境界の国

麻生空

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その日集められた王族・貴族の成人男性は200人に上った。

条件は成人している事。
前国王より年下である事。

それに尽きた。

逆を言えば召集の条件はその二つだけなのだ。

それが何故成人した貴族男性のみの召集かと言えば、魔力の保有が絶対条件にあるからだ。

基本的に高い魔力を有する者は貴族に多い。

故に、選ばれるだろう魔力量からして貴族が優先的に集められたのだ。

決して身分を重要視している訳ではない。
しかし、今日集まった全ての男性が王冠を被ったが、国王たる人物は見つからなかった。

「前国王のお子達でも持って一時間か……」

それはこの国に結界を張れる時間だ。
千年前にこの荒れくれた国にやって来た大賢者様が魔物を寄り付かせない大きな結界を張ったのがこの国の始まりだった。
もともと人が住んでいたのだが、千年前に天変地異が起きて魔物が溢れたと言う。
『この部屋と王冠に術式を組み込んだ。少ない魔力で結界が張れるようにしてあるが、どうもこの魔石は魔力の質にうるさい。私が万が一の時はこの王冠が次代を教えてくれるだろう』
大賢者が亡くなる時に残した言葉通り次代を選出した。
そして、今に至る。

基本的に大賢者の血筋の者にその特性は現れる。
たまに貴族の者にも現れるが、血筋を遡れば大賢者に当たる事しばしば。
故に王族との婚姻を望む貴族は多い。

「魔力の質の問題だから仕方がないだろう」
人それぞれ魔力にも個性がある。
得意な魔術や苦手な魔術。
同じ魔術でも効果の違いが出てしまうのもその為だ。

「本来なら、血族に同じような魔力の持ち主が多いから、王子の中から次期国王が出ると思っていたのだが……」

宰相はそう言うと深いため息を吐いた。
何せ、今回の国王は第三夫人まで娶っており、王子も4人と歴代でも多いのだ。

故に、該当する魔力を有する者がいると思っていた。

しかし、現在その有力かと思われていた王子達ですら一時間と魔術を維持出来ない。

「魔力量も多いのに、一時間ともたないと言う事は、単に魔術と魔力の相性が悪いと言う事だ」

大神官はそう言うと宰相と同じく深いため息を吐く。

「明日からは、学園を卒業した魔力持ちの方を当たろう」

宰相が頭に手をやりながらそう提案した。

「致し方あるまい。何せ我々は国王を冠せなければ滅びしかないのだから」

そうして、次期国王探しは貴族から平民へとスライドさせられたのだった。

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