上 下
20 / 28

19合同訓練

しおりを挟む
朝食後の行程は第一騎士団・第三騎士団合同訓練となっていた。

「第一と第三騎士団の合同訓練は基本的に魔術と剣での訓練になるんだ」

訓練場への移動中アルフィー殿下が簡単な説明をしてくれる。

「魔法を伴う戦いの為に普通の剣での訓練より怪我人が多いから、救護班として魔術師数名とその補助に『聖なる乙女集団』も来るんだけど……あまり怪我をするのはお勧めしないな」
表情の少ないアルフィー殿下にしては珍しく嫌な顔をする。
「えっ?何言っているの?ワザワザ怪我をする人なんていないよ。それに、怪我をしないようにするのが普通だろう?騎士なんだから」

怪我をしないように戦うのは当たり前なのに、アルフィー殿下は何バカな事を言っているのか?
正直疑問以外の何物でもない。

「救護班、特に『聖なる乙女集団』が付く時は何故か怪我人が異様に増える趣向がある。ルークはビジュアルも良いから新人恒例の洗礼を受ける可能性もある。だから一応忠告はしておく」

意味が分からない。
怪我をすると洗礼を受けるって、普通その前の模擬戦でやるんじゃないのか?

先輩の騎士が新人をイビるようにさぁ。

それが、何故怪我をした後の治療が洗礼なのか?

しかし、演習場に入り第一訓練場へ入るとアルフィー殿下の言っていた意味を理解した。

訓練場の東側に設置された救護テント。
しかし、その下には幾つものテーブルと椅子が設置されており、テーブルの上には何故かお菓子とお茶が並んでいた。

そこには、まるで結婚式のような白地のドレスを着た集団が椅子に座りながら扇で口元を隠しながら話をしていた。

尚且つ、何故か給仕をしている普通の侍女までいる始末。
「えっと……令嬢方の見学会?追っかけ?ファン倶楽部?」

驚きが隠せない。

こんなに堂々と訓練場に陣取ってお茶を飲みながら見学をするなんて。

「腕に白地に赤の腕章を着けているだろう。あれが騎士団公認の『聖なる乙女集団』だよ」

アルフィー殿下は感情のこもらない声で言う。
「あのボランティアで回復魔法を使うと言う令嬢集団?別名『令嬢方の婚活組織』の?」

思わずそう問い掛けていた。

「歯に衣を着せない物言いだね。まぁ、平たく言えばその通り」

アルフィー殿下はあからさまに嫌な顔をする。

きっと先程言った『洗礼』なるものを受けたのだろう。

「兎に角、皆集まっているようだから行こうか」
アルフィー殿下に促されながら前方へと足を進める。

訓練場に入ると第一騎士団と第三騎士団に別れており、白地に青の縁取りのある制服を着た人達が第一騎士団だ。
因みに白地に金の縁取りが近衛騎士団で、白地に赤の縁取りが第二騎士団。
第三騎士団は青にオレンジの縁取りなので、今は見分けが楽だ。

何でも、竜に乗った時に人の位置が分かるように白地の制服らしい。

「白龍もいるのに?」
の疑問には「白龍なんて従えられる人間そうそういないよ」と言われたのだ。

いつも見慣れていたから、その事実に驚きだ。

「アルフィー」
第一騎士団の先頭で私達を見つけた団長が私達に手招きしている。

滅茶苦茶目立っているんだけど、致し方ない。

今更だ。

「まずは最初に自己紹介だ」 

団長の隣まで行くと他の騎士の方へと回れ右をされた。

トンと肩に手を乗せられ。
「ルーク・ゼファだ。今日から第一騎士団に入る。ジルベルトの弟だと言って特別扱いはしないように」
と自己紹介をしてくれる。
けど、殿下……サラッと特別扱いされるようなを言ったよね。

「ルーク・ゼファです。本日より第一騎士団所属となりました。若輩ものですが先輩方のご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します」


そう言って一礼する。

頭にチクチクと刺さる眼差しは決して友好的なものばかりではない。

「ルーク。制服の支給が出たからジルベルトと事務所まで取りに行ってくれ」 

挨拶が終わると団長の言葉に頷く。

勿論アルフィー殿下は何も言わずに私から視線を反らした。

何せいくら王妃様からお目付け役
言い使ったからといってもジルベルト様は形式的には私の兄。
つまり、私の面倒は兄弟にまかせられたのだから。

「では行きましょうかルーク」

「はい。ジル兄上」

故に、涼しい顔でジルベルト様と連れ立って訓練場を後にする。

聖なる乙女集団からスゴイ目で見られているけど、理由は知りたくもない。

きっと、美形のジルベルト様が訓練場を去るのが許せないのだろう。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?

112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。 目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。 助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

(完結)私の夫は死にました(全3話)

青空一夏
恋愛
夫が新しく始める事業の資金を借りに出かけた直後に行方不明となり、市井の治安が悪い裏通りで夫が乗っていた馬車が発見される。おびただしい血痕があり、盗賊に襲われたのだろうと判断された。1年後に失踪宣告がなされ死んだものと見なされたが、多数の債権者が押し寄せる。 私は莫大な借金を背負い、給料が高いガラス工房の仕事についた。それでも返し切れず夜中は定食屋で調理補助の仕事まで始める。半年後過労で倒れた私に従兄弟が手を差し伸べてくれた。 ところがある日、夫とそっくりな男を見かけてしまい・・・・・・ R15ざまぁ。因果応報。ゆるふわ設定ご都合主義です。全3話。お話しの長さに偏りがあるかもしれません。

(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏
ファンタジー
 婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。  私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。  ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、 「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」  と、言い出した。  さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。  怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?  さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定) ※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です) ※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。 ※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

異世界で生き残る方法は?

ブラックベリィ
ファンタジー
第11回ファンタジー大賞が9月30日で終わりました。 投票してくれた方々、ありがとうございました。 200人乗りの飛行機で、俺達は異世界に突入してしまった。 ただし、直前にツアー客が団体様でキャンセルしたんで、乗客乗務員合わせて30名弱の終わらない異世界旅行の始まり………。 いや、これが永遠(天寿を全うするまで?)のサバイバルの始まり? ちょっと暑さにやられて、恋愛モノを書くだけの余裕がないので………でも、何か書きたい。 と、いうコトで、ご都合主義満載の無茶苦茶ファンタジーです。 ところどころ迷走すると思いますが、ご容赦下さい。

処理中です...