王女から逃げる為に頑張った結果

麻生空

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アンジェラ視点6

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フロアーの中央に来るとキース様が心配そうに私に囁きかけて来る。

「殿下。ダンスは大丈夫ですか?」

確かにキース様が参加された夜会では、ダンスのお誘いをされるかもしれないと極力ダンスのお誘いを断っていた。(無意味な努力)
だから私がダンスが苦手なのでわ?と心配されたのだ。

なんてお優しいのでしょうか。
思わず胸がキュンとしてしまう。
だから「大丈夫です」と安心させるように答えた。

曲が始まるとキース様は舞うように私をリードして下さる。

あぁ。
私。
この瞬間を何年も夢見て来たのよ。

ずっとキース様と踊りたかった。


婚約者なのだから今日は3曲続けて踊っても構わないのよね。

それに、ダンスの曲目は事前に指揮者とも打ち合わせしていたのだ。
一曲目は軽いやつで、でも二曲目からは密着する事が多いダンスで。

ウフフフ。
私からキース様へのサプライズですわ。

それにしても、今日もキース様は素敵です。

涼やかなサラサラの金髪にサファイアのような澄んだ瞳。
シルバーの燕尾服はさながら新郎のようでもあって、まるで今日は私達の結婚式の予行練習のようでさえあった。

もう、いっそこのまま司祭様を呼んで結婚式を挙げても良いのではないでしょうか?

そして、誓いのキッス。

ボン。

想像しただけで心臓が持ちませんわ。

頭お花畑な想像をしていても長年鍛えられたダンスは間違う事もなく優雅にこなす。
 
はっ!!いけない。
危なく一曲目が終わる所でしたわ。

本来なら此処でお辞儀をしてパートナー解消ですが、本日はそうもいきません。

私はキース様の手を離さず二曲目に突入。
一瞬キース様から「ちっ」とお声が聞こえたような気がしましたが、まぁ、気のせいでしょう。

先程よりも密着度の高いダンスにかこつけてキース様を堪能。
後でマリーに何て言われるか……。
でも良いの、この曲は男性が積極的に攻めるダンス。
キース様もそれを分かってかグイグイと私に迫る。

あぁ。
最高ですわ。

今まで近付くことさえ難しかったキース様。

でもほら、今私をダンスで攻めておりますわ。

ス・テ・キ。

さぁ、もっと私を翻弄ほんろうして下さいまし。

そうして、手を離す事なく3曲目に突入するのであった。
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