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侍女メアリー視点5
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公爵夫妻の部屋へ到着するとメリッサ嬢から聞いた話をする。
1.ハウリン侯爵家は結構困窮している事。
2.女にだらしない男は嫌いだという事。
3.ケヴィン様の容姿は好みだという事。
「メアリー良くやった。早速今回の和解内容に侯爵家への援助を組み込もう」
旦那様のその言葉に疑問が生じる。
「和解……ですか?」
婚約者とか結婚ではなくて?
普段ならしないであろう、主人相手に問い返していた。
「ああ。ケヴィンにも聞いたが、今回のお茶会には伴侶へ望む者はいないそうだ。メリッサ嬢とも昨日の朝に会っていて知っているから断ってくれとの事だ。今朝まで会っているのに、何を錯乱しているのか……それ以上は問い掛けなんだが。それに意中の女性がいるらしく、これからは彼女一筋で頑張るから身分は問わないで欲しいとまで言われてしまってな。あの奔放な息子が落ち着くのであればと多少の事には目を瞑って了承したのだよ」
昨日の朝……ってまさか坊っちゃん。
「ハウリン侯爵家のご令嬢には申し訳ないが、良縁を用意する事と、謝罪の意味を込めて侯爵領が軌道に乗るまでの援助を申し出よう。それと、今回の和解金だ。それで納得して貰う」
旦那様の断定的な言葉に思わず問い掛けていた。
「良縁と申しますと……」
既に坊っちゃんに処女を食われてしまった事が解っていてあえて嫁に娶る男がいるだろうか?
って言うかそれを旦那様が先方に勧める?
どんな神経しているんだ?
流石この親にしてこの子有りだな……そう思ってしまった。
しかし、良縁ね……。
否……あのメリッサ嬢を綺麗に整えれば大抵の男が妻にと望むだろう。
そう思うとあの令嬢には旦那様がわざわざ良縁を紹介する意味さえない。
「第一候補で王弟殿下か……」
王弟殿下?
40になるあのおっさん?
挙げ句見た目平凡顔の?
社交界でも政界でもパッとしないおっさんだよね?
「第二候補でエルントス公爵の次男辺りか」
は?
顔だけ良いあの落ちこぼれ騎士の?
年は22歳でそれだけしか取り柄ないよね。
どこが良縁なものか。
挙げ句浪費家だし。
嬉しそうにそう言う旦那様には悪いけど、何か嫌な予感しかしない。
「第三候補にはステルロイド公爵家のダニエルだな」
は?
あの坊っちゃんのヤリチン仲間の?
ついでに言えば次男だよ。
家督じゃないよ。
「そう言えば今日来ていたな。明日にでも声を掛けるか」
それこそ余計なお世話だと思う。
「旦那様。取り敢えず和解の内容を提示して、相手が了承してからお声を掛けるのが筋かと……」
どれも良縁じゃないし、もし今のメンツを自分の娘に紹介されたら夫を連れて邸を出ても惜しくはない。
はっきり言って旦那様の神経を違う意味で疑ってしまう。
「それに良縁でしたら第四候補にロバート様は如何でしょうか?」
坊っちゃんの母方の従兄弟で公爵家の跡取りでもあり、何より誠実な方だ。
確か2年前に婚約者が亡くなられて今はお相手がいないはず。
年齢は20歳とまだ若いし申し分ないはず。
「メアリー。それは駄目だ。メリッサ嬢は既に処女ではない。何と言ってロバートへ勧めると言うのか?」
思わず開いた口が塞がらないかと思った。
その処女を奪ったのは坊っちゃんですよね?
それに昔と違い婚前交渉も盛んな昨今。
ロバート様も処女にそれほどこだわらないと思う。
それで言えばロバート様は押しだと思う。
旦那様にそう言いたい。
それに、ロバート様も今回のお茶会に参加されている。
半ば無理矢理だけど。
しかし、旦那様の言う事ももっともだ。
坊っちゃんが頂いたお下がりをロバート様にやるのは確かに不味い。
「了解いたしました」
私はそれだけ言うと急いでの場を辞して、坊っちゃんの所へと向かった。
こう言ってはなんだけど、今並べられた男に比べたら坊っちゃんの方が優良物件だ。
それに多分坊っちゃんは知らないのだ。
あの女性がメリッサ嬢だと言う事を。
だって、私でさえ現物を見ても想像出来なかったのだから。
急ぎ皆が居るだろう談話室へ行くが既にもぬけの殻。
踵を返し坊っちゃんの部屋へと向かうがそこももぬけの殻。
「あの下半身男は何処へ行ったーっ!!」
思わず固有名詞がおかしく高位貴族を罵ってしまうが、今は私自身余裕がない。
取り敢えずと坊っちゃんの部屋を出て歩き出す。
廊下ですれ違った若い侍女に坊っちゃんの行方を聞くと、大層な花束を持って奥の客間へと向かったとか……。
「いかん。今のメリッサ様を見たら坊っちゃんの理性のたがが外れる」
侍女にあるまじき全力疾走で廊下を駆け抜けると既に事件は勃発していた。
きっと、メリッサ嬢を見た坊っちゃんが獣と化したのだろう。
もう知らんからな。
1.ハウリン侯爵家は結構困窮している事。
2.女にだらしない男は嫌いだという事。
3.ケヴィン様の容姿は好みだという事。
「メアリー良くやった。早速今回の和解内容に侯爵家への援助を組み込もう」
旦那様のその言葉に疑問が生じる。
「和解……ですか?」
婚約者とか結婚ではなくて?
