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「こんな社畜な会社。こっちから辞めてやるわよ」
そう言って憤怒の如く廊下を歩くのは、今年35になる女性。
この会社で女にしては出世頭と言われている近藤伶(こんどうれい)である。
何故彼女がこんなに怒っているかと言うと、それは一時間程前に話は戻る。
50階の休憩室でコーヒーを飲みながらパソコンを打っていると、背後の方から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「とうとうあの高慢ちきな女もお仕舞いだな」
その声にビビッと来る。
あれは私より8歳も年上なのに、私と同じ頃に室長になった男の声だ。
「藤堂さん。あまりここではそう言う事を言うのは……」
困ったように言うのは60階に仕事場を持つ高橋室長だ。
因みに藤堂呼ばれた男はここより下の階になる。
つまり何が言いたいかと言うと階が上の方が出世している事になる。
「あの女。俺より年下の癖に俺よりも階が上なんだぞ。その近藤がとうとう辞職の危機と聞けば嬉しいじゃないか。まぁ身から出た錆だ。それで自滅するのも一興」
そう言って嬉しそうに「ガハハハハ」と笑う藤堂に、高橋室長は思いっきり口止めをする。
「不味いですって。兎に角自販機で軽食を買ってから移動しましょう。私も時間がないので」
そう言って急ぎサンドイッチ等を売っている自販機へと足を向ける。
今の時刻は午後の2時になろうとしている所。
多分午前中の会議が長引いたのだろう。
今日の高橋室長の予定表を何気に閲覧してみると2時30分から5階会議室で他社との打ち合わせとある。
移動の時間も考えると本当に時間がないとおもう。
それに対して藤堂室長の予定は何もない。
多分話がしたくて会議室の近くで張っていたのだろう。
しかし、聞き捨てならないセリフがあった。
「藤堂室長」
低い声でサンドイッチを買い立ち去ろうとする男の背中に声を掛ける。
如何にも面倒臭そうに振り替える藤堂に
「私が自滅って何の事でしょうか?」
薄ら笑いを張り付けて二人を見据える。
二人の男はそれぞれ真逆の反応を示す。
高橋室長は頭を抱え、藤堂は楽しそうに顔を歪めた。
「良いことを教えてやろうか?」
まるで買って貰ったばかりのオモチャを自慢する子供のような笑みを見せる藤堂。
「先週から臨時でお前の所に入っている研修生なぁ。あれ監査室の調査員だぜ。とうとうお前も最後だな。免職されない内に辞職願いでも書くんだな」
藤堂のその言葉に高橋室長は更に頭を抱えた。
あの、私より5歳年下の男が監査室のスパイ?
質問がいちいち面倒臭いと思っていたら……そう言う事?
ちょっと格好良いからって……。
そう思ったら何もかもが嫌になる。
もともと社長とは同郷のよしみで大学の頃から良くして貰っていた。
この会社の立ち上げの時にだって昼夜を問わず尽力したのに。
まぁ、その後実家の都合で一端退社したけど、その後にもう一度入社した時だってあんなに喜んだのは嘘だったの?
そう思うと腸煮えくり返る思いがする。
「友達だと思っていたのは私だけなんだ。やっぱり結婚すると女の友情なんて無くなるって言うけど本当のようね」
プンスカと怒りに任せて私事近藤伶はあの男を問い詰めるべくエレベーターの65階のボタンを押した。
そう言って憤怒の如く廊下を歩くのは、今年35になる女性。
この会社で女にしては出世頭と言われている近藤伶(こんどうれい)である。
何故彼女がこんなに怒っているかと言うと、それは一時間程前に話は戻る。
50階の休憩室でコーヒーを飲みながらパソコンを打っていると、背後の方から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「とうとうあの高慢ちきな女もお仕舞いだな」
その声にビビッと来る。
あれは私より8歳も年上なのに、私と同じ頃に室長になった男の声だ。
「藤堂さん。あまりここではそう言う事を言うのは……」
困ったように言うのは60階に仕事場を持つ高橋室長だ。
因みに藤堂呼ばれた男はここより下の階になる。
つまり何が言いたいかと言うと階が上の方が出世している事になる。
「あの女。俺より年下の癖に俺よりも階が上なんだぞ。その近藤がとうとう辞職の危機と聞けば嬉しいじゃないか。まぁ身から出た錆だ。それで自滅するのも一興」
そう言って嬉しそうに「ガハハハハ」と笑う藤堂に、高橋室長は思いっきり口止めをする。
「不味いですって。兎に角自販機で軽食を買ってから移動しましょう。私も時間がないので」
そう言って急ぎサンドイッチ等を売っている自販機へと足を向ける。
今の時刻は午後の2時になろうとしている所。
多分午前中の会議が長引いたのだろう。
今日の高橋室長の予定表を何気に閲覧してみると2時30分から5階会議室で他社との打ち合わせとある。
移動の時間も考えると本当に時間がないとおもう。
それに対して藤堂室長の予定は何もない。
多分話がしたくて会議室の近くで張っていたのだろう。
しかし、聞き捨てならないセリフがあった。
「藤堂室長」
低い声でサンドイッチを買い立ち去ろうとする男の背中に声を掛ける。
如何にも面倒臭そうに振り替える藤堂に
「私が自滅って何の事でしょうか?」
薄ら笑いを張り付けて二人を見据える。
二人の男はそれぞれ真逆の反応を示す。
高橋室長は頭を抱え、藤堂は楽しそうに顔を歪めた。
「良いことを教えてやろうか?」
まるで買って貰ったばかりのオモチャを自慢する子供のような笑みを見せる藤堂。
「先週から臨時でお前の所に入っている研修生なぁ。あれ監査室の調査員だぜ。とうとうお前も最後だな。免職されない内に辞職願いでも書くんだな」
藤堂のその言葉に高橋室長は更に頭を抱えた。
あの、私より5歳年下の男が監査室のスパイ?
質問がいちいち面倒臭いと思っていたら……そう言う事?
ちょっと格好良いからって……。
そう思ったら何もかもが嫌になる。
もともと社長とは同郷のよしみで大学の頃から良くして貰っていた。
この会社の立ち上げの時にだって昼夜を問わず尽力したのに。
まぁ、その後実家の都合で一端退社したけど、その後にもう一度入社した時だってあんなに喜んだのは嘘だったの?
そう思うと腸煮えくり返る思いがする。
「友達だと思っていたのは私だけなんだ。やっぱり結婚すると女の友情なんて無くなるって言うけど本当のようね」
プンスカと怒りに任せて私事近藤伶はあの男を問い詰めるべくエレベーターの65階のボタンを押した。
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