持に費用がかかる。
軍隊に取られる税金は帝国の予算の半分を占めているらしい。
つまり、それだけ高い税金を民が支払っていると言う訳だ。
「情報では、農地や狩場の争いから小部族同士の抗争が起き、軍隊が派遣されたらしい所までは聞いているが」
そうだ、あそこは我が国との国境地帯。
大きな森が境界線上にあり、迷いの森とも言われていた。
そして、そこへ隣接するのが我が公爵領になる。
「今から南の都市ルイゼに向かう。その間の留守を頼んだ」
父はそれだけ言うと足早に廊下を駆けて行った。
「何故今なのだろうか?」
握り締めた手紙をそのままポケットステーションへ入れて書斎のドアを閉じた。
南の都市ルイゼ。
我が領土の最南端にある大きな都市だ。
俺は父の慌て振りが気になり書斎の机を見る。
一通の手紙が無造作に置いてあった。
その手紙に手をかけた時、書斎の扉が開く。
「キース様。今この時より旦那様がお戻りになるまでの間、公爵家の一切の取り仕切りをお願い致します」
執事のセバスチャンはにこやかにそう言うと俺を書斎の机に座らせた。
「旦那様がお戻りになるまで一週間から10日。頑張って下さいね。それと、王宮には事情をしたためた書状を送りましたので文官のお仕事はお気になさらず」
そして、机の隣に山積みになっていた箱を開けたかと思うと
「取り敢えず、これを明後日までにお願いしますね」
ドスンと置かれた箱。
「これを明後日までに?」
それ位なら大丈夫か……と思っていたら。
「何をとぼけた事を、机の脇に置かれた箱全てですよ。監視に一人付けますので宜しくお願い致しますね。公爵代行様」
黒い笑みを称えるセバスチャン。
何か彼の地雷を踏んだだろうか?
そうして俺の地獄の10日間が始まったのである。
「案外話が分かる方のようだ。それに、ここに来てこの婚約話しにも触手を伸ばさない所にも好感が持てる」
と言うよりは避けている?
どうやら嫌っていたのは自分だけではなかったようだ。
自室のソファーでゆったりしながら手紙を見ていた俺は手始めに父親にそれとなく話をしようと書斎を目指して歩き出した。
父は日中の殆どを書斎で過ごす。
公爵領は結構な広さがあり、書類整理だけでも大変な労力となるからだ。
「相手の王女もこの婚約話しには乗り気ではないのだ。きっと父も納得するだろう」
王女からの手紙を再確認して書斎のドアに手をかけた時。
自動でドアが開かれた。
「「わっ」」
思わず声を上げて相手を見れば、今から会おうとしていた父だった。
外套を無造作に羽織り顔を青くしている父は、何処かへ出掛けるようとしている様子。
きちんとしている父にしては無造作に着た外套も、きちんと被られていない帽子もらしくなかった。
「なんだ。キースか」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと父は私の横を通り抜けて行く。
その慌て振りに、いつもの穏和な雰囲気がなかった。
「どうされましたか?」
去り行く父に後ろから声をかける。
手に持っていた王女からの手紙がクシャリと音を立てるが気にしない。
「バルゼブルの北の地で戦があったらしい」
バルゼブル帝国は軍事国家でも名を馳せており、その税収も高いと聞いている。
裕福な商人ならいざ知らず、小さな農村地帯からは辛口な評価だった。
つまり、身の保証は欲しいが軍隊の維持に費用がかかる。
軍隊に取られる税金は帝国の予算の半分を占めているらしい。
つまり、それだけ高い税金を民が支払っていると言う訳だ。
「情報では、農地や狩場の争いから小部族同士の抗争が起き、軍隊が派遣されたらしい所までは聞いているが」
そうだ、あそこは我が国との国境地帯。
大きな森が境界線上にあり、迷いの森とも言われていた。
そして、そこへ隣接するのが我が公爵領になる。
「今から南の都市ルイゼに向かう。その間の留守を頼んだ」
父はそれだけ言うと足早に廊下を駆けて行った。
「何故今なのだろうか?」
握り締めた手紙をそのままポケットステーションへ入れて書斎のドアを閉じた。
南の都市ルイゼ。
我が領土の最南端にある大きな都市だ。
俺は父の慌て振りが気になり書斎の机を見る。
一通の手紙が無造作に置いてあった。
その手紙に手をかけた時、書斎の扉が開く。
「キース様。今この時より旦那様がお戻りになるまでの間、公爵家の一切の取り仕切りをお願い致します」
執事のセバスチャンはにこやかにそう言うと俺を書斎の机に座らせた。
「旦那様がお戻りになるまで一週間から10日。頑張って下さいね。それと、王宮には事情をしたためた書状を送りましたので文官のお仕事はお気になさらず」
そして、机の隣に山積みになっていた箱を開けたかと思うと
「取り敢えず、これを明後日までにお願いしますね」
ドスンと置かれた箱。
「これを明後日までに?」
それ位なら大丈夫か……と思っていたら。
「何をとぼけた事を、机の脇に置かれた箱全てですよ。監視に一人付けますので宜しくお願い致しますね。公爵代行様」
黒い笑みを称えるセバスチャン。
何か彼の地雷を踏んだだろうか?
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