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キース視点4

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「キース様。まだお時間があるので隣にどうぞ」
王女はそう言うと自身の右手に用意された椅子を進めて来る。

「お言葉に甘えまして」
俺は一礼すると王女の隣の椅子へ腰を下ろした。

「そうですわ。先程淹れた香茶がありますの。もし宜しければ如何かしら?」
王女はいつもの如くつんけんとした口調で話始める。
勿論王族からの申し出を断る程俺もバカじゃない。

「慎んでご相伴しょうばん致します」

どうせ何処かの高級な茶葉を自慢したいのだろう。
本当に反吐が出る。

王女の言葉を受けて王女付きの侍女が俺と王女に淹れたての香茶を差し出した。

一瞬香ったその香りには覚えがあった。
一年前まで毎日俺が飲んでいたあの香茶の匂いだ。
「まさか……」
コクンと一口飲めば確信が行く。
あのメイドが淹れたのと同じ香茶だと。

懐かしいな。
一年前に突然いなくなったメイド。
香茶を淹れている時にこっそりと覗いた彼女の横顔に心惹かれていた。
口数少なく言葉と言えば「失礼致します」「熱いのでお気をつけてお飲み下さい」「失礼致しました」の3つだけ。
俺からも声をかける事が出来なかった。
今思えばとんだ間抜けだ。
メイドが辞める理由なんて一つしかないのに。
つまり『結婚』だ。
あのメイドは結婚する為に辞めたのだ。
俺はまだ若造だからとか、遊びだと思われたくないだとか思わず声をかけておけば良かった。
いなくなってから初めて気付くなんて……。

感傷に浸りながら香茶を全て飲むと侍女殿の方を見た。
「美味しい香茶でした。ご馳走様」
すると、何故か隣にいた王女が扇を落とす。

意外とドジなんだなと思い扇を拾ってやった。

羞恥のせいか、顔を赤くした王女は人間味があって好感が持てた。
いつもそうなら俺だって……

「キース様。ありがとうございます」

そう言って俺から扇を受け取る王女。
その時初めて自分より年下だと意識してしまった。

別に王女が何かして嫌いなんじゃない。
昔から何故か王女を見ているとイライラするんだ。
言葉一つにしても裏をかいてしまう。

それが苦手意識なのだろう。

容姿やスタイルも全て自分好みなのにだ。

あぁ。
早く今日が終わってくれればせつに思う。
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