王女から逃げる為に頑張った結果

麻生空

文字の大きさ
上 下
4 / 86

キース視点2

しおりを挟む
家に戻ると執事のセバスチャンが恭しく俺を迎えてくれた。
年齢不詳のこの男は、俺の小さい頃から少しも代わり映えしない。
奥さんと子供が居るらしいが、詳しいバックヤードが全然見えない。

「お帰りなさいませ。坊っちゃま。陛下からはどのようなご用件で?」

表情を替える事なくそう聞いて来るセバスチャンに俺はあからさまに嫌な顔をした。

「3日後の夜会で王女のエスコートを頼まれた」

嫌悪感を含ませながらそう答えるとセバスチャンは「そうですか」とだけ言う。

「服とか色々な手配があるだろうから、まぁその辺はお前に任せる。後は宜しく頼むよ」
あんな王女の為に自分が自ら動く必要もないだろう。

「畏まりました」

セバスチャンはそう言うと2階へと消える俺をその場で見送った。


☆☆☆☆☆☆☆


キース様が二階へ消えると急ぎベルを鳴らした。

侍従の一人が駆け寄ると急ぎアクセサリーの手配を頼んだ。

「王女殿下にキース様の瞳と同じ色のアクセサリーを明日中に届けるように手配を。それと、キース様のカフスやアクセサリーに王女殿下の瞳と同じ色の宝石を」
私はそれだけ指示を出すと急ぎ衣装部屋へと向かう。

3日後と急な夜会に王女殿下のエスコート。
新しく服を仕立てている時間がない。

ここは旦那様の御古をリメイクして……そう思い一着の服を掴むと侍女を呼び手直しを頼んだ。
これは旦那様が結婚式の時に着た逸品。
今も見劣りする訳がない。
「陛下も、もう少し早くお声を掛けて下されば」

新しく準備していた衣装では王女殿下のエスコートには見劣りしてしまうだろう。
何せ、3日後の夜会とは王女殿下の20歳の誕生日なのだから。

「坊っちゃまはあれほど王女殿下を嫌いな素振りをしておいて、本当は好きだったのですね。つまりツンデレ?」

ぼそりと呟き空を仰いだ。

これで王女殿下の婚約者が誰か、衆人の知る所になる。
「こうしてはおれません。急ぎ馬車の手配をして、晩餐前に閣下にこの事をお知らせせねば」
私は深いため息を吐きながら今度は馬小屋へと足を向けた。
こうしてキースは自分の知らないところで、自ら外堀を埋めてしまっているのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

愛してほしかった

こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。  心はすり減り、期待を持つことを止めた。  ──なのに、今更どういうおつもりですか? ※設定ふんわり ※何でも大丈夫な方向け ※合わない方は即ブラウザバックしてください ※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...