25 / 28
24兄弟対決再び
しおりを挟む
遅れてやって来た私のお相手は、やはりと言うべきかジルベルト様だった。
傍目からは『ザッ、兄弟対決』ってやつのリバースだ。
王妃様を輩出した由緒正しい公爵の兄弟。
将来を約束された二人の対決は王族同士の戦いより興味深いものになっていた。
けど、実際は兄弟でも何でもないんだけどね。
強いて言えば私の協力者?
それも、王妃様から無理矢理ゴリ押しされたジルベルト様は拒否権なく協力者にされたのだ。
色々と申し訳無く思うけど、王都の騎士が如何程の実力なのかも正直知りたいのだ。
故に、本気で行かせて貰いますかね。
「ジル兄上。お胸をお借り致します」
そう言って一礼する。
「遠慮せずにかかって来なさい」
ジルベルト様はそう言うと刃を潰した剣を持ち軽く構える。
「流石、副団長」
殺気も何も感じないのに殆ど隙がない。
「では、参ります」
剣を構えて一歩前に出た所で跳躍の魔法をかけ一気に間合いを詰める。
キーン。
金属の当たる音が鳴り響く。
「流石です。ジル兄上」
私のこの初手を防いだのはキルト位だったのに、やっぱり王都の騎士様は凄いなー。
「じゃあ、魔法も使いますよ」
ポンと一歩下がって軽く剣を振る。
ブォォォン。
と言う音を出して私の持つ剣が光を纏った。
「ほう。魔法剣ですか」
ジルベルト様が感嘆の声を上げるのと、他の騎士達が騒ぐのはほぼ同時だった。
「魔法剣って、高位ランクの技能が必要な技です。我が第一騎士団でも魔術師の援護なく己だけの魔術で魔法剣を作れるのは両手で数える程度。それをその歳で易々とやってのけられると長年騎士をやっていた者の立つ瀬がないですね」
ジルベルト様はそう言うと眉根を下げた。
「それも、雷属性の魔法剣とは……」
ジルベルト様はそこまで言うと持っていた剣を脇に下ろす。
「この勝負は私の負けですね。雷属性の魔法剣となど、まともに剣を交える事さえ難しい」
確かに、魔獣討伐においても雷属性の魔法剣は敵なしだった。
ただし、キルト以外では……と続くのだが。
まぁ、私はキルトに色々な戦闘訓練を受けていたのだからキルトに負けるのは当たり前なんだけどね。
ジルベルト様の実力を見ようと張り切り過ぎたのが仇となったようだ。
「団長。そう言う訳でこの勝負は私の負けでお願いします」
ジルベルト様の申請に団長がコクリと頷く。
団長も魔法剣を使えたのだから一戦交えてくれないかしら?
そんな期待の眼差しで団長を見れば何故か苦笑いを浮かべられる。
「では、ジルベルト対ルークの戦いは勝者ルークで」
団長の声に他の団員は沈黙した。
代わりに聖なる乙女集団からはブーイングの嵐。
どうやら、彼女達はどちらかが怪我をするのを回復させたかったらしい。
怪我をしない方が良いのに、なんて非常識なお嬢様方なのか。
そんな気持ちで令嬢達を見ていると、空の彼方に閃く光が二つ見えた。
意識をそちらの光に向ければ懐かしい気配に胸がワクワクする。
「ジル兄上。私の愛竜が届いたようです」
笑顔で正面に立つジルベルト様へそう言うと、ジルベルト様の口角がヒクヒクとなる。
「ルーク。竜の到着はお昼頃なのでは?」
確かに、普通に飛ばせば昼頃だろうけど、何せ竜に乗って連れて来るのがキルトならその速度は違う。
キルトが乗ると私のグーちゃんも信じられないスピードで飛翔するのだ。
「どうやらキルトが張り切っているみたいで」
ジルベルト様はキルトの事を知っている様子だったのでそう進言して見ると、ジルベルト様の顔が蒼白になった。
「キルト様もいらっしゃっているのですか?」
ジルベルト様の声が微かに震えているが、愛竜に会える喜びに震える私はそんな事には気づかず笑顔で肯定した。
「白竜が二頭見えますので間違いないかと」
笑顔でそう答えるとジルベルト様は目を瞑り深く何度か深呼吸する。
「解りました」
何かを諦めたような声でジルベルト様は小さく答えたのだった。
傍目からは『ザッ、兄弟対決』ってやつのリバースだ。
王妃様を輩出した由緒正しい公爵の兄弟。
将来を約束された二人の対決は王族同士の戦いより興味深いものになっていた。
けど、実際は兄弟でも何でもないんだけどね。
強いて言えば私の協力者?
それも、王妃様から無理矢理ゴリ押しされたジルベルト様は拒否権なく協力者にされたのだ。
色々と申し訳無く思うけど、王都の騎士が如何程の実力なのかも正直知りたいのだ。
故に、本気で行かせて貰いますかね。
「ジル兄上。お胸をお借り致します」
そう言って一礼する。
「遠慮せずにかかって来なさい」
ジルベルト様はそう言うと刃を潰した剣を持ち軽く構える。
「流石、副団長」
殺気も何も感じないのに殆ど隙がない。
「では、参ります」
剣を構えて一歩前に出た所で跳躍の魔法をかけ一気に間合いを詰める。
キーン。
金属の当たる音が鳴り響く。
「流石です。ジル兄上」
私のこの初手を防いだのはキルト位だったのに、やっぱり王都の騎士様は凄いなー。
「じゃあ、魔法も使いますよ」
ポンと一歩下がって軽く剣を振る。
ブォォォン。
と言う音を出して私の持つ剣が光を纏った。
「ほう。魔法剣ですか」
ジルベルト様が感嘆の声を上げるのと、他の騎士達が騒ぐのはほぼ同時だった。
「魔法剣って、高位ランクの技能が必要な技です。我が第一騎士団でも魔術師の援護なく己だけの魔術で魔法剣を作れるのは両手で数える程度。それをその歳で易々とやってのけられると長年騎士をやっていた者の立つ瀬がないですね」
ジルベルト様はそう言うと眉根を下げた。
「それも、雷属性の魔法剣とは……」
ジルベルト様はそこまで言うと持っていた剣を脇に下ろす。
「この勝負は私の負けですね。雷属性の魔法剣となど、まともに剣を交える事さえ難しい」
確かに、魔獣討伐においても雷属性の魔法剣は敵なしだった。
ただし、キルト以外では……と続くのだが。
まぁ、私はキルトに色々な戦闘訓練を受けていたのだからキルトに負けるのは当たり前なんだけどね。
ジルベルト様の実力を見ようと張り切り過ぎたのが仇となったようだ。
「団長。そう言う訳でこの勝負は私の負けでお願いします」
ジルベルト様の申請に団長がコクリと頷く。
団長も魔法剣を使えたのだから一戦交えてくれないかしら?
そんな期待の眼差しで団長を見れば何故か苦笑いを浮かべられる。
「では、ジルベルト対ルークの戦いは勝者ルークで」
団長の声に他の団員は沈黙した。
代わりに聖なる乙女集団からはブーイングの嵐。
どうやら、彼女達はどちらかが怪我をするのを回復させたかったらしい。
怪我をしない方が良いのに、なんて非常識なお嬢様方なのか。
そんな気持ちで令嬢達を見ていると、空の彼方に閃く光が二つ見えた。
意識をそちらの光に向ければ懐かしい気配に胸がワクワクする。
「ジル兄上。私の愛竜が届いたようです」
笑顔で正面に立つジルベルト様へそう言うと、ジルベルト様の口角がヒクヒクとなる。
「ルーク。竜の到着はお昼頃なのでは?」
確かに、普通に飛ばせば昼頃だろうけど、何せ竜に乗って連れて来るのがキルトならその速度は違う。
キルトが乗ると私のグーちゃんも信じられないスピードで飛翔するのだ。
「どうやらキルトが張り切っているみたいで」
ジルベルト様はキルトの事を知っている様子だったのでそう進言して見ると、ジルベルト様の顔が蒼白になった。
「キルト様もいらっしゃっているのですか?」
ジルベルト様の声が微かに震えているが、愛竜に会える喜びに震える私はそんな事には気づかず笑顔で肯定した。
「白竜が二頭見えますので間違いないかと」
笑顔でそう答えるとジルベルト様は目を瞑り深く何度か深呼吸する。
「解りました」
何かを諦めたような声でジルベルト様は小さく答えたのだった。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
御者のお仕事。
月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。
十三あった国のうち四つが地図より消えた。
大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。
狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、
問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。
それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。
これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。
和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる