王女から逃げる為に頑張った結果

麻生空

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キース視点13

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王太子殿下ことアルフレッドの部屋へ通されると開口一番に「髭を剃れ」と命令された。

色々と考え事をしていて身嗜みにまで気がいかなかったのは大き失態だ。

何せ、頭の中は『アンが何処かへ行った』と『廃嫡される』と『無職』の3つが占めていたのだから。

そして、髭を剃る為に浴室へ向かおうとするとアルフレッドが一着のラフな服を寄越す。

「そんなヨレヨレな服は脱げ。普段着だが、お前にやる」

つまり、これに着替えろと言う事だろう。

「ありがとうございます」

俺は礼を述べて今度こそ浴室へと消えた。

王太子殿下用の浴室は蛇口や手すりに金細工が施されており、先程まで居た部屋とではその豪華さが桁違いだった。

「あの部屋でも、公爵家うちより贅沢だと思ったのだがな……」

既に、生活そのものが違うのか……。

「それで良くあの高慢な王女が俺の所へ降嫁こうかしようと思ったものだ」

悪態つきながらも髭を剃る。

大分伸びた髭に2日も経ったのを実感させられた。

そして、アルフレッドから渡された服へと着替えた。

ラフなシャツにスラックスだけの服装だが、シャツの肌触りが違う。

「滑らか過ぎるだろう」

普段自分が着ているシャツなんかもう紙に思えてしまう。

着替え終わると取り敢えず脱いだ服は浴室の篭に入れてアルフレッドの待つ部屋へと戻った。

美味しそうな湯気を立てたディナー一式が所狭しとテーブルの上に並べられていた。

「悪いが果実水で食事をしよう。我が領地の新種の果実から作らせた物なんだ」

アルフレッドに促され、斜め向かいの席に腰掛ける。

果実水の入ったグラスを傾けて食事を開始した。

「旨い」

流石は王宮の料理、食材も味付けも最高だった。

そして、俺はアルフレッドの果実水と言う言葉を信じて煽るように飲んだ。

それが間違いだと気付きもしないで……。
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