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アンジェラ視点2

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謁見を済ませると私はルンルン気分で部屋へと戻った。

「姫様ご機嫌ですね。もしかして、エスコートの相手がキース様に決まりました?」

長年支える侍女のマリーが楽しそうに聞いて来る。

「ええ、そうなのよ。当日は滅茶苦茶はりきらなくっちゃね」

私はそう言うと3日後に着る予定のドレスを見る。
薄い水色のドレスは淡いグラデーションを作りながら床に波を揺らす。
一瞬ウエディングドレスと思えるそのドレスに、当日の二人の風景を思い描く。
キース様がシルバーの燕尾服を着たら完璧に結婚式の予行練習のようになるな。
少しお花畑な想像をしてニヤケてしまった。

「ねぇ、アクセサリーは何が良いと思う?やっぱりキース様の瞳の色に合わせた方が良い?それとも御髪の色かしら?」
ウキウキと宝石箱を開けながらマリーに聞くと呆れたような顔をされる。

「姫様。キース様がエスコートをお受けになったのであればアクセサリーの贈り物があるかもしれませんわよ」
マリーは無責任にもそんな有り得ない位嬉しい嘘をつく。
「そんな事あるわけないじゃない。私の事を嫌っているあのキース様よ。そんな希望的観念何て最初からないからね」
勝手に妄想して撃沈した時の痛さは十分知っている。
「そうですか?姫様がキース様を好きな事は城中の者が知っていますのに、本人が知らないなんて……まさか有り得ませんわ。あの鈍鈍にぶにぶの陛下でさえもお気付きになったんですよ」
そうなのだ。
今回キース様をと言ってくれた父は私が望むなら公爵に婚約の打診をしようと言って下さったのだ。
でも、私はきっとキース様から嫌われているからと言うと「試しに夜会のエスコートを頼んでみよう。断られたら脈なしと思えばいいさ。でも、もし了解したら」そんな事は有り得ないと父に言ったものの、良く良く考えてみれば一臣下が王女のエスコートを陛下に断れるだろうか?
今更ながらそうも思ってしまった。

「きっと、今頃執事を呼んでアクセサリーを選んでいる頃だと思いますけど、姫様がそこまで言われるのであれば一応アクセサリーを選んでおきましょうか?」
マリーはそう言うとどの色のアクセサリーを選びましょうか?と言って宝石箱を一緒に見てくれた。

そんな私の所に翌日の午後、キース様からアクセサリーが届いてそりゃあ有頂天になった事は後日談である。
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