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プロローグ
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人 一人が眠るだけの部屋にしては大きなその部屋にはベッドが一つ。
重苦しいカーテンに遮られ、今は光さえ入らないその部屋には、数十人の重鎮方が神妙な顔で集まっていた。
「崩御」
大神官の声に皆重い瞼を閉じ下を向く。
その日、その国の王が亡くなった。
魔物の住む土地に囲まれたその国は、他の国から『境界の国』と呼ばれていた。
その国の王が先程亡くなったのだ。
重鎮が居並ぶ居室で、この国の大神官と宰相が話し合いをしている。
勿論葬儀の話などではない。
次期国王を選ぶ段取りの話だ。
王妃と王子達は王の眠るベッドにかしずき、王の胸の上に置かれた王冠をただ見続けていた。
この国は世襲制ではない。
つまり、今現在王宮へ住んでいる自分達は次期王が襲名した時にここに残れるかどうかすら分からないのだ。
夫が、父が亡くなった事を純粋に悲しむ事が出来ない。
そんな家族の元に宰相が声をかける。
「現国王であるアレキサンダー王崩御致しました。境界の国の法典に基づき次期国王の選出に移ります。該当する現王族の成人男性の召集を致します。宜しいでしょうか?」
恭しく聞く宰相の声は、既に確定事項を告げるような義務的な含みがあった。
「そのように……」
王妃は静かに頷く。
「又、次期国王襲名後の前王族の処遇は新国王に委任されます。その様に」
宰相はそこまで言うと大神官と共に居室を後にした。
現在、前王の子供は王妃との間に王子二人と去年公爵家へ嫁いだ王女が一名。第二夫人と第三夫人の間に王子と王女が一名ずついる。
王子は合計四人になる。
故に該当するのは王子四人。
そして、アレキサンダー王の直接の血縁者10親等まで召集される。
勿論、貴族に至っては成人している全ての男性が立ち会う事になっていた。
国を上げての儀式。
新たなる王誕生が成されぬ内は亡き国王の葬儀も出来ぬ状態で、全ての神事は進められた。
これより7日後、王宮で盛大な選定式が執り行われた。
重苦しいカーテンに遮られ、今は光さえ入らないその部屋には、数十人の重鎮方が神妙な顔で集まっていた。
「崩御」
大神官の声に皆重い瞼を閉じ下を向く。
その日、その国の王が亡くなった。
魔物の住む土地に囲まれたその国は、他の国から『境界の国』と呼ばれていた。
その国の王が先程亡くなったのだ。
重鎮が居並ぶ居室で、この国の大神官と宰相が話し合いをしている。
勿論葬儀の話などではない。
次期国王を選ぶ段取りの話だ。
王妃と王子達は王の眠るベッドにかしずき、王の胸の上に置かれた王冠をただ見続けていた。
この国は世襲制ではない。
つまり、今現在王宮へ住んでいる自分達は次期王が襲名した時にここに残れるかどうかすら分からないのだ。
夫が、父が亡くなった事を純粋に悲しむ事が出来ない。
そんな家族の元に宰相が声をかける。
「現国王であるアレキサンダー王崩御致しました。境界の国の法典に基づき次期国王の選出に移ります。該当する現王族の成人男性の召集を致します。宜しいでしょうか?」
恭しく聞く宰相の声は、既に確定事項を告げるような義務的な含みがあった。
「そのように……」
王妃は静かに頷く。
「又、次期国王襲名後の前王族の処遇は新国王に委任されます。その様に」
宰相はそこまで言うと大神官と共に居室を後にした。
現在、前王の子供は王妃との間に王子二人と去年公爵家へ嫁いだ王女が一名。第二夫人と第三夫人の間に王子と王女が一名ずついる。
王子は合計四人になる。
故に該当するのは王子四人。
そして、アレキサンダー王の直接の血縁者10親等まで召集される。
勿論、貴族に至っては成人している全ての男性が立ち会う事になっていた。
国を上げての儀式。
新たなる王誕生が成されぬ内は亡き国王の葬儀も出来ぬ状態で、全ての神事は進められた。
これより7日後、王宮で盛大な選定式が執り行われた。
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