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キース視点3

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あぁ、憂鬱だ。

何故あの日俺は陛下に上手く断れなかったのか……。
あの数日前の出来事を女々しくも後悔していた。


夜会当日の今日、何故か父と母が機嫌良く全ての準備を進めていた。

いや……ここ数日。

俺が宮殿からの呼び出しをされたあの忌々しい夜から様子がおかしい。

「やる時はやるんだな」
「キースも隅には置けないわね」

両親揃って理解不能な暗号をぶちかます。

「えっ?」
疑問に声を出せば
「いや、みなまで言わなくていい。そこは察するよ」
またしても意味不明である。

そして、何故か次の日から両親二人して王宮と自宅を行ったり来たり。
忙しい毎日を過ごしていた。


夕方王宮に向かおうと正面玄関へ行くとセバスチャンが既に待機していた。
「坊っちゃま。今夜は頑張って来て下さい」

普段、夜会に行く時などは顔も出さないセバスチャンが何故か俺に気合いを入れる。
「あぁ。(まぁ適当に)」
そうして俺は玄関を出た。


何時もは父が使う一等高い馬車。

今夜は両親も行くはずなのに何故俺が?
そう思う。
王宮まで公爵家のタウンハウスから馬車で20分。
普段乗ったことのない馬車を堪能しながら夕暮れの街並みを見ていた。

「キース様。着きました」
御者の声掛けに扉の方を向けば数名の侍従と侍女が並んでいた。
たかだか王女のエスコート役をするだけの自分に有り得ない程の出迎えだ。

馬車を降り立つと年配の侍従が前に進み出る。

「お待ちしておりました。キース様」
恭しくお辞儀をし道を空ける。

「王女殿下は既に控えの間に移動しております」
つまり「お前遅いな」と大勢の迎えを寄越したのか?
嫌みかよ。

「分かった。ありがとう」

そう言って歩き出すと何故か皆俺の後に付いて来る。

まさか、俺が迷子になるとでも思っているのか?
これでも宮仕えしている文官なのに?

「はぁ~」
思わずため息を吐いてしまう。

5分程歩くと控えの間が見えて来た。

扉の前に立つ二人の騎士が俺に礼をとり扉を開く。
「キース様のご到着です」

開け放たれた部屋の中央に悠々と座る王女。

そして、イヤミのように俺の瞳に似せたアクセサリーをしている。

これは当て付けか?
アクセサリーを贈らなかった俺に?

そう思うと苦笑いしか出なかった。
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