10 / 28
9私竜臭いですか?
しおりを挟む
王妃様が去った後、現在近衛騎士団長とアルフィー殿下と私の三人が執務室に残っていた。
他の騎士達は王妃様をお部屋まで護衛する為に同行している。
「初めまして、近衛騎士団長をしているハイン・リトーだ」
ハイン騎士団長はそう言うと立ち上がり私に手を差し出した。
「ルーク・ゼファです。ご無理なお願い申し訳ございません。宜しくお願い致します」
そう言ってハイン騎士団長の手を取る。
一瞬ハイン騎士団長の顔が険しくなったが、アルフィーの方を見ると深いため息を吐いた。
「まぁ、ベスの考えだからなぁ。お前も大変だなぁ」
ハイン騎士団長は困ったような顔をしながらも嬉しそうに笑い、私の頭をガシガシと力強く撫でた。
一瞬カツラが取れるとも思ったが、接着の魔法を使っているから大丈夫だろう。
それと、ハイン騎士団長と王妃様は本当に仲の良い幼なじみだったのだと再度認識する。
「さて、本来なら新人見習いの三ヶ月は午前を基礎体力作りに当てているのだが、生憎新人騎士の入団時期は2ヶ月後になっている。募集の用紙も本来は受付は来月からだったのだが……」
うっわ~。
それって時期が違うって事だよね。
じゃあ、私は2ヶ月後の採用でそのあいだ三食の食事も禄もなしって事?
「まぁ、そんな顔をするな。何が言いたいかと言うとな。基礎体力作りは自分で頑張って貰って、普段はアルフィー殿下と同じ第一騎士団で活動して貰いたいんだ」
ハイン騎士団長の申し出にアルフィー殿下は険しい顔になる。
「ハイン殿それはあまりにも……今現在、私は竜に乗る練習に入っているんですよ」
瞬間アルフィー殿下が抗議した。
「本来の新人の騎士は入団後3ヶ月は午前を基礎体力作り、午後を騎士団や貴族についての座学やマナー。その後、第一騎士団は竜と交流をしながら竜の匂いを馴染ませて、やっと竜を手懐けられると言うのに」
うん。
確かにそれは大事だよね。
基本的に生き物はその人物の匂いで自分達の味方か敵かを判断する。
竜に乗るなら竜の世話をさせて体に竜の匂いを染み込ませる必要がある。
何故なら仲間の匂いを敵と認識する事はまずないからだ。
それが王道。
「まぁ、そうだが。多分ルークは竜に乗った事があると思うぞ」
ハイン騎士団長は得意気にそう断言する。
「「えっ」」
アルフィー殿下と私の声がハモる。
何で分かったのか?
そう思っていると、アルフィー殿下が私の方をジッと見た。
勿論、森を駈けて獲物を刈るのに竜に騎乗するのは日常茶飯事だったけど……。
本当に何で分かったんだろう?
「その者の手に触れれば判る。長く竜に触れた者の手には独特の匂いが着くからな」
えええっと、つまり私の手が竜臭いと?
一応令嬢なのにそれってあんまりじゃない。
だって、私の愛竜のグーちゃんとはもう半月は遇っていないんだよ。
それに、その間だってちゃんと入浴したし、体だって綺麗にしていたのに……それなのに「お前の手は竜臭いよ」と言われたも同然だ。
これがもし綺麗好きな師匠に私が実はバッチイって知られたら、地獄の説教コース確定だよ。
思わず遠い目になりながら途方に暮れていると
「そうなのか?」
と、アルフィー殿下が信じられないと言うように私を見る。
これは、イエスとノーどっちが正しいのだろうか?
第一騎士団に入る男としてはイエスなのか。
令嬢としての矜持の為にもノーと言うべきなのか。
「因みに、第一騎士団は近衛騎士団の次にエリート集団だから見習い期間でも禄が25万リンになる。その後はその者の才能次第だが」
ハイン騎士団長のそのセリフで私の理性の針は思いっきりお金の方へと振り切っていた。
「はい。私竜臭いです。やります。やらせて下さい」
そして、その勢いのまま思いっきり両手でハイン騎士団長の手を取っていた。
そう。
今の私は金に滅茶苦茶弱い。
畜生。
全て貧乏が悪いんだ。
だってさぁ、夜会だっけ?
一回10万リンとか?
晩餐会だっけ!
一回5万リンとか?
妾の年間スケジュール見ると金がたんねぇんだよなぁ。
それに、妾としての根回しと言う貴族の付き合いにもきっと金がかかるだろうしなぁ。
一応人質ライフは穏便に過ごすように師匠から言われている。
下手な噂がもし師匠のお耳に入ってしまったら……。
そんな訳で波風は立てたくない訳だよ。
ついでに三年間で稼げるだけ小遣い稼ぎをしておけば、領地に帰ってからも色々使えるだろうし。
だってさぁ、婿貰うのって嫁貰うより金が掛かるって言うじゃん。
私、独り娘だし。
ついでに、強そうな婿候補をここで探せば一石二鳥。
何せ、我が領地の半分以上を占める魔の森の魔獣は結構強いからさぁ。
死なないような男を見つけなきゃだし、何より師匠のお眼鏡に叶う人がいるかも分からないし。
そうだ。
兎に角だ。
死なないような男友達を作ろう。
優秀な人材ならスカウトするのも有りだ。
大分目的は違うけど、利用出来る物は全て利用しなくちゃ。
他の騎士達は王妃様をお部屋まで護衛する為に同行している。
「初めまして、近衛騎士団長をしているハイン・リトーだ」
ハイン騎士団長はそう言うと立ち上がり私に手を差し出した。
「ルーク・ゼファです。ご無理なお願い申し訳ございません。宜しくお願い致します」
そう言ってハイン騎士団長の手を取る。
一瞬ハイン騎士団長の顔が険しくなったが、アルフィーの方を見ると深いため息を吐いた。
「まぁ、ベスの考えだからなぁ。お前も大変だなぁ」
ハイン騎士団長は困ったような顔をしながらも嬉しそうに笑い、私の頭をガシガシと力強く撫でた。
一瞬カツラが取れるとも思ったが、接着の魔法を使っているから大丈夫だろう。
それと、ハイン騎士団長と王妃様は本当に仲の良い幼なじみだったのだと再度認識する。
「さて、本来なら新人見習いの三ヶ月は午前を基礎体力作りに当てているのだが、生憎新人騎士の入団時期は2ヶ月後になっている。募集の用紙も本来は受付は来月からだったのだが……」
うっわ~。
それって時期が違うって事だよね。
じゃあ、私は2ヶ月後の採用でそのあいだ三食の食事も禄もなしって事?
「まぁ、そんな顔をするな。何が言いたいかと言うとな。基礎体力作りは自分で頑張って貰って、普段はアルフィー殿下と同じ第一騎士団で活動して貰いたいんだ」
ハイン騎士団長の申し出にアルフィー殿下は険しい顔になる。
「ハイン殿それはあまりにも……今現在、私は竜に乗る練習に入っているんですよ」
瞬間アルフィー殿下が抗議した。
「本来の新人の騎士は入団後3ヶ月は午前を基礎体力作り、午後を騎士団や貴族についての座学やマナー。その後、第一騎士団は竜と交流をしながら竜の匂いを馴染ませて、やっと竜を手懐けられると言うのに」
うん。
確かにそれは大事だよね。
基本的に生き物はその人物の匂いで自分達の味方か敵かを判断する。
竜に乗るなら竜の世話をさせて体に竜の匂いを染み込ませる必要がある。
何故なら仲間の匂いを敵と認識する事はまずないからだ。
それが王道。
「まぁ、そうだが。多分ルークは竜に乗った事があると思うぞ」
ハイン騎士団長は得意気にそう断言する。
「「えっ」」
アルフィー殿下と私の声がハモる。
何で分かったのか?
そう思っていると、アルフィー殿下が私の方をジッと見た。
勿論、森を駈けて獲物を刈るのに竜に騎乗するのは日常茶飯事だったけど……。
本当に何で分かったんだろう?
「その者の手に触れれば判る。長く竜に触れた者の手には独特の匂いが着くからな」
えええっと、つまり私の手が竜臭いと?
一応令嬢なのにそれってあんまりじゃない。
だって、私の愛竜のグーちゃんとはもう半月は遇っていないんだよ。
それに、その間だってちゃんと入浴したし、体だって綺麗にしていたのに……それなのに「お前の手は竜臭いよ」と言われたも同然だ。
これがもし綺麗好きな師匠に私が実はバッチイって知られたら、地獄の説教コース確定だよ。
思わず遠い目になりながら途方に暮れていると
「そうなのか?」
と、アルフィー殿下が信じられないと言うように私を見る。
これは、イエスとノーどっちが正しいのだろうか?
第一騎士団に入る男としてはイエスなのか。
令嬢としての矜持の為にもノーと言うべきなのか。
「因みに、第一騎士団は近衛騎士団の次にエリート集団だから見習い期間でも禄が25万リンになる。その後はその者の才能次第だが」
ハイン騎士団長のそのセリフで私の理性の針は思いっきりお金の方へと振り切っていた。
「はい。私竜臭いです。やります。やらせて下さい」
そして、その勢いのまま思いっきり両手でハイン騎士団長の手を取っていた。
そう。
今の私は金に滅茶苦茶弱い。
畜生。
全て貧乏が悪いんだ。
だってさぁ、夜会だっけ?
一回10万リンとか?
晩餐会だっけ!
一回5万リンとか?
妾の年間スケジュール見ると金がたんねぇんだよなぁ。
それに、妾としての根回しと言う貴族の付き合いにもきっと金がかかるだろうしなぁ。
一応人質ライフは穏便に過ごすように師匠から言われている。
下手な噂がもし師匠のお耳に入ってしまったら……。
そんな訳で波風は立てたくない訳だよ。
ついでに三年間で稼げるだけ小遣い稼ぎをしておけば、領地に帰ってからも色々使えるだろうし。
だってさぁ、婿貰うのって嫁貰うより金が掛かるって言うじゃん。
私、独り娘だし。
ついでに、強そうな婿候補をここで探せば一石二鳥。
何せ、我が領地の半分以上を占める魔の森の魔獣は結構強いからさぁ。
死なないような男を見つけなきゃだし、何より師匠のお眼鏡に叶う人がいるかも分からないし。
そうだ。
兎に角だ。
死なないような男友達を作ろう。
優秀な人材ならスカウトするのも有りだ。
大分目的は違うけど、利用出来る物は全て利用しなくちゃ。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
御者のお仕事。
月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。
十三あった国のうち四つが地図より消えた。
大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。
狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、
問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。
それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。
これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。
和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる