16 / 24
牧師との再開
しおりを挟む
一万回……。
アルの言う、それは……つまり一万回アルとキスをするって事?
それも気持ちのこもったヤツを?
そうしたら1日何回キスしなきゃならないの?
一年で成就するとして10,000÷365=27回余り145回となる。
嘘……寝る時間や食事の時間を考えると一時間に三回はキスしなきゃいけない計算?
だから妙にキス魔なの?
「ねぇ。因みになんだけど今何回位なの?」
「50回かな」
「50回」
それって多い数なんでしょうか?
少ない数なんでしょうか?
既に一万回と言われている数字からしたら少ないのでは……いやいやまてまて。
出会ってまだ一週間やそこらだよ。
前世日本人の私からしたらあり得ない数字だから。
大体キスを一回二回って数えている方も可笑しいよ。
「何度も言うけど事務的なキスじゃ駄目なんだからな。俺を意識して」
そう言ってアルはキスをして来る。
気持ちの通ったと言う事はアルも私の事が好きなのかしら?
そう思うと心臓がドキドキして来る。
本当にノア王子なんてもんじゃない。
こんなに甘々なキャラいたら乙女ゲームファンが騒ぐわ~。
きっとアルの話でネット炎上もあり得るかも。
だから断言出来る。
アルは攻略対象ではないと。
モブでこれってちょっと凄い。
そう思っていると目的地に着いた。
今日の訪問最初にして最終地点。
我が領地の最北端の地。
ここから山越えすると隣国ユルスバル帝国がある。
その領土は我が国の10倍。
軍事にも秀でていて、ここ1000年程は不動の勝率。
故に領土も増える事はあっても減る事はない。
そんな最強の帝国は、何故か王族の男性が婚約者を選ばない事と、なかなか結婚しない事でも有名なのだ。
確か年齢は分からないけど皇子が何人かいたはず。
でも、誰も未だに婚約者も結婚もしていないらしい。
案外、私みたいに何か変な呪いでも掛けられてたりしてね。
ハハハ……笑えない。
「この建築方法は先程までの教会と違うな」
アルが私を口説く以外の感想を述べた。
「100年位前に帝国から流れて来た建築家が設計したらしいですわ」
そう言って馬車を降りる。
降りる時にさり気なく手を差し伸べて来る所なんて、本当に貴族だな……と思う。
二人並んで教会の扉を潜ると吹き抜けの礼拝堂が広がっていた。
「どう?凄いでしょう?私も小さい時にここへ来たのだけど……」
そこまで言ってある事を思い出す。
「そうだわ。私……ここで呪いのネックレスを手に入れたのよ」
そう言って私は礼拝堂の中央へと歩んで行く。
「あそこに壮年の男性が居て、女神様が……」
私は幼い日を思い出す様にそう言うと
「ジュリア様」
礼拝堂の奥から年配の牧師が現れた。
「お久しぶりです」
そう言ってお辞儀をする彼を私は知っている。
「そちらのお方は?」
牧師はアルの方を見るとそう訪ねて来た。
「私の婚約者です」
そう答えるとアル嬉しそうに私の腰を抱く。
「はじめまして。アルと言います」
それだけを言って牧師を見るや苦笑いした。
奥の応接室に通された私はとても複雑な気持ちだった。
彼の……つまり、今の牧師様のネックレスが気に入って権力に物を言わせて取り上げたのだ。
あれが呪いのネックレスだったなんて……。
知らない事とは言え……無知って本当に恐ろしい。
「ジュリア様……誠に申し訳ございません」
牧師はそう言うと深々と頭を下げた。
「呪いネックレスの事を言ってますの?」
「はい」
牧師が尚も頭を下げる。
「あれは私の我が儘でした事。それに、女神様が罰をお与えになっただけ。何も気にする事はありませんわ」
そう言って困った様に微笑む。
だってタイムスリップ出来る訳でもあるまいし、今は兎に角善行を積むのが優先なんですから。
そう思っていると年配の女性がお茶を運んで入室して来る。
女性は入るや私に向かって深々と頭を下げた。
「こちらは?」
シスターではない、普通の装いの女性。
「はい。私の妻です。娘も二人授かりました。本当にジュリア様のお陰です」
そう言って牧師は硬く握手して来る。
まぁ。
呪いの肩代わりしたのだから感謝されても……って、これって善行なのでは?
そう思い胸元を見ると黒い石が4つ程透明になっていた。
グッジョブですわ。
内心ガッツポーズが出てしまう。
「何か困った事はないかしら?教会の運営に協力したいの」
この功いのまま私は神父にそう尋ねると、牧師は首を横に振る。
「住む場所も、仕事も、家族も頂きました。これ以上求めたら女神様のバチがあたってしまいます」
そう言って牧師は達観した笑みを浮かべる。
「そうですか。では当座の資金だけでも受け取って下さい。ここは我が領地でも最北端。冬に備える事もあるでしょう。これはその資金だと」
そう言って金貨を三枚手渡しする。
「食事に困っている者もいるでしょう。私はこういう形でしか協力出来ない事を申し訳なく思っています」
あくまでも善行。
慈善活動をするお嬢様を装う。
まるで偽善活動みたいだ。
って言うか、まるっきりそうなのだろう。
「おお。ジュリア様……なんて慈悲深い。神の御加護が有らん事を」
そう言って何も知らない牧師は十字を切る。
お茶を一通り済ませると私は奥さんと共に教会内を見て回る事にした。
「アルは行かなくて良いの?」
そう問い掛けると
「少し呪いのネックレスについて聞きたいから、私に構わず行っておいで」
そうかわされてしまった。
不信に思いながらもあまり見たことのない建物に私は直ぐに興味が行きアルを置いて部屋を出た。
だから知らなかった。
アルの本当の正体を……。
アルの言う、それは……つまり一万回アルとキスをするって事?
それも気持ちのこもったヤツを?
そうしたら1日何回キスしなきゃならないの?
一年で成就するとして10,000÷365=27回余り145回となる。
嘘……寝る時間や食事の時間を考えると一時間に三回はキスしなきゃいけない計算?
だから妙にキス魔なの?
「ねぇ。因みになんだけど今何回位なの?」
「50回かな」
「50回」
それって多い数なんでしょうか?
少ない数なんでしょうか?
既に一万回と言われている数字からしたら少ないのでは……いやいやまてまて。
出会ってまだ一週間やそこらだよ。
前世日本人の私からしたらあり得ない数字だから。
大体キスを一回二回って数えている方も可笑しいよ。
「何度も言うけど事務的なキスじゃ駄目なんだからな。俺を意識して」
そう言ってアルはキスをして来る。
気持ちの通ったと言う事はアルも私の事が好きなのかしら?
