ある公爵令嬢のお見合い事情

麻生空

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クロヴィスサイド2

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食事はあっという間にテーブルへと並べられた。

「すみません。先程も話した様に今大変たて込んでおりまして……食事は全て並べさせて頂きますね」

そう言って並べられた食事は大変有り難かった。

一品一品出されるフルコースでは朝食さえ抜いて来た自分としては腹が持たない。
はっきり言えば一気にお腹に納めたい程だ。

感情に任せて朝食も食べずに出て来た事を、少し後悔していたのだ。
あぁ、腹減った~。

「いえ、逆に有り難いです」

「朝食もまだでしょうからどうぞ召し上がって下さい」

そう言って微笑む彼女。

有り難くパンを取り食事を始める。

あれ?しかし、何故朝食を食べていないと分かったのか?

「今日は夜勤明けと伺っておりましたが、この時間ですと直ぐにこちらへ向かわれたのかと。違いましたか?」

「いえ。その通りです」

声に出ていたか?

それに、今年21歳になると聞いていたが、何処か幼い印象の彼女。
けど、頭は良いようだ。

「お肉料理でしたけど、お魚の方がお好きでしたでしょうか?」

なんたる気遣いだろうか?
自分が勝手に朝食抜きで来たのがいけなかったのに。

「いえ、恥ずかしながら魚料理よりは肉料理の方が好みです。何せ、見ての通り軍人ですから体を動かすのが仕事、やはりスタミナが着く料理は好みますね」

食事の合間も差し障りのない会話で場の空気も和む。

「一応ワインをお出ししましたが、お酒はお好きですか?」

「嗜む程度には……と言いたい所ですが、結構飲みますね。男だけの職場ですし、遠征などもあります。やはりそうなると酒盛りも日常茶飯事ですから」

「でも、そんな不摂生をされているようには見えませんし、何より身体も随分引き締まっておられるように思います」

「フフフ。ありがとうございます。一応腹筋は六つに割れていますよ」

明け透けなおだてでもない彼女の言葉に何時もより饒舌になっていたのは否めない。

それに、何故か彼女との会話は楽しい。

食事も進み、腹も満たされ機嫌も良い。

故に、先程の疑問が頭を過る。

「先程のエントランスに居たのは、私の同僚のジャックですよね。彼も貴女と見合いを?」

別に、誰も見合いしたからと言って何?と言う訳ではないけど。
「ええ、そんなんです。実は両親から21歳になる前には結婚しろと言われまして……せめて婚約者と申したのですが怒られてしまい、急いで何人かの方と先日からお見合いをしておりますの」

確かに、行き遅れの21歳になれば、両親がそう言うのは致し方ない。

「因みに、私は何人目でしょうか?」

単に気になった。

「不愉快にならないで下さいましね」

そう言うと彼女はステーキ肉を切り分けながら「五人目です」と困ったように呟いた。

すると、ジャックは四人目と言う事になる。

「1日一人の方とお話していたのですが、昨日とうとう父が怒りまして……本日午前と午後の二回のお見合いをする事に」

「何故と伺っても?」

「三人目の方まで、お会いして10分と話さずお帰り願ったので……」

「……」

本当にこの子は結婚したいのだろうか?
それな、10分で帰って貰うって……それは確かに怒られるな。うん。

「ジャックも何やら怒っていた様子ですが、あいつにしては珍しいと思って……」
一見おとなしそうな彼女が何を言ったのだろうか?

そう思っていたら

「あの、クロヴィス様」

そう言って瞳を潤ませた彼女は
「センズリは1日何回しますか?」と聞いて来たのだ。

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