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20師匠って有名人?
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訓練場を出た辺りでジルベルト様が私に話し掛けて来た。
「今朝は話を合わせてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそいっぱい助け船を出して頂いてとても助かりました」
流石副団長をやっているだけあり、気遣いが凄いなーと思っていたんだよ。
「君の事は昨夜父から手紙が来ていて知っています。王妃様にも確認したけど、ラッセル辺境伯の唯一のご息女で間違いないね」
「はい。そうです」
殿下の前で弟だと言った事で、私とジルベルト様の間には秘密の共有関係が出来ていた。
何せ、いくら王妃様の企てだとしても同意したならもう仲間なのだ。
「王妃様は子供のような所がおありの方だから、いつも身内を巻き込んで色々悪戯をする事がありましたが、まさか、貴女のようなご令嬢を巻き込むとは……」
困ったように話されるジルベルト様には申し訳ないけど、これは私がお願いした事。
「今回の事は私から王妃様にお願いした事ですので、謝るべきは私の方です。ジルベルト様には大変ご迷惑おかけしてしまい申し訳ございません。それに『ジル兄上』呼びしてしまいました事、合わせて申し訳ございません。少々馴れ馴れしかったですよね」
深々と頭を下げると
「いえ、気になさらないで下さい。私としては、かえって役得ですから。頭を上げて下さい」
ジルベルト様は丁寧に謝罪を受け入れてくれる。
「しかし、まさか由緒あるラッセル家のご令嬢を第一騎士団に入れるなど……あまりご無理はされないように、竜に無理に乗る必要もありませんよ。裏方ではありますが、第一騎士団の庶務をして頂いても良いのですから」
確かに、普通の令嬢なら竜には乗れない。
それどころか剣だって振るわないだろう。
「大丈夫ですよ。幼い頃より私の家の筆頭執事兼師匠にしごかれておりますから」
あの鬼師匠にね。
ニコリとそう言うと、一瞬にしてジルベルト様の顔がヒクツク。
「ラッセル家の筆頭執事……ですか?」
目を大きく見開きながら聞いて来るジルベルト様。
「はい。幼い日より魔獣の住む森で狩りもしていますし、それになんと言っても自称『最強執事』の師匠がついていますから。まぁ、自称でなくても実際に最強ですけどね」
お茶目に言って見るとジルベルト様の顔色が変わった。
滅茶苦茶青ざめている。
「なさか、その師匠は白龍に乗っていますか?」
とても真剣な眼差しで質問してくるジルベルト様。
「良くご存知で」
白龍なんて珍しいから良く分かったな~、位の感覚で返答する。
「すると……話に出ていた師匠とは、まさか……キルト様ではないですよね」
キルトの名前を言った辺りからジルベルト様からは緊張感を現していた。
「勿論キルトですよ。良くご存知ですね」
言った瞬間ジルベルト様の動きが止まった。
「まさか……とは思いますが、愛竜がお昼に着くと言うお話は、もしや、もしや、キルト様がお連れになる……とか?」
固まったままのジルベルト様。
「それはどうかは分からないですよ。もしかしたらグーちゃんが一人で来るかもしれにいから」
「竜が一人で?」
「あの子スッゴく賢いからもしかしたら来れるかも」
「ソウダトイイデスネ」
何でそんなに片言なのだろう。
「ジル兄上。行きましょうか」
固まるジルベルト様へ前を促す。
チンタラしていたらお昼になっちゃうから。
「分かりました。行きましょう」
そうして事務で制服一式を頂き余計な分はこっそり王妃様経由で部屋に届けて貰う事にした。
「ここは我が家で確保している部屋ですから、着替える時はここでお願いします」
そう言って事務室がある建物の二階にある一室の扉を空けてくれるジルベルト様。
「私は所用がありますので、着替えたらこの部屋で少しお待ち下さい。絶対に勝手に出てはいけませんよ」
そう言って一目散に走って行った。
「イケメンでも慌てる事があるんだ」
まぁ、良いか。
着替えよう。
ーーーーーーー
一方のジルベルトは、近衛騎士団執務室へと駆けていた。
「大変です。ハイン団長」
勢い良く扉を開くと当のハインは書類を片手に紅茶を飲んでいた。
「冷静な君が走るなんて珍しいね」
優雅に紅茶をすするハイン。
しかし、
「ルークの師匠はあの金色のキルト様です」
ブブブーーーーッ。
思いっきり紅茶を吹いていた。
「ゲホゲホゲホ……何……金色のキルトだと?」
尚もむせるハイン。
思い出すのは10年前。
国王の「友人が遊びに来るよ~竜にも乗れるからちょっと騎士団指導してやってと話したら快く了承してくれたよ」と言う軽い一言に「そうですか」と安易に返事をした事を思い出し、良く生き延びた物だと後から懐かしむ事があった。
が、二度と関わりたくないとも同時に思っていた。
「今日のお昼にルークの愛竜を連れて来る可能性があります」
今年25歳になったジルベルトは15歳の入団の時にキルトを見ていた。
故に、これは報告義務があると判断。
今に至るのだった。
「もしそれが本当なら……最悪だ。直ぐに緊急事態会議の召集を……いや、この際直ぐに避難誘導を、いや、もうこの際陛下を縛って差し出すか……」
錯乱状態の近衛騎士団長。
副団長が押さえながら「君は取り敢えず持ち場に戻りなさい」とジルベルトを促した。
「今朝は話を合わせてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそいっぱい助け船を出して頂いてとても助かりました」
流石副団長をやっているだけあり、気遣いが凄いなーと思っていたんだよ。
「君の事は昨夜父から手紙が来ていて知っています。王妃様にも確認したけど、ラッセル辺境伯の唯一のご息女で間違いないね」
「はい。そうです」
殿下の前で弟だと言った事で、私とジルベルト様の間には秘密の共有関係が出来ていた。
何せ、いくら王妃様の企てだとしても同意したならもう仲間なのだ。
「王妃様は子供のような所がおありの方だから、いつも身内を巻き込んで色々悪戯をする事がありましたが、まさか、貴女のようなご令嬢を巻き込むとは……」
困ったように話されるジルベルト様には申し訳ないけど、これは私がお願いした事。
「今回の事は私から王妃様にお願いした事ですので、謝るべきは私の方です。ジルベルト様には大変ご迷惑おかけしてしまい申し訳ございません。それに『ジル兄上』呼びしてしまいました事、合わせて申し訳ございません。少々馴れ馴れしかったですよね」
深々と頭を下げると
「いえ、気になさらないで下さい。私としては、かえって役得ですから。頭を上げて下さい」
ジルベルト様は丁寧に謝罪を受け入れてくれる。
「しかし、まさか由緒あるラッセル家のご令嬢を第一騎士団に入れるなど……あまりご無理はされないように、竜に無理に乗る必要もありませんよ。裏方ではありますが、第一騎士団の庶務をして頂いても良いのですから」
確かに、普通の令嬢なら竜には乗れない。
それどころか剣だって振るわないだろう。
「大丈夫ですよ。幼い頃より私の家の筆頭執事兼師匠にしごかれておりますから」
あの鬼師匠にね。
ニコリとそう言うと、一瞬にしてジルベルト様の顔がヒクツク。
「ラッセル家の筆頭執事……ですか?」
目を大きく見開きながら聞いて来るジルベルト様。
「はい。幼い日より魔獣の住む森で狩りもしていますし、それになんと言っても自称『最強執事』の師匠がついていますから。まぁ、自称でなくても実際に最強ですけどね」
お茶目に言って見るとジルベルト様の顔色が変わった。
滅茶苦茶青ざめている。
「なさか、その師匠は白龍に乗っていますか?」
とても真剣な眼差しで質問してくるジルベルト様。
「良くご存知で」
白龍なんて珍しいから良く分かったな~、位の感覚で返答する。
「すると……話に出ていた師匠とは、まさか……キルト様ではないですよね」
キルトの名前を言った辺りからジルベルト様からは緊張感を現していた。
「勿論キルトですよ。良くご存知ですね」
言った瞬間ジルベルト様の動きが止まった。
「まさか……とは思いますが、愛竜がお昼に着くと言うお話は、もしや、もしや、キルト様がお連れになる……とか?」
固まったままのジルベルト様。
「それはどうかは分からないですよ。もしかしたらグーちゃんが一人で来るかもしれにいから」
「竜が一人で?」
「あの子スッゴく賢いからもしかしたら来れるかも」
「ソウダトイイデスネ」
何でそんなに片言なのだろう。
「ジル兄上。行きましょうか」
固まるジルベルト様へ前を促す。
チンタラしていたらお昼になっちゃうから。
「分かりました。行きましょう」
そうして事務で制服一式を頂き余計な分はこっそり王妃様経由で部屋に届けて貰う事にした。
「ここは我が家で確保している部屋ですから、着替える時はここでお願いします」
そう言って事務室がある建物の二階にある一室の扉を空けてくれるジルベルト様。
「私は所用がありますので、着替えたらこの部屋で少しお待ち下さい。絶対に勝手に出てはいけませんよ」
そう言って一目散に走って行った。
「イケメンでも慌てる事があるんだ」
まぁ、良いか。
着替えよう。
ーーーーーーー
一方のジルベルトは、近衛騎士団執務室へと駆けていた。
「大変です。ハイン団長」
勢い良く扉を開くと当のハインは書類を片手に紅茶を飲んでいた。
「冷静な君が走るなんて珍しいね」
優雅に紅茶をすするハイン。
しかし、
「ルークの師匠はあの金色のキルト様です」
ブブブーーーーッ。
思いっきり紅茶を吹いていた。
「ゲホゲホゲホ……何……金色のキルトだと?」
尚もむせるハイン。
思い出すのは10年前。
国王の「友人が遊びに来るよ~竜にも乗れるからちょっと騎士団指導してやってと話したら快く了承してくれたよ」と言う軽い一言に「そうですか」と安易に返事をした事を思い出し、良く生き延びた物だと後から懐かしむ事があった。
が、二度と関わりたくないとも同時に思っていた。
「今日のお昼にルークの愛竜を連れて来る可能性があります」
今年25歳になったジルベルトは15歳の入団の時にキルトを見ていた。
故に、これは報告義務があると判断。
今に至るのだった。
「もしそれが本当なら……最悪だ。直ぐに緊急事態会議の召集を……いや、この際直ぐに避難誘導を、いや、もうこの際陛下を縛って差し出すか……」
錯乱状態の近衛騎士団長。
副団長が押さえながら「君は取り敢えず持ち場に戻りなさい」とジルベルトを促した。
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