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「この腕輪なんだけど、アリエルは由来とか聞いているかな?」
優希は腕輪を頭上にかざして眺めながらそう問い掛けてくる。
突然の質問に、私は今までそれが当たり前のようにあった為に疑問さえ持たないかった事に気付いた。
強いて言えば、自分が政略結婚をする時にどうやって初夜から逃れるかだけに重点を置いていたからだ。
でも、確か……
「由来?ですか。何でも、初代聖女様を娶った王が用いたのが始まりと伺っております。なんでも時の賢者様に特別お願いして作ったとか。とてもお美しい聖女様で当時の名だたる令息が熱を上げたと伝え聞いております。けど、聖女様はとても貞淑であったとか……それに習うように貴族が結婚する時に、妻が処女であった確かな証しになる事と、お互いに悪い呪いがかからないようにする護符になるから、貴族は基本的に婚姻の際にこの腕輪を用いるとしか……」
ようは、初代聖女様にあやかっているだけなのだが、でも、
「まぁ、女性の処女性を重視する貴族社会は理解出来るけど、この腕輪には呪いを弾く所か、呪いそのもののように思えるんだけどな」
優希はそう言うと二つの腕輪をテーブルの上に並べた。
「多分、初代聖女様を娶った王族はこう思ったのでは?『絶対聖女を他所の国に奪われてなるものか』『他の男の物にしてなるものか』と」
優希はそう言うと自身の剣を取り出すや、腕輪に描かれた文字の所へとその剣をあてがった。
「この腕輪同士は引かれ合うようになっていて、長時間ある一定距離を離れる事がないように、もし、それでも離れてしまえばこの国の王族以外の者との間に子供が出来ないように呪いがかかっています。それと呪いを弾く?でしたっけ?魅了の魔法の効果を下げる作用がありますが、それも腕輪をした者同士には効果がないようですね」
ツンと剣の切っ先で腕輪の模様をなぞると、そこから光が漏れだして来た。
「つまり、どこか別の国の王様や他の貴族に聖女様が拐われても子孫を残せないようにしていたんだ。それに……まぁ、それは良いか。ちょっと内容を書き換えるからね」
「えっ?」
優希はそう言うと真剣な面持ちで腕輪に剣を走らせる。
すると、剣の切っ先から光が迸る。
「ど……どのような内容に変えるのでしょう?」
今の優希の話が本当なら、この腕輪の恩恵はあくまでもこの国の王族に有利に働くように出来ている。
何故なら、貴族もこれと同じ腕輪を婚姻の際に用いているから。
つまり、逆に言えば王族とは不義密通の子供が成せる事になるけど他はない事になる。
そして、それが本当なら貴族は腕輪をした者同士でしか子が成せない。
腕輪をしてしまったら隠し子が作れない事になるのだ。
でも、逆に考えれば正当な血筋の子供が生まれると言う事にもなる。
「お互いの居場所と状況が分かる程度に、それ以外はいらないでしょう」
簡単に優希はそう言うけど、この世界に来たばかりの優希が簡単に魔法を使うのが信じられなかった。
だって、聖女様にしろ勇者様にしろ魔法を直ぐに使えたと言う記述は何処にもなかったのだから。
そして、一年間はこちらの世界の勉強をする事になっているのだから。
それを考えるといくら勇者様だからといって何も教えずに魔境とも名高い北の大地に直ぐに向かわせるのは、ある意味勇者様を抹殺したい王太子の意図が伺えると言ってもいいだろう。
きっと、聖女様が優希に懸想したのが許せなかったんだ。
その事実を知っているだろう臣下も何も言えない。
どころか、王太子の言いなりになり優希を死地へと誘う手伝いをしている始末。
我が兄ながら本当にクズだわ。
ずっと兄から逃げて来たけど、今度は私が優希を兄の魔の手から救いださなければ。
異世界から来たこの世界の救世主なのだから。
優希は腕輪を頭上にかざして眺めながらそう問い掛けてくる。
突然の質問に、私は今までそれが当たり前のようにあった為に疑問さえ持たないかった事に気付いた。
強いて言えば、自分が政略結婚をする時にどうやって初夜から逃れるかだけに重点を置いていたからだ。
でも、確か……
「由来?ですか。何でも、初代聖女様を娶った王が用いたのが始まりと伺っております。なんでも時の賢者様に特別お願いして作ったとか。とてもお美しい聖女様で当時の名だたる令息が熱を上げたと伝え聞いております。けど、聖女様はとても貞淑であったとか……それに習うように貴族が結婚する時に、妻が処女であった確かな証しになる事と、お互いに悪い呪いがかからないようにする護符になるから、貴族は基本的に婚姻の際にこの腕輪を用いるとしか……」
ようは、初代聖女様にあやかっているだけなのだが、でも、
「まぁ、女性の処女性を重視する貴族社会は理解出来るけど、この腕輪には呪いを弾く所か、呪いそのもののように思えるんだけどな」
優希はそう言うと二つの腕輪をテーブルの上に並べた。
「多分、初代聖女様を娶った王族はこう思ったのでは?『絶対聖女を他所の国に奪われてなるものか』『他の男の物にしてなるものか』と」
優希はそう言うと自身の剣を取り出すや、腕輪に描かれた文字の所へとその剣をあてがった。
「この腕輪同士は引かれ合うようになっていて、長時間ある一定距離を離れる事がないように、もし、それでも離れてしまえばこの国の王族以外の者との間に子供が出来ないように呪いがかかっています。それと呪いを弾く?でしたっけ?魅了の魔法の効果を下げる作用がありますが、それも腕輪をした者同士には効果がないようですね」
ツンと剣の切っ先で腕輪の模様をなぞると、そこから光が漏れだして来た。
「つまり、どこか別の国の王様や他の貴族に聖女様が拐われても子孫を残せないようにしていたんだ。それに……まぁ、それは良いか。ちょっと内容を書き換えるからね」
「えっ?」
優希はそう言うと真剣な面持ちで腕輪に剣を走らせる。
すると、剣の切っ先から光が迸る。
「ど……どのような内容に変えるのでしょう?」
今の優希の話が本当なら、この腕輪の恩恵はあくまでもこの国の王族に有利に働くように出来ている。
何故なら、貴族もこれと同じ腕輪を婚姻の際に用いているから。
つまり、逆に言えば王族とは不義密通の子供が成せる事になるけど他はない事になる。
そして、それが本当なら貴族は腕輪をした者同士でしか子が成せない。
腕輪をしてしまったら隠し子が作れない事になるのだ。
でも、逆に考えれば正当な血筋の子供が生まれると言う事にもなる。
「お互いの居場所と状況が分かる程度に、それ以外はいらないでしょう」
簡単に優希はそう言うけど、この世界に来たばかりの優希が簡単に魔法を使うのが信じられなかった。
だって、聖女様にしろ勇者様にしろ魔法を直ぐに使えたと言う記述は何処にもなかったのだから。
そして、一年間はこちらの世界の勉強をする事になっているのだから。
それを考えるといくら勇者様だからといって何も教えずに魔境とも名高い北の大地に直ぐに向かわせるのは、ある意味勇者様を抹殺したい王太子の意図が伺えると言ってもいいだろう。
きっと、聖女様が優希に懸想したのが許せなかったんだ。
その事実を知っているだろう臣下も何も言えない。
どころか、王太子の言いなりになり優希を死地へと誘う手伝いをしている始末。
我が兄ながら本当にクズだわ。
ずっと兄から逃げて来たけど、今度は私が優希を兄の魔の手から救いださなければ。
異世界から来たこの世界の救世主なのだから。
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