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手作りクッキー
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まずここが何処かお話しよう。
ここは『女神様の宝石箱』と言う名の乙女ゲームの世界だ。
確か、このゲームのヒロインは伯爵家の三女で名前はリリア・ヒロリン17歳だったはず。
結構ふざけた家名であるが、そこはまぁ良い。
ゲームの出だしでヒロインは16歳から18歳まで良家の子供が通う国立高等学園に入学する所から話が始まる。
それも、隣国に留学していた第一王子18歳と第二王子17歳が編入すると言う、滅茶苦茶美味しいシチュエーションで話が始まるのだ。
そう攻略対象の王子様二人です。
私が最も避けなくてはいけない注意人物二人だ。
何せ、あの二人のルートでは確実に私の死が待っているのだから。
それも、公爵家の令嬢で王子達と年齢も釣り合い、聖女修行も終えた私はパワーバランスから言ってもかっこうの政略結婚相手になる。
但し、見た目を除けばだが。
ぐーっ。
思い出すと嫌な台詞しか思い浮かばない。
「身分だけの政略結婚だと言う事が判らないか?」
……そうですね。
「こんな醜女が婚約者だなんて、どんな罰なんだろうね」
……私は罰ゲームかい!!
「醜いお前との結婚生活なんて想像する事すら汚らわしい」
……どんな想像やねん。
「見た目だけでなく性根も腐りきっているんだな」
……原作通りならね。
「こんな醜悪な女よりリリアの方が聖女に相応しい」
……聖女って、この世界ではたんなる役名だから。
それに、一応私も聖女修行していますからね。
まだ、修行さえしていないリリアと一緒にしないで貰いたいわ。
でも……あの綺麗な顔と声で罵られるだなんて……。
ちょっとだけ萌えちゃう自分がそこにいた。
でも、死んだんじゃ話にならない。
罵って欲しいけど、それは我慢しましょう。
そう。
私の前世は残念な位のMっ子。
物理的にではなく、言葉攻めに萌えるんです。
でも、攻められる言葉なら何でも良い訳じゃないんですよ。
色々とマニアな注文はあるんですからね。
まぁ、それは後に置いておいて、攻略対象者達のスチルを思い出しつつ「ほーっ」とため息が出てしまいました。
二人の王子の他の攻略対象は、各々の王子の取り巻き二人と隠しキャラで総勢7人だったはず。
……多分ね。
と、言うのも全クリしていないんだ。
「こんな事なら真面目にゲームやっておくんだった」
そう言ってため息を吐く。
取り敢えず、私が学園に入るのは王子達が転入する時。
つまり新学期だ。
それまで少しでも善行を積もうと今朝から作っていたクッキーを持って教会へ慰問に向かう事にする。
「お嬢様。此方のクッキーは」
侍女が私の後ろから声をかける。
「あぁ。それは、今朝から無理を言って皆の仕事を増やしたから、休憩時間にでも皆で食べて」
そう言うと侍女は目を見開き数秒固まってしまった。
まぁ。
今までの私の行いを考えるに判らないでもない反応だけどね。
別に毒なんて入っていないし。
それを証明するように侍女が持っているクッキーを一つ摘まんで味見する。
「うん。まぁまぁな味ね」
前世で推しキャラにバレンタインとかクリスマスとか出版社に贈っていたので、それなりに女子力があった事には感謝だ。
まぁ、普通の人から言わせれば推しキャラ宛にバレンタインとか無駄な事かもしれないけど、何せ推しキャラには最大の愛だ。
だって、彼等は私を絶対裏切らない。
フフフ……、推しキャラの好きな料理も頑張ったっけ……。
コミケに行くのにコスプレもしたな……手作りのコスチューム着たりして……あぁ、懐かしい……。
一瞬トリップしてしまう。
「お嬢様?」
侍女の声が私を現実へと戻す。
『はっ。いかん』
取り敢えず気を取り直して馬車へと向かった。
*******
我が公爵領の教会の数は小さい物も入れると20程ある。
今日は昼食を挟んで3箇所伺う予定だ。
勿論相手には何も言っていない。
つまりアポなしである。
だって行く事を話していたら教会のありのままの姿が見れないでしょう。
誤魔化されるのも癪だし。
もし、まずい事になっていたら私の命運にもかかるのだから。
貴族の礼儀に反する行いだけれど、そこは我儘お嬢様の特権で何とでもなるわ。
最初の慰問先は我が家から馬車で一時間程の大きめの教会。
確か孤児の数は30人位だったはず。
馬車は教会の裏手にある居室の建物の前で止まる。
馬車から降り立つと建物の中から馬車の紋様を見た神父が慌てて出て来た。
そう、ここから私ジュリア・ウエンズの死亡フラグ回避計画が始まるのです。
絶対死んでなるものか!!
ここは『女神様の宝石箱』と言う名の乙女ゲームの世界だ。
確か、このゲームのヒロインは伯爵家の三女で名前はリリア・ヒロリン17歳だったはず。
結構ふざけた家名であるが、そこはまぁ良い。
ゲームの出だしでヒロインは16歳から18歳まで良家の子供が通う国立高等学園に入学する所から話が始まる。
それも、隣国に留学していた第一王子18歳と第二王子17歳が編入すると言う、滅茶苦茶美味しいシチュエーションで話が始まるのだ。
そう攻略対象の王子様二人です。
私が最も避けなくてはいけない注意人物二人だ。
何せ、あの二人のルートでは確実に私の死が待っているのだから。
それも、公爵家の令嬢で王子達と年齢も釣り合い、聖女修行も終えた私はパワーバランスから言ってもかっこうの政略結婚相手になる。
但し、見た目を除けばだが。
ぐーっ。
思い出すと嫌な台詞しか思い浮かばない。
「身分だけの政略結婚だと言う事が判らないか?」
……そうですね。
「こんな醜女が婚約者だなんて、どんな罰なんだろうね」
……私は罰ゲームかい!!
「醜いお前との結婚生活なんて想像する事すら汚らわしい」
……どんな想像やねん。
「見た目だけでなく性根も腐りきっているんだな」
……原作通りならね。
「こんな醜悪な女よりリリアの方が聖女に相応しい」
……聖女って、この世界ではたんなる役名だから。
それに、一応私も聖女修行していますからね。
まだ、修行さえしていないリリアと一緒にしないで貰いたいわ。
でも……あの綺麗な顔と声で罵られるだなんて……。
ちょっとだけ萌えちゃう自分がそこにいた。
でも、死んだんじゃ話にならない。
罵って欲しいけど、それは我慢しましょう。
そう。
私の前世は残念な位のMっ子。
物理的にではなく、言葉攻めに萌えるんです。
でも、攻められる言葉なら何でも良い訳じゃないんですよ。
色々とマニアな注文はあるんですからね。
まぁ、それは後に置いておいて、攻略対象者達のスチルを思い出しつつ「ほーっ」とため息が出てしまいました。
二人の王子の他の攻略対象は、各々の王子の取り巻き二人と隠しキャラで総勢7人だったはず。
……多分ね。
と、言うのも全クリしていないんだ。
「こんな事なら真面目にゲームやっておくんだった」
そう言ってため息を吐く。
取り敢えず、私が学園に入るのは王子達が転入する時。
つまり新学期だ。
それまで少しでも善行を積もうと今朝から作っていたクッキーを持って教会へ慰問に向かう事にする。
「お嬢様。此方のクッキーは」
侍女が私の後ろから声をかける。
「あぁ。それは、今朝から無理を言って皆の仕事を増やしたから、休憩時間にでも皆で食べて」
そう言うと侍女は目を見開き数秒固まってしまった。
まぁ。
今までの私の行いを考えるに判らないでもない反応だけどね。
別に毒なんて入っていないし。
それを証明するように侍女が持っているクッキーを一つ摘まんで味見する。
「うん。まぁまぁな味ね」
前世で推しキャラにバレンタインとかクリスマスとか出版社に贈っていたので、それなりに女子力があった事には感謝だ。
まぁ、普通の人から言わせれば推しキャラ宛にバレンタインとか無駄な事かもしれないけど、何せ推しキャラには最大の愛だ。
だって、彼等は私を絶対裏切らない。
フフフ……、推しキャラの好きな料理も頑張ったっけ……。
コミケに行くのにコスプレもしたな……手作りのコスチューム着たりして……あぁ、懐かしい……。
一瞬トリップしてしまう。
「お嬢様?」
侍女の声が私を現実へと戻す。
『はっ。いかん』
取り敢えず気を取り直して馬車へと向かった。
*******
我が公爵領の教会の数は小さい物も入れると20程ある。
今日は昼食を挟んで3箇所伺う予定だ。
勿論相手には何も言っていない。
つまりアポなしである。
だって行く事を話していたら教会のありのままの姿が見れないでしょう。
誤魔化されるのも癪だし。
もし、まずい事になっていたら私の命運にもかかるのだから。
貴族の礼儀に反する行いだけれど、そこは我儘お嬢様の特権で何とでもなるわ。
最初の慰問先は我が家から馬車で一時間程の大きめの教会。
確か孤児の数は30人位だったはず。
馬車は教会の裏手にある居室の建物の前で止まる。
馬車から降り立つと建物の中から馬車の紋様を見た神父が慌てて出て来た。
そう、ここから私ジュリア・ウエンズの死亡フラグ回避計画が始まるのです。
絶対死んでなるものか!!
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