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ちゃぷちゃふと音を立てながら湯に浸かる。
今日のお風呂には、侍女達が何に気を使ったのかは判らないけれど、何故か薔薇風呂になっていた。
赤い薔薇の花弁の隙間を私の長い髪の毛が這う。
小さい頃こら伸ばされた髪は地毛で、ブラッシングだけは侍女達にして貰っている。
お陰で髪は何時も艶々だ。
端から見れば美しい王女が湯船に浸かる姿が見えるだろうが、しかし、薔薇の花弁の下は完璧な男の子。
母上の根回しのお陰で入浴中や着替えの時に私の部屋に入って来るのは私の事情を知っている乳母のハンナだけだ。
化粧やヘアメイクの時だけ他の若い侍女が部屋に入って来る。
それに、基本的に7歳からは一人で入浴している。
だから、私の裸を直に見る者は今現在いない。
一応バレない程度に筋肉トレーニングはしているが、それにしても「胸が薄いよね……」自身の体を見て嘆息してしまう。
これでも密かに鍛えているつもりだったのだが腹筋も割れていない……。
そして、今日の出来事を思い浮かべる。
異世界からの聖女降臨の儀式。
今までも色んな聖女様や勇者様がこの世界にいらした。
最後の聖女降臨は100年前で、巨大なドラゴンが一頭召喚されたのだ。
それが雄なのか雌なのか未だに判らないけれど、彼のドラゴンは人語を話し魔法を簡単に公使し、挙げ句、天候をも操った。
何故そこまで分かるかと言うと、伝説でしか語られないドラゴンに当時の軍部が動いたらしい。
魔王だとか邪龍だとかでっち上げて。
しかし、先程も述べたようにドラゴンのその強さになす統べなく軍部は壊滅状態。
司法取引と言えば聞こえは良いが、国の北に広がる大地をドラゴンの領地と言う名の狩場として渡し、この王都を引き払って貰ったとか……。
幸いにもドラゴンは権力や財宝には興味がないようで、小飼にも出来ない、ましてや王族の伴侶にも出来ないとあって当時の重鎮達をそうとう悩ませ結果、国土の四分の一を渡す事で解決したのだ。
そんな化け物のように強いドラゴンに領主交代を申し出るとか……もう死にに行けと言っているとしか思えない。
そして思い起こす勇者様。
勇者様は華奢で美しい青年だった。
剣を持って立たれる姿は一見神々しくもあり、流石異世界からいらした勇者様だと思わせた。
けど、体つきは王太子のような肉厚感はなく、あんな華奢な体でこれからドラゴンと対等に渡り合えるのか?と疑問がわく。
生憎、今は魔族とも戦はないので勇者様に何かして頂く用事もないし、下手に魔王討伐なんてされたら魔族との戦いが勃発する事になるため、今は穏便に過ごして貰いたいのが本音だ。
バシャンと音を立てて湯船を出た私は、備え付けのバスタオルで体の水気を取ると夜着へと着替えた。
夜着と言っても透け透けでもなければ、フリル華美な物でもない。
白無地の簡素な夜着だ。
寝室へと戻った私はベッドを見て深いため息をついた。
そこにはベッドの右半分を使って休む優希の姿があったからだ。
まぁ、男同士なんだから良いか。
相手はぐっすり寝ているようだし。
私は意を決して勇者様を起こさないよう、自身のベッドへと入って行った。
そして切に祈る。
開けてはならない扉を開く事がないように……と。
今日のお風呂には、侍女達が何に気を使ったのかは判らないけれど、何故か薔薇風呂になっていた。
赤い薔薇の花弁の隙間を私の長い髪の毛が這う。
小さい頃こら伸ばされた髪は地毛で、ブラッシングだけは侍女達にして貰っている。
お陰で髪は何時も艶々だ。
端から見れば美しい王女が湯船に浸かる姿が見えるだろうが、しかし、薔薇の花弁の下は完璧な男の子。
母上の根回しのお陰で入浴中や着替えの時に私の部屋に入って来るのは私の事情を知っている乳母のハンナだけだ。
化粧やヘアメイクの時だけ他の若い侍女が部屋に入って来る。
それに、基本的に7歳からは一人で入浴している。
だから、私の裸を直に見る者は今現在いない。
一応バレない程度に筋肉トレーニングはしているが、それにしても「胸が薄いよね……」自身の体を見て嘆息してしまう。
これでも密かに鍛えているつもりだったのだが腹筋も割れていない……。
そして、今日の出来事を思い浮かべる。
異世界からの聖女降臨の儀式。
今までも色んな聖女様や勇者様がこの世界にいらした。
最後の聖女降臨は100年前で、巨大なドラゴンが一頭召喚されたのだ。
それが雄なのか雌なのか未だに判らないけれど、彼のドラゴンは人語を話し魔法を簡単に公使し、挙げ句、天候をも操った。
何故そこまで分かるかと言うと、伝説でしか語られないドラゴンに当時の軍部が動いたらしい。
魔王だとか邪龍だとかでっち上げて。
しかし、先程も述べたようにドラゴンのその強さになす統べなく軍部は壊滅状態。
司法取引と言えば聞こえは良いが、国の北に広がる大地をドラゴンの領地と言う名の狩場として渡し、この王都を引き払って貰ったとか……。
幸いにもドラゴンは権力や財宝には興味がないようで、小飼にも出来ない、ましてや王族の伴侶にも出来ないとあって当時の重鎮達をそうとう悩ませ結果、国土の四分の一を渡す事で解決したのだ。
そんな化け物のように強いドラゴンに領主交代を申し出るとか……もう死にに行けと言っているとしか思えない。
そして思い起こす勇者様。
勇者様は華奢で美しい青年だった。
剣を持って立たれる姿は一見神々しくもあり、流石異世界からいらした勇者様だと思わせた。
けど、体つきは王太子のような肉厚感はなく、あんな華奢な体でこれからドラゴンと対等に渡り合えるのか?と疑問がわく。
生憎、今は魔族とも戦はないので勇者様に何かして頂く用事もないし、下手に魔王討伐なんてされたら魔族との戦いが勃発する事になるため、今は穏便に過ごして貰いたいのが本音だ。
バシャンと音を立てて湯船を出た私は、備え付けのバスタオルで体の水気を取ると夜着へと着替えた。
夜着と言っても透け透けでもなければ、フリル華美な物でもない。
白無地の簡素な夜着だ。
寝室へと戻った私はベッドを見て深いため息をついた。
そこにはベッドの右半分を使って休む優希の姿があったからだ。
まぁ、男同士なんだから良いか。
相手はぐっすり寝ているようだし。
私は意を決して勇者様を起こさないよう、自身のベッドへと入って行った。
そして切に祈る。
開けてはならない扉を開く事がないように……と。
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