6 / 10
6
しおりを挟む
「このお肉の味付け、とても美味しいですね。あぁ、こちらの魚の香草焼きも美味しい。それに、このパンが更に良い。バターと塩の加減が最高だ。これに野菜いっぱいのサラダがあればな~」
優希は一口食べると次の食事へと手を伸ばしては料理を褒め称える。
「あぁ、これはすっぽんですか?とても美味しいですね。あれ、これは牡蠣ですか?バターと合いますね。あぁ、これに海藻サラダがあればな~」
そして、まるで催促しているかの様に、食卓に乗っていない料理を欲しがる。
お陰で先程から侍女達が何度も何度も部屋を出たり入ったりと大忙しだ。
「ああ、やっぱり最後にはデザートが欲しいよね。いつも食べているあれはないのかな?」
優希はそう言うと食卓の隅々まで見渡す。
そう。
見渡す程の料理が数台のキッチンワゴンに乗せられている。
すると、再び侍女が数台のキッチンワゴンを押しながら入室して来た。
「わぁ、私の好きなデザートがいっぱいあるね」
嬉しそうに微笑む優希に侍女達が顔を赤らめる。
「あ……けど、私の好きなフルーツゼリーやパイはないんだね」
しょんぼりする優希に侍女達は顔を見合せ一目散に部屋を後にした。
そして、更にデザートを乗せたカートを数台押して来る。
貴賓用の大きな部屋は今や食事が乗ったカートだらけと化していた。
「私のためにありがとう。こんな有意義な食事が摂れてとても嬉しいよ。とても気がきいていてお嫁に貰っちゃいたいくらいだね」
そして優希は侍女達を労うように微笑んだ。
それも、極上のスマイルで……。
タ……タラシだ。
この男、間違いなく女タラシだ。
男の自分でもここまで露骨にはしない。
そして、と言うべきか晩餐はやはり大分余ってしまった。
ってか、殆んど手付かずでだ。
当たり前だろう。
どう見ても大宴会並みの食事が所狭しと並んでいるのだから。
「君達が一生懸命運んで来てくれたのに、今はお腹いっぱいだ。後で食べても良いかな?」
優希はあざとく首を傾げながら侍女に声をかけると
「夜はなご~ございますから、このまま置いて置きます。朝までお腹が空かれた時にでもお食べください」
そう言って頭を下げて皆退出していった。
「は~あ?何言ってんの?」
思わず素で突っ込んでしまった。
後ろからはクスクスと笑う声。
ハッとして振り返ると優希が楽しそうに笑っていた。
「元気なようで良かったよ」
そう言ってテーブルの中央に置かれた果物に手を伸ばす。
優希はフルーツの山から苺を取り出すとゆっくりと一口噛む。
一瞬赤く熟れた苺を噛む優希の唇を凝視してしまう。
「凄く甘いね。大きいから大味なのかと思ったけど、やはり王宮で出される物なだけある。明日は色々な果物を出してくれるようにお願いしようかな」
楽しそうにそう言う優希。
けど、私は全然楽しくない。
正直、この後から明日までの事を本気で考えたくないくらいだ。
いくら優希が国一番の美男子だったとしても、男同士でピーするなんて正直嫌だ。
いくら私が女装していたとしても心まで女な訳ではない。
殺されない為に強いられた女装であって決して趣味でも乙男でもない。
健全な男子だ。
「さて、そろそろ始めますか」
そんな私の気持ちも知らず、優希はそう言うと先程の腕輪を掴む。
ゴクリと私は喉を鳴らした。
命の危機はあの王太子を兄に持つだけあり何度も感じた。
けど、貞操の危機なんて始めてだ。
(王太子の目が光ってたから誰もアリエルに近付かなかった)
優希はさっき大人になってからで良いみたいな事を言っていたけど、やっぱり所詮ヤりたい盛りの男なんだ。
ほら、侍女達も良く言っていたじゃないか「男は狼なのよ」とか「狼を上手く使って玉の輿」とか。
そして、息が詰まるような静寂が暫し訪れた。
優希は一口食べると次の食事へと手を伸ばしては料理を褒め称える。
「あぁ、これはすっぽんですか?とても美味しいですね。あれ、これは牡蠣ですか?バターと合いますね。あぁ、これに海藻サラダがあればな~」
そして、まるで催促しているかの様に、食卓に乗っていない料理を欲しがる。
お陰で先程から侍女達が何度も何度も部屋を出たり入ったりと大忙しだ。
「ああ、やっぱり最後にはデザートが欲しいよね。いつも食べているあれはないのかな?」
優希はそう言うと食卓の隅々まで見渡す。
そう。
見渡す程の料理が数台のキッチンワゴンに乗せられている。
すると、再び侍女が数台のキッチンワゴンを押しながら入室して来た。
「わぁ、私の好きなデザートがいっぱいあるね」
嬉しそうに微笑む優希に侍女達が顔を赤らめる。
「あ……けど、私の好きなフルーツゼリーやパイはないんだね」
しょんぼりする優希に侍女達は顔を見合せ一目散に部屋を後にした。
そして、更にデザートを乗せたカートを数台押して来る。
貴賓用の大きな部屋は今や食事が乗ったカートだらけと化していた。
「私のためにありがとう。こんな有意義な食事が摂れてとても嬉しいよ。とても気がきいていてお嫁に貰っちゃいたいくらいだね」
そして優希は侍女達を労うように微笑んだ。
それも、極上のスマイルで……。
タ……タラシだ。
この男、間違いなく女タラシだ。
男の自分でもここまで露骨にはしない。
そして、と言うべきか晩餐はやはり大分余ってしまった。
ってか、殆んど手付かずでだ。
当たり前だろう。
どう見ても大宴会並みの食事が所狭しと並んでいるのだから。
「君達が一生懸命運んで来てくれたのに、今はお腹いっぱいだ。後で食べても良いかな?」
優希はあざとく首を傾げながら侍女に声をかけると
「夜はなご~ございますから、このまま置いて置きます。朝までお腹が空かれた時にでもお食べください」
そう言って頭を下げて皆退出していった。
「は~あ?何言ってんの?」
思わず素で突っ込んでしまった。
後ろからはクスクスと笑う声。
ハッとして振り返ると優希が楽しそうに笑っていた。
「元気なようで良かったよ」
そう言ってテーブルの中央に置かれた果物に手を伸ばす。
優希はフルーツの山から苺を取り出すとゆっくりと一口噛む。
一瞬赤く熟れた苺を噛む優希の唇を凝視してしまう。
「凄く甘いね。大きいから大味なのかと思ったけど、やはり王宮で出される物なだけある。明日は色々な果物を出してくれるようにお願いしようかな」
楽しそうにそう言う優希。
けど、私は全然楽しくない。
正直、この後から明日までの事を本気で考えたくないくらいだ。
いくら優希が国一番の美男子だったとしても、男同士でピーするなんて正直嫌だ。
いくら私が女装していたとしても心まで女な訳ではない。
殺されない為に強いられた女装であって決して趣味でも乙男でもない。
健全な男子だ。
「さて、そろそろ始めますか」
そんな私の気持ちも知らず、優希はそう言うと先程の腕輪を掴む。
ゴクリと私は喉を鳴らした。
命の危機はあの王太子を兄に持つだけあり何度も感じた。
けど、貞操の危機なんて始めてだ。
(王太子の目が光ってたから誰もアリエルに近付かなかった)
優希はさっき大人になってからで良いみたいな事を言っていたけど、やっぱり所詮ヤりたい盛りの男なんだ。
ほら、侍女達も良く言っていたじゃないか「男は狼なのよ」とか「狼を上手く使って玉の輿」とか。
そして、息が詰まるような静寂が暫し訪れた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女なのに王太子から婚約破棄の上、国外追放って言われたけど、どうしましょう?
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
王城内で開かれたパーティーで王太子は宣言した。その内容に聖女は思わず声が出た、「え、どうしましょう」と。*世界観はふわっとしてます。*何番煎じ、よくある設定のざまぁ話です。*書きたいとこだけ書いた話で、あっさり終わります。*本編とオマケで完結。*カクヨム様でも公開。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
国王ごときが聖女に逆らうとは何様だ?
naturalsoft
恋愛
バーン王国は代々聖女の張る結界に守られて繁栄していた。しかし、当代の国王は聖女に支払う多額の報酬を減らせないかと、画策したことで国を滅亡へと招いてしまうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ゆるふわ設定です。
連載の息抜きに書いたので、余り深く考えずにお読み下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる