女神様の宝石箱

麻生空

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アルと同衾でフラグ回避?

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青天の霹靂へきれき
私は父の怒鳴り声で目が覚めた。

「何をしている!!お前達は!!」

何って……寝ているだけの様な……。
寝起きのボヤけた頭でそう思い、気だるそうに起き上がる。

って、あれ?
私いつの間にベッドに寝ていたの?
確か、椅子に座って……
そう思い辺りを確認していると、隣にイケメンが寝ていて驚く。
サラサラのプラチナブロンドをかき上げて起き上がり私の方を見るその男。
勿論その男とはアルである。

何故に私がアルと同衾どうきん
信じられない思いでアルを見れば、色素の薄いブルーの瞳に一瞬射ぬかれてしまった。
「おはようジュリア」
そう言うと何故か頬にキスを落とす。
呆然とする私を他所よそに父が更に騒ぎ立てる。
「ジュリアは将来王妃になるのだぞ、それを……こんな……醜聞」
パクパクと二の句が告げずにいる父に何故か頭が冷静になって来る。

確かに今の状況は悪い。
半裸の若い男のベッドで一夜を過ごしたのだ。
何も無かったと言って納得してくれる訳がない。
それに、ここ数日侍女や侍従達と話をして分かったのだが、何人か王家から密偵が侵入している。
きっと使用人に箝口令かんこうれいいても情報は漏れてしまうだろう。
それよりもだ、これって王子ルートのフラグ折れないかしら?
真面目にそう考えてしまった。
元々王子の婚約者になりたいが為にヒロインを虐めたり色々やらかすのだから、それを私がやらなかったとしてもゲーム補正とか強制イベントとか発生しそうだ。
それなら一層の事、王子達の婚約者候補事態から離脱すれば良いのではないだろうか?
身元の分からない男だが、既成事実だってバッチリある。
一層の事、親子の縁を切られて庶民落ちでも良い位だ。

それいける。

大体何の事故で同衾なんて事になったのか疑問ではあるが、死亡フラグを折る絶好の機会だわ。
そう思い私はベッドから抜け出す。
「お父様。誠に申し訳ございません。私……その……アルに一目惚れしてしまい、この様な事に……もう他の方の所へなんて嫁げませんわ」
おいおいと泣いて見せると何故かアルに抱き締められてしまう。
「可愛いジュリア。泣かないで。君だけのせいではないよ。私も君が好きだ。だから、私が責任をとるよ」
そう言ってアルは私の方をじっと見る。

顔、近い!

近いから!

そう思っていると唇に柔らかな感触が触れる。
何でこのタイミングでキスをして来る?

フググググ……
何故に口?
やめてくれ~っ!

皆に勘違いさせる~!
って、勘違いして欲しいんだけど……でも……公衆の面前でこれはないと思う。
違う意味での公開処刑だわ。

思わず胸板を押すがビクともしない。
私のファーストキスなんだと思っているんだ!!
水面下でグリグリと胸板を押しながら抗議をするが、アルはびくともしない。
そんな私達に父は眉をしかめる。
「アルと言ったか。後で私の書斎に来い。話がある」
父はそう吐き捨てる様に言うと扉を「バン!!」と、思いっきり閉めて立ち去って行った。


そんな状況だと言うのに、私はアルに角度を変え何度も唇をついばまれてしまっていた。
「もう……そろそろ……離して」
何とか唇をずらしてそう言うと、舌舐めずりした男がすっと目を細めた。
「このまま君を食べてしまいたい。折角両思いなのだから」
「りょ……って、貴方マジで言ってます?この体が目に入らないの?それとも貴方デブ専?」
そうだよ。
何も変な性癖持っているのなんて私だけじゃないんだから。
思わず変な者を見る様な目になってしまう。
マジマジと見ていると昨日とは何かが違う。
間違い探しのようにアルをじっくり見ていると「そんなに見つめられると照れるな」と妙な勘違いが生まれる。
「別に、そういう意味で見ていないから」
ビシッとアルの顔に指させば、昨日との違いを見つけて『あれ?』っと思ってしまった。
「貴方って目が悪かったの?」
そう言って眼鏡を指し示せば
「あぁ。そうだね。ジュリアの顔が良く見える様にって掛けたんだ。似合う?」
そう言って悪戯っぽく笑うアルに一瞬紅潮してしまう。
眼鏡のせいか、知的な雰囲気もプラスされて益々私好みに近付いてしまう。

良いよね。
インテリ眼鏡のクールなイケメンに言われる嫌味とか。

ちょっと萌えな展開に暫し頭がフリーズしてしまう。
「さっきら百面相みたいで可愛いな」
そう言って私の鼻を摘まんで来た。
「何してくれますの?」
益々顔を赤くして文句を言うとアルは楽しそうに笑った。

ダメだ。
何を言っても上手くあしらわれる。

そして、何故こんなに私の好みにド真ん中な風貌になってしまったのか。
やっぱり、こんな攻略対象いなかったよ。
こんな、もろ好みのキャラクターいたら絶対忘れないだろうから。

それにしても、攻略対象でもない男に良いようにされるなんて……。
きっと本来の悪役令嬢ならそうはならないのでしょうね。
そう思いため息を吐いた。

しかし、私はこの時ゲームの強制力と言う言葉を侮っていた。

そう、へし折った筈の死亡フラグは完全には消えないと言う事を……。
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