勘違いで白馬の王子様に陥れられた令嬢は案外愛されています

麻生空

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憂鬱だ。

朝から舞踏会の準備でてんてこ舞い。

私とルミナはお父様譲りの金髪が一緒な為に、姉妹と言っても通る感じだ。
背格好も似ているし、顔も姉妹で通る位には似ている。
似ていないのは目の色だろうか。
ルミナはきれいな青色だけど、私は薄い緑色の瞳だ。

まぁ、仮面を着けているから、瞳の色までは分からないかもしれない。

事実義理ではあるが姉妹ではあるんだから、似ていて当たり前かもしれない。

因みに、愛人は4号さんまで出来ていた。

不思議と兄弟は増えないようで、皆さん不妊症なのかと心配になってしまう。

私が今日着ているドレスは先月何とかって言う公爵家の舞踏会にルミナが着ていったドレスらしいと仲良くなった侍女がこっそり教えてくれた。

靴はルミナと生憎サイズが違う為に、安い物を購入して貰った。
私の方が少し大きいようで……。

因みに、舞踏会は仮面着用で、仮面はその家門を表す物を着用している。
故に、三人お揃いの仮面を付けている。
内心滅茶苦茶嫌だったけど。

舞踏会の会場に着くとお義母様と妹のルミナは早速王族が座る席の側へと陣取りに走り出した。

私はと言うと、この時ばかりと飲食コ―ナ―へと向かう。

家計の火の車は現在進行形で、肉などはここ何年も食べた事がない。

卵は鶏を飼育しているのでヨキムが毎朝私に出してくれる。

お陰で、何とか生きてこれた。

目の前に広がる贅沢な料理。

デザートそっちのけで肉類を食べる。

「動物性たんぱく質」

そんな事を唱えながら脂の乗ったお肉達を食べていく。

栄養が足りないせいか、女らしい体型からは程遠い。

「やっぱり動物性たんぱく質は必須でしょう」

舞踏会が始まってもいない今、飲食コ―ナ―は私一人の独擅場。

誰もいない事を良いことに次々とお肉を食べる。

お腹が一杯になった所で後ろから声がかかる。

「デルク公爵令嬢ですね」

振り返ると若い男性が立っていた。
蒼い髪は短く切られ、仮面越しで目の色は判断出来ないものの、整った顔は想像出来る。
きっとルミナならこの仮面を見ただけで何処の令息か分かるんだろうけど、生憎、私は社交の場に出た事がない。

「そうですけど、えっと……」

私をデルク公爵令嬢と分かったのは、きっとこの仮面のせいだろう。

「先月、家で開催した舞踏会に着て来られたドレスと同じだったもので、デルク公爵令嬢かと思いました。私の事はお忘れですか?」

多分ルミナと勘違いしている。

「すみません。あまり記憶力が良くないもので……」

別に、ルミナをヨイショする必要はない。
それに、何気に遠回しに貧乏と言われているのも不愉快だ。
そう言えば、裕福な貴族は夜会で一度着たドレスは着ないらしい。
間違ってはいないけど、言って良い言葉とそうでない言葉がある。

それに、どうやらルミナと勘違いしているようだから、とぼけて少しはルミナに仕返しするのもアリだと思う。

「ウエンズ公爵家の次男カイです。王太子殿下の側近です」

そうか。
ウエンズ公爵家の舞踏会に着ていった服だったんだ。

「あの時、令嬢からダンスを誘われたのに、踊っている間のお話の内容が殿下の好みばかりで、てっきり今日は殿下狙いだと思っておりましたが、違いましたか?」

えっと……これって嫌味?

ルミナどんだけ失礼な質問をしたら、こんな嫌味を言う為だけに飲食コ―ナ―までこの人が来るの?

「まぁ、恋愛ではお腹は膨れませんから、取り敢えず腹ごしらえ?腹が減っては戦は出来ぬって言いますでしょう?」

「初めて聞く言葉ですね」

えっ、嘘。

結構有名な言葉だと思ったんだけど。

あっ、この世界の格言じゃないか。
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