普段ならしないであろう、主人相手に問い返していた。
「ああ。ケヴィンにも聞いたが、今回のお茶会には伴侶へ望む者はいないそうだ。メリッサ嬢とも昨日の朝に会っていて知っているから断ってくれとの事だ。今朝まで会っているのに、何を錯乱しているのか……それ以上は問い掛けなんだが。それに意中の女性がいるらしく、これからは彼女一筋で頑張るから身分は問わないで欲しいとまで言われてしまってな。あの奔放な息子が落ち着くのであればと多少の事には目を瞑って了承したのだよ」
昨日の朝……ってまさか坊っちゃん。
「ハウリン侯爵家のご令嬢には申し訳ないが、良縁を用意する事と、謝罪の意味を込めて侯爵領が軌道に乗るまでの援助を申し出よう。それと、今回の和解金だ。それで納得して貰う」
旦那様の断定的な言葉に思わず問い掛けていた。
「良縁と申しますと……」
既に坊っちゃんに処女を食われてしまった事が解っていてあえて嫁に娶る男がいるだろうか?
って言うかそれを旦那様が先方に勧める?
どんな神経しているんだ?
流石この親にしてこの子有りだな……そう思ってしまった。
しかし、良縁ね……。
否……あのメリッサ嬢を綺麗に整えれば大抵の男が妻にと望むだろう。
そう思うとあの令嬢には旦那様がわざわざ良縁を紹介する意味さえない。
「第一候補で王弟殿下か……」
王弟殿下?
40になるあのおっさん?
挙げ句見た目平凡顔の?
社交界でも政界でもパッとしないおっさんだよね?
「第二候補でエルントス公爵の次男辺りか」
は?
顔だけ良いあの落ちこぼれ騎士の?
年は22歳でそれだけしか取り柄ないよね。
どこが良縁なものか。
挙げ句浪費家だし。
嬉しそうにそう言う旦那様には悪いけど、何か嫌な予感しかしない。
「第三候補にはステルロイド公爵家のダニエルだな」
は?
あの坊っちゃんのヤリチン仲間の?
ついでに言えば次男だよ。
家督じゃないよ。
「そう言えば今日来ていたな。明日にでも声を掛けるか」
それこそ余計なお世話だと思う。
「旦那様。取り敢えず和解の内容を提示して、相手が了承してからお声を掛けるのが筋かと……」
どれも良縁じゃないし、もし今のメンツを自分の娘に紹介されたら夫を連れて邸を出ても惜しくはない。
はっきり言って旦那様の神経を違う意味で疑ってしまう。
「それに良縁でしたら第四候補にロバート様は如何でしょうか?」
坊っちゃんの母方の従兄弟で公爵家の跡取りでもあり、何より誠実な方だ。
確か2年前に婚約者が亡くなられて今はお相手がいないはず。
年齢は20歳とまだ若いし申し分ないはず。
「メアリー。それは駄目だ。メリッサ嬢は既に処女ではない。何と言ってロバートへ勧めると言うのか?」
思わず開いた口が塞がらないかと思った。
その処女を奪ったのは坊っちゃんですよね?
それに昔と違い婚前交渉も盛んな昨今。
ロバート様も処女にそれほどこだわらないと思う。
それで言えばロバート様は押しだと思う。
旦那様にそう言いたい。
それに、ロバート様も今回のお茶会に参加されている。
半ば無理矢理だけど。
しかし、旦那様の言う事ももっともだ。
坊っちゃんが頂いたお下がりをロバート様にやるのは確かに不味い。
「了解いたしました」
私はそれだけ言うと急いでの場を辞して、坊っちゃんの所へと向かった。
こう言ってはなんだけど、今並べられた男に比べたら坊っちゃんの方が優良物件だ。
それに多分坊っちゃんは知らないのだ。
あの女性がメリッサ嬢だと言う事を。
だって、私でさえ現物を見ても想像出来なかったのだから。
急ぎ皆が居るだろう談話室へ行くが既にもぬけの殻。
踵を返し坊っちゃんの部屋へと向かうがそこももぬけの殻。
「あの下半身男は何処へ行ったーっ!!」
思わず固有名詞がおかしく高位貴族を罵ってしまうが、今は私自身余裕がない。
取り敢えずと坊っちゃんの部屋を出て歩き出す。
廊下ですれ違った若い侍女に坊っちゃんの行方を聞くと、大層な花束を持って奥の客間へと向かったとか……。
「いかん。今のメリッサ様を見たら坊っちゃんの理性のたがが外れる」
侍女にあるまじき全力疾走で廊下を駆け抜けると既に事件は勃発していた。
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