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9私竜臭いですか?
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王妃様が去った後、現在近衛騎士団長とアルフィー殿下と私の三人が執務室に残っていた。
他の騎士達は王妃様をお部屋まで護衛する為に同行している。
「初めまして、近衛騎士団長をしているハイン・リトーだ」
ハイン騎士団長はそう言うと立ち上がり私に手を差し出した。
「ルーク・ゼファです。ご無理なお願い申し訳ございません。宜しくお願い致します」
そう言ってハイン騎士団長の手を取る。
一瞬ハイン騎士団長の顔が険しくなったが、アルフィーの方を見ると深いため息を吐いた。
「まぁ、ベスの考えだからなぁ。お前も大変だなぁ」
ハイン騎士団長は困ったような顔をしながらも嬉しそうに笑い、私の頭をガシガシと力強く撫でた。
一瞬カツラが取れるとも思ったが、接着の魔法を使っているから大丈夫だろう。
それと、ハイン騎士団長と王妃様は本当に仲の良い幼なじみだったのだと再度認識する。
「さて、本来なら新人見習いの三ヶ月は午前を基礎体力作りに当てているのだが、生憎新人騎士の入団時期は2ヶ月後になっている。募集の用紙も本来は受付は来月からだったのだが……」
うっわ~。
それって時期が違うって事だよね。
じゃあ、私は2ヶ月後の採用でそのあいだ三食の食事も禄もなしって事?
「まぁ、そんな顔をするな。何が言いたいかと言うとな。基礎体力作りは自分で頑張って貰って、普段はアルフィー殿下と同じ第一騎士団で活動して貰いたいんだ」
ハイン騎士団長の申し出にアルフィー殿下は険しい顔になる。
「ハイン殿それはあまりにも……今現在、私は竜に乗る練習に入っているんですよ」
瞬間アルフィー殿下が抗議した。
「本来の新人の騎士は入団後3ヶ月は午前を基礎体力作り、午後を騎士団や貴族についての座学やマナー。その後、第一騎士団は竜と交流をしながら竜の匂いを馴染ませて、やっと竜を手懐けられると言うのに」
うん。
確かにそれは大事だよね。
基本的に生き物はその人物の匂いで自分達の味方か敵かを判断する。
竜に乗るなら竜の世話をさせて体に竜の匂いを染み込ませる必要がある。
何故なら仲間の匂いを敵と認識する事はまずないからだ。
それが王道。
「まぁ、そうだが。多分ルークは竜に乗った事があると思うぞ」
ハイン騎士団長は得意気にそう断言する。
「「えっ」」
アルフィー殿下と私の声がハモる。
何で分かったのか?
そう思っていると、アルフィー殿下が私の方をジッと見た。
勿論、森を駈けて獲物を刈るのに竜に騎乗するのは日常茶飯事だったけど……。
本当に何で分かったんだろう?
「その者の手に触れれば判る。長く竜に触れた者の手には独特の匂いが着くからな」
えええっと、つまり私の手が竜臭いと?
一応令嬢なのにそれってあんまりじゃない。
だって、私の愛竜のグーちゃんとはもう半月は遇っていないんだよ。
それに、その間だってちゃんと入浴したし、体だって綺麗にしていたのに……それなのに「お前の手は竜臭いよ」と言われたも同然だ。
これがもし綺麗好きな師匠に私が実はバッチイって知られたら、地獄の説教コース確定だよ。
思わず遠い目になりながら途方に暮れていると
「そうなのか?」
と、アルフィー殿下が信じられないと言うように私を見る。
これは、イエスとノーどっちが正しいのだろうか?
第一騎士団に入る男としてはイエスなのか。
令嬢としての矜持の為にもノーと言うべきなのか。
「因みに、第一騎士団は近衛騎士団の次にエリート集団だから見習い期間でも禄が25万リンになる。その後はその者の才能次第だが」
ハイン騎士団長のそのセリフで私の理性の針は思いっきりお金の方へと振り切っていた。
「はい。私竜臭いです。やります。やらせて下さい」
そして、その勢いのまま思いっきり両手でハイン騎士団長の手を取っていた。
そう。
今の私は金に滅茶苦茶弱い。
畜生。
全て貧乏が悪いんだ。
だってさぁ、夜会だっけ?
一回10万リンとか?
晩餐会だっけ!
一回5万リンとか?
妾の年間スケジュール見ると金がたんねぇんだよなぁ。
それに、妾としての根回しと言う貴族の付き合いにもきっと金がかかるだろうしなぁ。
一応人質ライフは穏便に過ごすように師匠から言われている。
下手な噂がもし師匠のお耳に入ってしまったら……。
そんな訳で波風は立てたくない訳だよ。
ついでに三年間で稼げるだけ小遣い稼ぎをしておけば、領地に帰ってからも色々使えるだろうし。
だってさぁ、婿貰うのって嫁貰うより金が掛かるって言うじゃん。
私、独り娘だし。
ついでに、強そうな婿候補をここで探せば一石二鳥。
何せ、我が領地の半分以上を占める魔の森の魔獣は結構強いからさぁ。
死なないような男を見つけなきゃだし、何より師匠のお眼鏡に叶う人がいるかも分からないし。
そうだ。
兎に角だ。
死なないような男友達を作ろう。
優秀な人材ならスカウトするのも有りだ。
大分目的は違うけど、利用出来る物は全て利用しなくちゃ。
他の騎士達は王妃様をお部屋まで護衛する為に同行している。
「初めまして、近衛騎士団長をしているハイン・リトーだ」
ハイン騎士団長はそう言うと立ち上がり私に手を差し出した。
「ルーク・ゼファです。ご無理なお願い申し訳ございません。宜しくお願い致します」
そう言ってハイン騎士団長の手を取る。
一瞬ハイン騎士団長の顔が険しくなったが、アルフィーの方を見ると深いため息を吐いた。
「まぁ、ベスの考えだからなぁ。お前も大変だなぁ」
ハイン騎士団長は困ったような顔をしながらも嬉しそうに笑い、私の頭をガシガシと力強く撫でた。
一瞬カツラが取れるとも思ったが、接着の魔法を使っているから大丈夫だろう。
それと、ハイン騎士団長と王妃様は本当に仲の良い幼なじみだったのだと再度認識する。
「さて、本来なら新人見習いの三ヶ月は午前を基礎体力作りに当てているのだが、生憎新人騎士の入団時期は2ヶ月後になっている。募集の用紙も本来は受付は来月からだったのだが……」
うっわ~。
それって時期が違うって事だよね。
じゃあ、私は2ヶ月後の採用でそのあいだ三食の食事も禄もなしって事?
「まぁ、そんな顔をするな。何が言いたいかと言うとな。基礎体力作りは自分で頑張って貰って、普段はアルフィー殿下と同じ第一騎士団で活動して貰いたいんだ」
ハイン騎士団長の申し出にアルフィー殿下は険しい顔になる。
「ハイン殿それはあまりにも……今現在、私は竜に乗る練習に入っているんですよ」
瞬間アルフィー殿下が抗議した。
「本来の新人の騎士は入団後3ヶ月は午前を基礎体力作り、午後を騎士団や貴族についての座学やマナー。その後、第一騎士団は竜と交流をしながら竜の匂いを馴染ませて、やっと竜を手懐けられると言うのに」
うん。
確かにそれは大事だよね。
基本的に生き物はその人物の匂いで自分達の味方か敵かを判断する。
竜に乗るなら竜の世話をさせて体に竜の匂いを染み込ませる必要がある。
何故なら仲間の匂いを敵と認識する事はまずないからだ。
それが王道。
「まぁ、そうだが。多分ルークは竜に乗った事があると思うぞ」
ハイン騎士団長は得意気にそう断言する。
「「えっ」」
アルフィー殿下と私の声がハモる。
何で分かったのか?
そう思っていると、アルフィー殿下が私の方をジッと見た。
勿論、森を駈けて獲物を刈るのに竜に騎乗するのは日常茶飯事だったけど……。
本当に何で分かったんだろう?
「その者の手に触れれば判る。長く竜に触れた者の手には独特の匂いが着くからな」
えええっと、つまり私の手が竜臭いと?
一応令嬢なのにそれってあんまりじゃない。
だって、私の愛竜のグーちゃんとはもう半月は遇っていないんだよ。
それに、その間だってちゃんと入浴したし、体だって綺麗にしていたのに……それなのに「お前の手は竜臭いよ」と言われたも同然だ。
これがもし綺麗好きな師匠に私が実はバッチイって知られたら、地獄の説教コース確定だよ。
思わず遠い目になりながら途方に暮れていると
「そうなのか?」
と、アルフィー殿下が信じられないと言うように私を見る。
これは、イエスとノーどっちが正しいのだろうか?
第一騎士団に入る男としてはイエスなのか。
令嬢としての矜持の為にもノーと言うべきなのか。
「因みに、第一騎士団は近衛騎士団の次にエリート集団だから見習い期間でも禄が25万リンになる。その後はその者の才能次第だが」
ハイン騎士団長のそのセリフで私の理性の針は思いっきりお金の方へと振り切っていた。
「はい。私竜臭いです。やります。やらせて下さい」
そして、その勢いのまま思いっきり両手でハイン騎士団長の手を取っていた。
そう。
今の私は金に滅茶苦茶弱い。
畜生。
全て貧乏が悪いんだ。
だってさぁ、夜会だっけ?
一回10万リンとか?
晩餐会だっけ!
一回5万リンとか?
妾の年間スケジュール見ると金がたんねぇんだよなぁ。
それに、妾としての根回しと言う貴族の付き合いにもきっと金がかかるだろうしなぁ。
一応人質ライフは穏便に過ごすように師匠から言われている。
下手な噂がもし師匠のお耳に入ってしまったら……。
そんな訳で波風は立てたくない訳だよ。
ついでに三年間で稼げるだけ小遣い稼ぎをしておけば、領地に帰ってからも色々使えるだろうし。
だってさぁ、婿貰うのって嫁貰うより金が掛かるって言うじゃん。
私、独り娘だし。
ついでに、強そうな婿候補をここで探せば一石二鳥。
何せ、我が領地の半分以上を占める魔の森の魔獣は結構強いからさぁ。
死なないような男を見つけなきゃだし、何より師匠のお眼鏡に叶う人がいるかも分からないし。
そうだ。
兎に角だ。
死なないような男友達を作ろう。
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