そう思うと心臓がドキドキして来る。
本当にノア王子なんてもんじゃない。
こんなに甘々なキャラいたら乙女ゲームファンが騒ぐわ~。
きっとアルの話でネット炎上もあり得るかも。
だから断言出来る。
アルは攻略対象ではないと。
モブでこれってちょっと凄い。
そう思っていると目的地に着いた。
今日の訪問最初にして最終地点。
我が領地の最北端の地。
ここから山越えすると隣国ユルスバル帝国がある。
その領土は我が国の10倍。
軍事にも秀でていて、ここ1000年程は不動の勝率。
故に領土も増える事はあっても減る事はない。
そんな最強の帝国は、何故か王族の男性が婚約者を選ばない事と、なかなか結婚しない事でも有名なのだ。
確か年齢は分からないけど皇子が何人かいたはず。
でも、誰も未だに婚約者も結婚もしていないらしい。
案外、私みたいに何か変な呪いでも掛けられてたりしてね。
ハハハ……笑えない。
「この建築方法は先程までの教会と違うな」
アルが私を口説く以外の感想を述べた。
「100年位前に帝国から流れて来た建築家が設計したらしいですわ」
そう言って馬車を降りる。
降りる時にさり気なく手を差し伸べて来る所なんて、本当に貴族だな……と思う。
二人並んで教会の扉を潜ると吹き抜けの礼拝堂が広がっていた。
「どう?凄いでしょう?私も小さい時にここへ来たのだけど……」
そこまで言ってある事を思い出す。
「そうだわ。私……ここで呪いのネックレスを手に入れたのよ」
そう言って私は礼拝堂の中央へと歩んで行く。
「あそこに壮年の男性が居て、女神様が……」
私は幼い日を思い出す様にそう言うと
「ジュリア様」
礼拝堂の奥から年配の牧師が現れた。
「お久しぶりです」
そう言ってお辞儀をする彼を私は知っている。
「そちらのお方は?」
牧師はアルの方を見るとそう訪ねて来た。
「私の婚約者です」
そう答えるとアル嬉しそうに私の腰を抱く。
「はじめまして。アルと言います」
それだけを言って牧師を見るや苦笑いした。
奥の応接室に通された私はとても複雑な気持ちだった。
彼の……つまり、今の牧師様のネックレスが気に入って権力に物を言わせて取り上げたのだ。
あれが呪いのネックレスだったなんて……。
知らない事とは言え……無知って本当に恐ろしい。
「ジュリア様……誠に申し訳ございません」
牧師はそう言うと深々と頭を下げた。
「呪いネックレスの事を言ってますの?」
「はい」
牧師が尚も頭を下げる。
「あれは私の我が儘でした事。それに、女神様が罰をお与えになっただけ。何も気にする事はありませんわ」
そう言って困った様に微笑む。
だってタイムスリップ出来る訳でもあるまいし、今は兎に角善行を積むのが優先なんですから。
そう思っていると年配の女性がお茶を運んで入室して来る。
女性は入るや私に向かって深々と頭を下げた。
「こちらは?」
シスターではない、普通の装いの女性。
「はい。私の妻です。娘も二人授かりました。本当にジュリア様のお陰です」
そう言って牧師は硬く握手して来る。
まぁ。
呪いの肩代わりしたのだから感謝されても……って、これって善行なのでは?
そう思い胸元を見ると黒い石が4つ程透明になっていた。
グッジョブですわ。
内心ガッツポーズが出てしまう。
「何か困った事はないかしら?教会の運営に協力したいの」
この功いのまま私は神父にそう尋ねると、牧師は首を横に振る。
「住む場所も、仕事も、家族も頂きました。これ以上求めたら女神様のバチがあたってしまいます」
そう言って牧師は達観した笑みを浮かべる。
「そうですか。では当座の資金だけでも受け取って下さい。ここは我が領地でも最北端。冬に備える事もあるでしょう。これはその資金だと」
そう言って金貨を三枚手渡しする。
「食事に困っている者もいるでしょう。私はこういう形でしか協力出来ない事を申し訳なく思っています」
あくまでも善行。
慈善活動をするお嬢様を装う。
まるで偽善活動みたいだ。
って言うか、まるっきりそうなのだろう。
「おお。ジュリア様……なんて慈悲深い。神の御加護が有らん事を」
そう言って何も知らない牧師は十字を切る。
お茶を一通り済ませると私は奥さんと共に教会内を見て回る事にした。
「アルは行かなくて良いの?」
そう問い掛けると
「少し呪いのネックレスについて聞きたいから、私に構わず行っておいで」
そうかわされてしまった。
不信に思いながらもあまり見たことのない建物に私は直ぐに興味が行きアルを置いて部屋を出た。
だから知らなかった。
アルの本当の正体を……。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜
水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」
わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。
ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。
なんということでしょう。
このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。
せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。
◇8000字程度の短編です
◇小説家になろうでも公開予定です
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる