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飴と鞭
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朝も早よから牧師様の奥様を捕まえて商売の駆引き講座を開いていた。
そんな私達のやり取りをアルが楽しそうに見ている。
「つまり、飴と鞭………損させたと見せて得を取れ。とても勉強になりますわ」
牧師様の奥様ことイザベラは意外と飲み込みの良い方で、2時間程お茶を飲みながら私の講義した内容を良く理解してくれた。
これで蝋をお客にけちったりする事はもうないだろうし、トイレットペーパーも制限しないだろう。(それはここじゃないだろうー)
私は清々しい達成感にひたりながら残ったお茶を飲み干した。
「今日のお話は大変勉強になりましたわ。早速実施してみようと思いますの」
イザベラはそう言うと私を見つめて妖しく笑む。
「ジュリアお嬢様は来月デビュタントでしたわよね」
イザベラのその質問に、確か入学して直ぐにあった夜会で、ヒロインと王子のイベントあったなぁ、確かあれが宮殿で開かれたデビュタントの為の舞踏会………と何処か他人事のように思い出した。
あれが確かヒロインのデビュタントで、攻略対象全員と会う事の出来るイベント。
「ええ。確かに」
確か、ゲームでは悪役のおデブ令嬢を相手にもしてくれない王子のせいで、誰とも踊らなかったんだよね。
確か派閥内の令息が義務のようにジュリアに声を掛けたのを自分の良いように勝手に勘違いして「私のような高貴な者を相手に出来るのは王子のみよ。オホホホホ」とかって馬鹿言って断ったんだよ。
でもさ、確か悪役令嬢のジュリアってダンスの練習も真面目にやってないから、どちらにしろ踊れないよね。
こりゃ、うけるわ。
踊れないくせに王子と踊れると思っている所が。
それに、エスコートしてくれた兄はジュリアのダンスの下手さを知っている為にファーストダンスすら踊ってくれなかったって言うおまけ付き。
何せダンスを失敗すると、エスコートした男性のリードにケチがつくからだ。
って、今はその悪役令嬢って私のことか………。
「では、小さいですが我が教会からコサージュを贈りますわ」
私が百面相している脇でイザベラはそう言うと、棚から木箱を取ると蓋を開けて幾つかの飾りを取り出す。
「特別な特産品もない片田舎ですので、こんな内職のような物ばかりを作ってはチャリティーしていましたの。是非夜会で宣伝して頂きたいですわ」
イザベラがそう言うとアルが隣から声をかける。
「結構綺麗だな。素人にしては良く出来ているんじゃないかな。ふむ。じゃあ、私にもジュリアのコサージュと対になる物をお願い出来るかな?」
アルはそう言うと私を見つめて来る。
何でしょうか?その熱視線は………
「婚約者にはエスコートが必要だろう?デビュタントは白が基本だからね。コサージュをお揃いにして婚約者アピールをしておこうか。丁度このコサージュは私とジュリアの色が入っているから尚更良いね。それと婚約者なんだからついでにファーストダンスから続けて2曲は踊って貰うからね」
そう言ってアルはウインクして来るけど。
「えっ?私踊らなきゃいけないの?踊れないよ」
正論をかましてみれば一瞬で部屋の空気が凍る。
「「はぁ~?」」
そして、冷たい眼差しを送るイザベラと、この上なく妖しい笑みを称えるアル。
私のとんでもない発言のせいで、私は入学までの日々をアルとのダンスにつぎ込まれる事になったのだ。
それこそ飴と鞭で……
トホホ(;´д`)
そんな私達のやり取りをアルが楽しそうに見ている。
「つまり、飴と鞭………損させたと見せて得を取れ。とても勉強になりますわ」
牧師様の奥様ことイザベラは意外と飲み込みの良い方で、2時間程お茶を飲みながら私の講義した内容を良く理解してくれた。
これで蝋をお客にけちったりする事はもうないだろうし、トイレットペーパーも制限しないだろう。(それはここじゃないだろうー)
私は清々しい達成感にひたりながら残ったお茶を飲み干した。
「今日のお話は大変勉強になりましたわ。早速実施してみようと思いますの」
イザベラはそう言うと私を見つめて妖しく笑む。
「ジュリアお嬢様は来月デビュタントでしたわよね」
イザベラのその質問に、確か入学して直ぐにあった夜会で、ヒロインと王子のイベントあったなぁ、確かあれが宮殿で開かれたデビュタントの為の舞踏会………と何処か他人事のように思い出した。
あれが確かヒロインのデビュタントで、攻略対象全員と会う事の出来るイベント。
「ええ。確かに」
確か、ゲームでは悪役のおデブ令嬢を相手にもしてくれない王子のせいで、誰とも踊らなかったんだよね。
確か派閥内の令息が義務のようにジュリアに声を掛けたのを自分の良いように勝手に勘違いして「私のような高貴な者を相手に出来るのは王子のみよ。オホホホホ」とかって馬鹿言って断ったんだよ。
でもさ、確か悪役令嬢のジュリアってダンスの練習も真面目にやってないから、どちらにしろ踊れないよね。
こりゃ、うけるわ。
踊れないくせに王子と踊れると思っている所が。
それに、エスコートしてくれた兄はジュリアのダンスの下手さを知っている為にファーストダンスすら踊ってくれなかったって言うおまけ付き。
何せダンスを失敗すると、エスコートした男性のリードにケチがつくからだ。
って、今はその悪役令嬢って私のことか………。
「では、小さいですが我が教会からコサージュを贈りますわ」
私が百面相している脇でイザベラはそう言うと、棚から木箱を取ると蓋を開けて幾つかの飾りを取り出す。
「特別な特産品もない片田舎ですので、こんな内職のような物ばかりを作ってはチャリティーしていましたの。是非夜会で宣伝して頂きたいですわ」
イザベラがそう言うとアルが隣から声をかける。
「結構綺麗だな。素人にしては良く出来ているんじゃないかな。ふむ。じゃあ、私にもジュリアのコサージュと対になる物をお願い出来るかな?」
アルはそう言うと私を見つめて来る。
何でしょうか?その熱視線は………
「婚約者にはエスコートが必要だろう?デビュタントは白が基本だからね。コサージュをお揃いにして婚約者アピールをしておこうか。丁度このコサージュは私とジュリアの色が入っているから尚更良いね。それと婚約者なんだからついでにファーストダンスから続けて2曲は踊って貰うからね」
そう言ってアルはウインクして来るけど。
「えっ?私踊らなきゃいけないの?踊れないよ」
正論をかましてみれば一瞬で部屋の空気が凍る。
「「はぁ~?」」
そして、冷たい眼差しを送るイザベラと、この上なく妖しい笑みを称えるアル。
私のとんでもない発言のせいで、私は入学までの日々をアルとのダンスにつぎ込まれる事になったのだ。
それこそ飴と鞭で……
トホホ(;´д`)
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