境界の国

麻生空

文字の大きさ
上 下
1 / 6

プロローグ

しおりを挟む
人 一人が眠るだけの部屋にしては大きなその部屋にはベッドが一つ。

重苦しいカーテンに遮られ、今は光さえ入らないその部屋には、数十人の重鎮方が神妙な顔で集まっていた。

崩御ほうぎょ

大神官の声に皆重い瞼を閉じ下を向く。

その日、その国の王が亡くなった。


魔物の住む土地に囲まれたその国は、他の国から『境界の国』と呼ばれていた。


その国の王が先程亡くなったのだ。

重鎮が居並ぶ居室で、この国の大神官と宰相が話し合いをしている。

勿論葬儀の話などではない。

次期国王を選ぶ段取りの話だ。

王妃と王子達は王の眠るベッドにかしずき、王の胸の上に置かれた王冠をただ見続けていた。

この国は世襲制ではない。

つまり、今現在王宮へ住んでいる自分達は次期王が襲名した時にここに残れるかどうかすら分からないのだ。

夫が、父が亡くなった事を純粋に悲しむ事が出来ない。

そんな家族の元に宰相が声をかける。

「現国王であるアレキサンダー王崩御致しました。境界の国の法典に基づき次期国王の選出に移ります。該当する現王族の成人男性の召集を致します。宜しいでしょうか?」
恭しく聞く宰相の声は、既に確定事項を告げるような義務的な含みがあった。
「そのように……」
王妃は静かに頷く。
「又、次期国王襲名後の前王族の処遇は新国王に委任されます。その様に」
宰相はそこまで言うと大神官と共に居室を後にした。



現在、前王の子供は王妃との間に王子二人と去年公爵家へ嫁いだ王女が一名。第二夫人と第三夫人の間に王子と王女が一名ずついる。
王子は合計四人になる。
故に該当するのは王子四人。

そして、アレキサンダー王の直接の血縁者10親等まで召集される。
勿論、貴族に至っては成人している全ての男性が立ち会う事になっていた。

国を上げての儀式。

新たなる王誕生が成されぬ内は亡き国王の葬儀も出来ぬ状態で、全ての神事は進められた。


これより7日後、王宮で盛大な選定式が執り行われた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...