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24兄弟対決再び

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遅れてやって来た私のお相手は、やはりと言うべきかジルベルト様だった。

傍目からは『ザッ、兄弟対決』ってやつのリバースだ。
王妃様を輩出した由緒正しい公爵の兄弟。
将来を約束された二人の対決は王族同士の戦いより興味深いものになっていた。
けど、実際は兄弟でも何でもないんだけどね。
強いて言えば私の協力者?
それも、王妃様から無理矢理ゴリ押しされたジルベルト様は拒否権なく協力者にされたのだ。
色々と申し訳無く思うけど、王都の騎士が如何程の実力なのかも正直知りたいのだ。
故に、本気で行かせて貰いますかね。

「ジル兄上。お胸をお借り致します」

そう言って一礼する。

「遠慮せずにかかって来なさい」
 
ジルベルト様はそう言うと刃を潰した剣を持ち軽く構える。

「流石、副団長」

殺気も何も感じないのに殆ど隙がない。

「では、参ります」

剣を構えて一歩前に出た所で跳躍の魔法をかけ一気に間合いを詰める。

キーン。

金属の当たる音が鳴り響く。

「流石です。ジル兄上」

私のこの初手を防いだのはキルト位だったのに、やっぱり王都の騎士様は凄いなー。

「じゃあ、魔法も使いますよ」

ポンと一歩下がって軽く剣を振る。

ブォォォン。

と言う音を出して私の持つ剣が光を纏った。

「ほう。魔法剣ですか」

ジルベルト様が感嘆の声を上げるのと、他の騎士達が騒ぐのはほぼ同時だった。

「魔法剣って、高位ランクの技能が必要な技です。我が第一騎士団でも魔術師の援護なく己だけの魔術で魔法剣を作れるのは両手で数える程度。それをその歳で易々とやってのけられると長年騎士をやっていた者の立つ瀬がないですね」

ジルベルト様はそう言うと眉根を下げた。

「それも、雷属性の魔法剣とは……」

ジルベルト様はそこまで言うと持っていた剣を脇に下ろす。

「この勝負は私の負けですね。雷属性の魔法剣となど、まともに剣を交える事さえ難しい」

確かに、魔獣討伐においても雷属性の魔法剣は敵なしだった。

ただし、キルト以外では……と続くのだが。

まぁ、私はキルトに色々な戦闘訓練を受けていたのだからキルトに負けるのは当たり前なんだけどね。

ジルベルト様の実力を見ようと張り切り過ぎたのが仇となったようだ。

「団長。そう言う訳でこの勝負は私の負けでお願いします」
 
ジルベルト様の申請に団長がコクリと頷く。

団長も魔法剣を使えたのだから一戦交えてくれないかしら?

そんな期待の眼差しで団長を見れば何故か苦笑いを浮かべられる。

「では、ジルベルト対ルークの戦いは勝者ルークで」

団長の声に他の団員は沈黙した。

代わりに聖なる乙女集団からはブーイングの嵐。

どうやら、彼女達はどちらかが怪我をするのを回復させたかったらしい。

怪我をしない方が良いのに、なんて非常識なお嬢様方なのか。

そんな気持ちで令嬢達を見ていると、空の彼方に閃く光が二つ見えた。

意識をそちらの光に向ければ懐かしい気配に胸がワクワクする。

「ジル兄上。私の愛竜が届いたようです」

笑顔で正面に立つジルベルト様へそう言うと、ジルベルト様の口角がヒクヒクとなる。

「ルーク。竜の到着はお昼頃なのでは?」

確かに、普通に飛ばせば昼頃だろうけど、何せ竜に乗って連れて来るのがキルトならその速度は違う。

キルトが乗ると私のグーちゃんも信じられないスピードで飛翔するのだ。

「どうやらキルトが張り切っているみたいで」

ジルベルト様はキルトの事を知っている様子だったのでそう進言して見ると、ジルベルト様の顔が蒼白になった。

「キルト様もいらっしゃっているのですか?」

ジルベルト様の声が微かに震えているが、愛竜に会える喜びに震える私はそんな事には気づかず笑顔で肯定した。

「白竜が二頭見えますので間違いないかと」

笑顔でそう答えるとジルベルト様は目を瞑り深く何度か深呼吸する。
「解りました」
何かを諦めたような声でジルベルト様は小さく答えたのだった。
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