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誓約書
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「実は俺には既に心に決めた女性がおります。その女性と一緒になれるのであれば、今までの行いを改めて誠実に一人の女性だけを愛そうと思います。また、我が家の政務も覚えたくこれまで以上にご指導頂ければと思っております」
一気に口上し父を見やれば嬉しそうに口許を緩めていた。
掴みは上場。
「お前が言う心に決めた女性と言うのは今回の見合いで来て下さった令嬢方ではないのだな?」
父の言葉に強く頷く。
「はい」
と。
「名前は何と言う?」
「それはまだお答え出来ません。まだプロポーズをしていませんので。ただ、彼女の身分は問わないで頂きたい。その代わり俺は心を入れ替えて、これまで以上に政務に勤しむ事をここで誓約致します」
まさか名前を知らないとは言えないのでそう言ってみる。
そんな俺に気付く事なく父は話を進めて来た。
「ハウリン侯爵家のメリッサ嬢はどうするつもりだ?」
多分今日会っていない事を言っているのだろう。
「昨日の朝にお会いしていますが、正直俺の好みではありません。ですので、今後お会いする事もないでしょう」
俺の言葉に父は眉間にシワを寄せる。
何が気に障ったのか?
「そう言うのであれば、確かに会わない方がお互いのためだろう。分かった。メリッサ嬢の方には私から話を通そう」
そう言って父は盛大にため息を吐いた。
「今後は心を入れ替え誠心誠意良い領主になれるよう頑張ります」
再び誠意を父に表し深々と一礼した。
すると父は一枚の紙を取り出す。
そして、今俺と話した内容を簡単に書き込んだ。
「ここの文の下にお前の誓約書を認めろ」
これは……。
「メアリーから既に今日の日中にあった事は聞いている。お前が口先だけでなく、本気だと言う事を形に残せ。そうすれば私もお前を信じよう」
言葉だけなら何とでも言えた。
しかし、書面でも残すとなると口先だけではない物がある。
一瞬息を大きく吸うと父の机にあるペンを取った。
書かないと言う選択肢は既になかった。
彼女を手に入れる為ならば。
そう思うと些細な事に思えてしまう。
俺はペンを握ると一気に誓約書を書き出す。
『今後は誠心誠意領主としての役目を全うし、家族と血族に誠実に生きて行く事を誓います。
ケヴィン・ウイルノット』
彼女を手に入れる為ならこんな事は容易い事だ。
全て書き終わり朱肉に親指をつけると署名の語尾に押印する。
その一連の動作を見ていた父がしんみりと上を向く。
「父上……彼女の件は?」
そう問い掛けると
「好きにするが良い」
それだけ言うと俺の書いた書面を手に取る。
「今日は下がって良い。少し考える事が出来た」
憔悴した父に部屋を辞する一礼をして、俺は自室へと足を向けた。
部屋には今日の昼に侍従に頼んでおいた深紅のバラの花束が机の上に置いてあった。
俺はそれを取ると彼女……つまりハニーの元へと足を向けた。
一気に口上し父を見やれば嬉しそうに口許を緩めていた。
掴みは上場。
「お前が言う心に決めた女性と言うのは今回の見合いで来て下さった令嬢方ではないのだな?」
父の言葉に強く頷く。
「はい」
と。
「名前は何と言う?」
「それはまだお答え出来ません。まだプロポーズをしていませんので。ただ、彼女の身分は問わないで頂きたい。その代わり俺は心を入れ替えて、これまで以上に政務に勤しむ事をここで誓約致します」
まさか名前を知らないとは言えないのでそう言ってみる。
そんな俺に気付く事なく父は話を進めて来た。
「ハウリン侯爵家のメリッサ嬢はどうするつもりだ?」
多分今日会っていない事を言っているのだろう。
「昨日の朝にお会いしていますが、正直俺の好みではありません。ですので、今後お会いする事もないでしょう」
俺の言葉に父は眉間にシワを寄せる。
何が気に障ったのか?
「そう言うのであれば、確かに会わない方がお互いのためだろう。分かった。メリッサ嬢の方には私から話を通そう」
そう言って父は盛大にため息を吐いた。
「今後は心を入れ替え誠心誠意良い領主になれるよう頑張ります」
再び誠意を父に表し深々と一礼した。
すると父は一枚の紙を取り出す。
そして、今俺と話した内容を簡単に書き込んだ。
「ここの文の下にお前の誓約書を認めろ」
これは……。
「メアリーから既に今日の日中にあった事は聞いている。お前が口先だけでなく、本気だと言う事を形に残せ。そうすれば私もお前を信じよう」
言葉だけなら何とでも言えた。
しかし、書面でも残すとなると口先だけではない物がある。
一瞬息を大きく吸うと父の机にあるペンを取った。
書かないと言う選択肢は既になかった。
彼女を手に入れる為ならば。
そう思うと些細な事に思えてしまう。
俺はペンを握ると一気に誓約書を書き出す。
『今後は誠心誠意領主としての役目を全うし、家族と血族に誠実に生きて行く事を誓います。
ケヴィン・ウイルノット』
彼女を手に入れる為ならこんな事は容易い事だ。
全て書き終わり朱肉に親指をつけると署名の語尾に押印する。
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「父上……彼女の件は?」
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「好きにするが良い」
それだけ言うと俺の書いた書面を手に取る。
「今日は下がって良い。少し考える事が出来た」
憔悴した父に部屋を辞する一礼をして、俺は自室へと足を向けた。
部屋には今日の昼に侍従に頼んでおいた深紅のバラの花束が机の上に置いてあった。
俺はそれを取ると彼女……つまりハニーの元へと足を向けた。
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